【保存版】対人恐怖症克服のための暴露療法6ステップ | 対人恐怖症克服法のジュークボックス

【保存版】対人恐怖症克服のための暴露療法6ステップ

恐怖を克服するためには恐怖のことをよく知る必要がある。私はこの言葉を信じて疑いません。恐怖に立ち向かわなければならない場面で自らを奮い立たせるのは「信念」です。そして、その信念のもとになっているのは正しい知識です。証明された知識です。

科学的に正しいと証明され、客観的に確かめられた「事実」。他の人にも効いて、データでも確かめられているのならば、私にだけ当てはまらないという考えは明らかにおかしい。だからこそやれるのだ!こういう感覚が恐怖突入・エクスポージャーでは必要です。


恐怖突入の王道6ステップをマスターせよ

では、対人恐怖症の治療で確かめられた方法とは何でしょうか?私が本で勉強し、試し、実際に克服をした経験において、最も納得し、実体験で役に立つと感じたのは「恐怖突入」、別名「エクスポージャー(暴露療法)」です。

治療法の基本は、怖いと思っている状況に、あえて飛び込み、恐怖を解除するというものです。しかし、それだけではあまりにおおざっぱすぎます。そこで、初心者がすぐにでも取り組めるように具体化したステップをお教えします。それが以下の6ステップです。

  1. 治療法の原理を理解する

  2. 治療の最終目標を立てる

  3. 不安階層表を作る

  4. 具体的な練習課題を作る

  5. 課題に取り組む

  6. 課題の結果と治療の効果をプラスに評価する

これらを詳しく見てみます。


1.治療法の原理を理解する

恐怖にあえて突入することによって、恐怖がどのように下がっていくのか?これを知ることは非常に励みになります。私なんか、この原理が書いてある本を何冊も繰り返し自分に確かめるように読んだものです。


その原理は2つあります。

  1. 不安は、時間とともに、下がる

  2. 不安は、練習により、下がる

図を見ればわかるとおり、恐怖にさらされ続けると時間とともに、人間の脳は慣れてきます。そして、恐怖は下がってきます。実際に本当に生命をおびやかすことはおきないな、と脳が学習するんですね。これはwithin-session-habituation(練習内での慣れ)と呼ばれています(最近では、消去学習もかかわっていることがわかっている)

次に、練習回数を重ねていくうちに、全体的に恐怖レベルが下がってきます。これも同様ですね。これは、between-session-habituation(練習の間での慣れ)と呼ばれています。


2.治療の最終目標を立てる

恐怖が下がる原理を理解したら、次は、やる気の出る最終目標を立てることです。ここでのポイントは目標を2つに分けて立てることです。

  1. 長期目標の設定

  2. 短期目標の設定

例えば、「他人と二人っきりで会話ができない」、というのが症状だったとしましょう。すると、長期目標としては、「電車の中で同僚と会話をしながら帰る」というようなことが考えられます。

いったんこのような目標を設定すると、次々と短期目標が出てくるはずです。どんどん分解していくんですね。

  • 「おはよう」という挨拶する

  • クラスの友達の会話に入る

  • 駅まで友達と一緒に帰る

  • 電車に乗り、会話をする

これらに1つづつ取り組んでいくわけです。


3.不安階層表を作る

次のステップはやるべきことを難しい順に並べて、点数を付けることです。100点満点で、大きいほど不安が強く、0点ならば恐怖がない、という付け方です。実際に行動しなくても、想像も含まれます。

  • 電車で会話(100点)

  • 駅まで(90点)

  • クラスで会話(70点)

  • あいさつ(50点)

恐怖突入・暴露・エクスポージャーはこれらのどれかを選び、その一つに集中して取り組んでいきます。


4.具体的な練習課題を作る

不安階層表ができたら、取り組むべきものを選びます。具体的には3つのステップで行います。

  1. 不安階層表から50点くらいの状況を選ぶ

  2. 練習課題を決める

  3. 難しそうなら練習をより簡単にする


まずは50点ぐらいの状況がよいでしょう。いきなり100点のものを選ぶやり方もありますが、最初は50点からはじめるのをお勧めします。

例えば、あいさつ(50点)を選んだとすると、練習課題は、「京都駅ですれ違った人に会釈をする。声は出さなくてよい。構内に人が少なかったら、まわりにも移動する」などです。

それでも難しそうに感じた場合は、どんどん簡単にしていきます。例えば、「京都駅ですれ違った人と目を合わせる。あちらの目が合ったら、すぐにそらす」(不安度40点)などです。


5.課題に取り組む

練習課題を決めたら後は取り組むのみです。この時のポイントは2つあります。

  • 15分ルール

  • 前と後で点数比較

練習をはじめたら、充分に不安が低下したと感じるまで、課題を1時間半程度かけて、1つの恐怖場面にとどまって行います。最低でも15分は我慢しましょう。あまりに早く逃げてしまうと逆に恐怖が強くなってしまうので注意しましょう。

どうしても難しい様だったら、不安度が低い練習課題に変えます。私の経験でも1時間半ぐらいが適当だと思います。もちろん、その日の気分、体調で恐怖が早く低下する時もあれば、なかなか恐怖が下がらないこともあります。

また、恐怖突入・エクスポージャーをする際は、練習課題を始める前に不安を点数化し、練習が終わった後の点数と比較します。すると、恐怖突入でどれくらい恐怖が減ったのか確認できるはずです。この記憶は、後から見直しましょう。効果が出ているのがわかるので希望が出てきます。


6.課題の結果と治療の効果をプラスに評価する

最後に練習の振り返りを行います。その際は以下のポイントに注意しましょう。

  • 課題がうまくできたなら、自分をほめる

  • 2回連続で課題達成し、不安度が30点以下になっていたら、次の難しい課題に進む

  • うまく課題を達成できなくても、チャレンジ精神をほめる

  • 課題を少し簡単にしても、やらないよりは全然よい

課題は必ず振り返ります。そうしないと前に進めません。自分でやったことの結果を確認し、次に生かしていくのです。


まとめ

私は昔、恐怖突入のことを知り、100人に道を聞くという訓練を行ったことがあります。実際に、訓練を行っている途中で、道を聞くのがふっと楽になる瞬間がきたのを覚えています。このおかげで2か月間程度は人と話すのが楽になった気がしました。

しかし、結局もとに戻りました。恐怖突入にも実は2種類のやり方があります。一気に洪水のように恐怖を浴びるフラッディングという手法と、紹介したように段階的に行う段階的暴露です。

一見私が行ったフラッディングの方が荒治療で効果も高そうです。しかし、最近ではフラッディングは恐怖が戻りやすいということも言われています。クリニックなどでも主流は段階的暴露ですので、上にやったような不安階層表を作って、基本に忠実に恐怖突入を実践していくことをお勧めします。