外が静かになった。

今は、台風の目の中なのか、風も無く、雨も無い。

物置の屋根が、心配になって、家の周りの点検に出る。

雲の流れを透かして、仲秋の名月が、顔を覗かせる。

今宵は、十五夜…か。

季節ごとの風情と情緒を愉しむ。

それは、生の醍醐味であり、年々擦り減っていく命への、贅を凝らした最上の褒美でもある。

とは言うものの、昼間、電信柱のヒューズが切れて、我が家だけが、停電となった。

電力会社を呼んで、そのまま、慌ただしく出勤してしまった為、月見の膳のしつらえが、出来なかった。

今年は、団子さえない寂しい月見…。片見月は、縁起が悪い。これで十三夜の膳も無くなってしまった。

大損をした時の山師ってのは、こんな気持ちなんだろうか。

おおよそ、風情とは結び付かぬ、不埒な女は、まっこりを片手に虫の音に酔い、台風とアクシデントを言い訳に、自分に、折り合いを付ける。

『月は、俺だ。』…か。

影さえ見えぬ葉隠れの月…。芝浦は、誰の空に浮かぶのか。

手の届かない、遥か、高見の輝きを、恋い慕いながら、夜は、更ける。