人の数だけ奇妙がある | 迷子の舞子の夕忌さん私のお家は…

迷子の舞子の夕忌さん私のお家は…

「exカーニバル」

元V系バンドマン。

ギターを弾く人でしたが解散により終了。

現在はゲーム実況者。

ブログはお絵描きを中心にふざけてます。
読んだあなたがほくそ笑んでくれることが目標です。





通勤ラッシュ時の満員電車は基本的に大嫌いなので、避けるべく早く起きて出勤している。




とはいえ、寝坊してしまうと乗らざるを得ない事もたまにはある。




でも、人がひしめく分だけ面白い事が起こる確率も上がるので

そういう時は、むしろラッキーである。













〜丸ノ内の車窓から〜




10月7日   8時

例によって寝坊した僕は通勤ラッシュの池袋駅丸ノ内線ホームで絶望感に打ちひしがれる。


ここは異常、階段を降りている段階でホームが人まみれなのがわかる。


まるで地上から階段という川を伝って流れる水が、地下ホームという名の湖を満たしているかのような人海だ。










「ゲームしよーぜー!」



小学生?



母親と思われる女性と一緒に、おそらく兄弟だろうか、男の子が2人。ワイワイしている。




この時間に親子連れで挑戦するとは…










「電車のったら“トンネル”抜けるまで息しちゃいけないゲームねー!」



「わかった!」







これは地下鉄、一部を除いてずっと地下なのだよ。

すなわち、少なくとも40分以上息を止める事になる。




小学生兄弟の窒息死が決定した。











そんな事を考えながら僕は電車に乗り込む。










〜発車して15分後





堪え難い。





すし詰め状態、

いや、ボディビルダーが全力で握った“握り寿司”くらい詰まっている。







幸い、僕は奥のドア側に押し込められているので乗降者の動きに巻き込まれることはない。




下手に中心辺りで留まると、人の乗り降りで出来る渦のような流れに翻弄されるのだ。






あのど真ん中にいる中年サラリーマン2人のように…









背の高いおじさんと背の低いおじさんが向かい合ってピッタリ抱き合うような形になっている。


再開を喜び、抱き合っている旧友ではなさそうだ。ただの満員電車だから。 






2人とも眉間にシワを寄せて、迷惑そうな表情だ。

文句を言うわけにはいかない、満員電車が作る仕方のない状況なのだから。









乗り降りの多い駅に着いたとたん、個体が液体になるように人が流れ始めた。





その際に出来る渦の中心に、中年2人がいた。





そして、ピッタリくっついた中年2人は抱き合ったまま渦の中心でクルクル回り始めたのだ。





左右の大きな流れに逆らえず、歯車のように回っている。



その姿は社交ダンスでも踊っているようだ。



僕の頭の中でシャルウィーダンスが流れた。






この状況はとても説明が難しい、皆さんの想像に任せる。











〜10分後




先ほどの駅で大量に降りたかと思えばまた大量に乗ってきた。




車内のすし詰め具合は変わらない。





そして中年2人のダンスポジションも変わらない。お前ら仲良しか!




もうやめて、笑うから。









「エェェッッシ!!!」



ゴッ







背の高いおじさんのアゴが、くしゃみをした勢いで背の低い方のおじさんの脳天にヒット。




背の低いおじさんの「イタッー」という哀愁に満ちた小さな悲鳴が、僕の腹筋を崩壊させた。