桃太郎  「皆ちゃまー、僕たち熱海に来てまーす。」

桜次郎  「パパも来てるよね?」

桃太郎  「うーん、確か一緒に来たはずだけど、昨日も今日もほとんど見かけないね。」

桜次郎  「夕方、ガラの悪いおじちゃん達と一緒に少しだけお部屋に来たね。」

桃太郎  「ゴルフして来たんでしょう?」

桜次郎  「そうみたいだね。」

桃太郎  「じゃあ、そのまま麻雀だー。」

桜次郎  「夕ご飯は、ママも一緒だったみたいだけど、すぐ帰って来たもんね。」

桃太郎  「きっと、一分でも多く麻雀がしたいからだよ。」

桜次郎  「残り少ない人生の時間を無駄に使いたくないから麻雀をたくさんするんだって。」

桃太郎  「その麻雀の時間が無駄って、なんで気が付かないんだろ?」

桜次郎  「ねー、バカなおじちゃん達だよねー。」

桃太郎  「温泉に来てるんだから、お風呂くらい、ゆっくり入ればいいのにねー。」

桜次郎  「海見ながら気持ちいいのにねー。」

桃太郎  「きっと、誰一人として景色になんか興味ないんだよー。」

桜次郎  「ママが言ってたけど、麻雀ルームって、窓もない殺風景な狭いお部屋なんだってー。」

桃太郎  「そんな所に閉じこもって、何が人生を無駄にしないんだかって、せせら笑ってたね。」

桜次郎  「でもさー、ママはパパがいなくても楽しそうだよねー。」

桃太郎  「ここにいれば、お掃除もお洗濯もお食事の心配もしなくていいからご機嫌だよー。」

桜次郎  「その上、パパ達のゴルフ代より高いエステに行ってやったって、勝ち誇ってたよ。」

桃太郎  「ママもちょっと大人気ないよね。」

桜次郎  「どっちもどっちだねー。」

桃太郎  「パパとママみたいな二人を、破れ鍋に綴じ蓋って言うんじゃないのかな?」

桜次郎  「どう言う意味?」

桃太郎  「うーん、よくわからないけど、お似合いって事かな?」

桜次郎  「じゃあ、ママに聞いてみよー。」

桃太郎  「いや、やめた方がいいよ。」

桜次郎  「どうしてー?」

桃太郎  「なんだか良くない事が起こりそうな…、野生の勘がはたらくんだよね。」

桜次郎  「あっ、ママお風呂から帰ってきたー!」

桃太郎  「とりあえずー、お目々閉じて、寝たふりー!」

桜次郎  「お目々閉じてー、寝たふり、寝たふりー!」