『牡檻』 序章
「ウググゥ・・・。」
誰か助けてくれ・・・大声で叫んだつもりの渉であったが、それは口いっぱいに頬張らされたボールギャグが呻き声に変えていた。
小鳥遊渉、40歳。
外資系商社部長の渉は優秀さと、その知的で童顔の容貌から、妻子ある身でありながら女子社員の羨望の的である。
そんな渉が今、手足を括られて冷たい床の上を芋虫のように這っていた。
ブランドスーツもセンス良いネクタイも、更にはビキニブリーフまでも取り上げられ、渉は一糸纏わぬ全裸の身であった。
否、局部を締め上げる黒革の貞操帯が渉の尻の割れ目に食い込んでいた。
ギリリという音を立てそうな、白い肌に食い込む革ベルトのあまりに辛い縛めに、渉の垂れ目がちの優しい瞳から大粒の涙が溢れだした。
大の男、しかもエリート商社マンである渉が恥も外聞もなく男泣きを始めていた。
「可愛いよ、ワタル。」
南部訛りの女の声に頬を濡らした顔を上げた渉を、大柄な黒人女が見下ろしていた。