「レッズスタイル」構築の次の段階に進むと銘打ちフォルカー・フィンケ監督に代わりレッズOBでもあるペトロビッチ氏を監督として迎え、大型補強を敢行し満を持してシーズン開幕を迎えた浦和であったが、今期1試合を残して8勝11分け13敗で15位と低迷し、数字上ではJ2降格の可能性も残すと言う不本意なシーズンを送っている。
結局“勝つために”招聘したはずのペトロビッチ監督を志半ばで解任、ユース監督の堀隆史氏を内部昇格させ当初の目標であったJ1優勝はどこへやら、J1残留が最大の目標になると言う体たらくである。



・新加入選手が機能せず

今期のレッズの失敗を語る上ではフロント、監督、戦術など話題に事欠かないが、補強した選手達が尽く結果を残せなかったのが1つの大きな要因だろう。
開幕を迎えるに当たって浦和はFWマゾーラ、原一樹MFマルシオ・リシャルデス、青山隼、小島秀人DF永田充、野田紘史、堤俊輔をチームに迎えた。(野田と堤はレンタルバック)
特に新潟から獲得したマルシオは積年の悩みであるセットプレーからの得点力を向上させる上で欠かせない存在となるはずだった。
しかし蓋を開けてみればそのマルシオは絶不調、今期ここまでPKを含め3得点と昨シーズンの15得点から大幅に成績を落としている。守備の要として獲得した永田はイージーミスが多く不安定なパフォーマンスに終始し、エメルソン以来の逸材と言われたマゾーラはスタミナやオフザボールの質に致命的に大きな課題を残している。原一樹や青山隼に関してもほとんど試合に絡めず、レンタルバックの堤に至っては今期ここまで出場が0である。終盤になって野田が左SBとしてまずまずのプレーを見せレギュラーを掴みつつ有るが、全体として見れば今期の補強は落第点としか言い様が無いだろう。

・レッズが抱える『2列目問題』

新加入した選手が活躍できなかった理由としては勿論選手のコンディション不良や実力の不足も有るだろうが、一番の要因としてはチームの戦力バランスの偏りが挙げられるだろう。レッズでは2列目の選手の飽和状態を指摘する声が多く、現在2列目を本職とする選手は33選手中10名いる。だがスタメン11人中3名が2列目でプレーすると言う事を考えれば、多少多めでは有るもののそれほど偏った数字では無いと言えるだろう。
気になるのは選手の質である。レッズの2列目は原口、梅崎、田中、セルヒオ、マゾーラを始め、そのほとんどがドリブルを武器とする選手だ。山田やマルシオに関してはタイプは異なるが彼らもまた周りとの連携で活きる選手であり、基本的には彼らを『使う』選手がいて初めて100%の能力を発揮する。
問題はここである。今期のレッズは両サイドにドリブル突破を武器とする選手、中央に山田やマルシオと言った連携で崩すタイプの選手を配置した形が多く見られた。個々の能力ではこの2列目は非常に破壊力を持った顔ぶれに見えるのだが、基本的には全員が使われるタイプの選手であるが為にプレーメーカー不在と言う弊害を招く事になる。この問題を近年の浦和は柏木をボランチに配置することで解決しようと試みているが、彼もまた元々はセカンドストライカーの色が濃い選手でありどちらかと言えば使われる側の選手である。
こうした状況は何も今期に始まった事ではなく、ポンテの能力に陰りが見え始めた2008シーズン頃から問題視すべき事項であった。しかし浦和のフロントは得点力の向上を図る上で次々と強烈な個を持った2列目を連れてきた。その結果が今期に見られたサッカーである。
本来志向していたコンビネーションサッカーはどこへやら、次々と前目の選手が単騎突破を図り囲まれ潰されていく。周りとの連携で崩して行きたいマルシオやエジミウソンはリターンのパスを受けられず試合から消えていく。山田直輝が裏へ飛び出してもそこにパスを合わせる選手が不在で、単調な攻めが故に相手チームも非常に守り易く、最終的には攻め手が無くなり決定期の予感も感じさせないまま無理な体勢からシュートを繰り返し尽く外して行った。


・補強への提言

来期に向けては既に元日本代表監督岡田武史氏や元清水監督の長谷川健太氏、今期でガンバ大阪監督を退任する西野朗氏、オーストリアリーグのアンジェ・ポステコグルー氏等を監督として迎えると言う噂が流れているが、誰が監督になるにせよ上記の問題は解決しなくてはならないだろう。
そこでこの問題を踏まえながら来期に向けた浦和の補強に対してポジション別に提言をしていきたい。

FW
このポジションは何としても即戦力の補強が必要だろう。今期FWとしてプレーした選手はエジミウソン、デスポトビッチ、原一樹、高崎寛之がいるが最高得点がエジミウソンの3得点と言う散々な状況だ。(しかもそのエースストライカーを浦和は中東クラブに放出してしまった。)
タイプとしてはエリア内で決定的な仕事が出来ること、更にコーナーキックを得点に結びつけられるヘディング能力を持った選手が望ましい。更に出来ればポストプレーもこなせれば言うことは無いだろう。
候補としては

ハーフナー・マイク(甲府)
リカルド・ロボ(栃木→柏?)
ラファエル(大宮)
ブルーノ・ロペス(新潟)
渡邉千真(横浜M)
矢島卓郎(川崎)
田代有三(鹿島)
豊田陽平(鳥栖)
エルナン・クレスポ(パルマ)

辺りが挙げられるか。
海外から獲得する手も有るが、ある程度計算できるJ出身の選手も1枚は欲しい。

SMF
ここは基本的には戦力が充実しているが、戦術オプションを増やすと言う意味でもやはりドリブラーとはタイプの異なる選手が最低でも1枚は必要だろう。

狩野健太(横浜M)
片桐淳至(甲府)
水沼宏太(栃木)
上里一将(FC東京)
ダビド・ムジリ(広島)

辺りが候補になるか。

OMF
このポジションも補強の必要性は低い。どうしてもと言うならゲームメイク能力に加えてクロスに飛び込む能力と高さを備えた本田圭介の様な万能タイプと言う事になるが、リーグ全体を見渡しても適任者は中々いない。
連れてくるなら海外からしか無いだろう。

DMF
FWと同じくらい層が薄いのがこのポジション。今期は鈴木啓太と柏木が務めることが多かったが、鈴木啓太はやはり全盛期に比べ衰えが目立ち始め、柏木にしても前述した通り2列目で起用した方が能力を発揮できる選手である。新加入の小島には可能性を感じるが、1年を通して浦和の心臓としてレギュラーを守れるかと言うとまだ心許ない。守備に特徴を持った選手、そしてプレーメーカーになれる選手を補強したい。候補には

岡本知剛(鳥栖)
明神智和(G大阪)
橋本英郎(G大阪)
高柳一誠(広島)
宮澤裕樹(札幌)
アマラウ(横浜C)
マルチネス(C大阪)
山口螢(C大阪)
増田誓志(鹿島)
青山敏弘(広島)
菊地直哉(新潟)
梶山陽平(FC東京)
高橋秀人(FC東京)
角田誠(仙台)
瀬戸貴幸(アストラ)

と言った選手を挙げたい。

SB
若手が多く、枚数も揃っているために補強の必要性は比較的低いが、欲を言えばクロスの精度が高い選手を獲得したい。

酒井宏樹(柏)
丸橋祐介(C大阪)
阿部翔平(名古屋)
太田宏介(清水)
駒野友一(磐田)

と言った選手が候補にはなるが、世界を見渡しても良質なサイドバックが不足している現状では獲得は難しい。草津にレンタル中の永田もかなり優秀なSBなので、永田の復帰が一番の補強になるだろう。

CB
濱田の成長や坪井の復調もあって層は中々厚い。気がかりなのはスピラノビッチに移籍の噂が有ること。もし本当に移籍するのなら1枚は補強が必要だが、優秀なCBが市場に出回る事は珍しく、海外からと言うのが基本線になるだろう。候補には

槙野知章(ケルン)
青山直晃(横浜M)
岩下敬輔(清水)
ダニエル(甲府)

らが挙げられる。

GK
一部報道ではC大阪のキム・ジンヒョン獲得が取り沙汰されたが、今期は加藤がレギュラーを獲得し、控えにはベテランの山岸、U22代表の大谷、長身の三木がいる状況を考えれば補強は必要ないだろう。


ここまで多額の移籍金が発生する選手や、現実的には獲得が難しい選手も候補として挙げたが、これはあくまで1つの指標である。今オフ浦和のフロントにはよく考え、的確な補強をして貰いたい。