ブログ読者の中でも、自分で書き始めたころからの仲良しはそういない。


実生活で、人との付き合いができないワタシにとって、ここでのコメントのやり取りは唯一


人と触れ合う場面である。その数人の中で、最初から全く変らずワタシをわかってくれている


ブロガーさんにToshyさんというイタリア語、英語、日本語の堪能な女性がいます。


もちろん、仕事は通訳です。記事はイタリアの歴史から最新事情まで映画や本や芸術・グルメ


彼女の視点で、ユーモアのきいた楽しい記事を書いて読者を喜ばせてくれます。


彼女、神戸っ子でもあり、ワタシへのコメントはいつも関西弁。


 もう一人、たぶん一番年下のブロガーさんだと思います。夜空さんという方がいます。


読んでる本がよく似た傾向だったり、もの言いが、歯に物着せぬ言い方もよく似ています。


親子ほど年齢差はあれ、物の考え方が似てるのにはちょっとびっくり、彼女が大人っぽいのか


ワタシが子どもっぽいのか?


さて、彼女が昨夜書いていた記事を読んで、あっ、あの人のことだ。


日露同時通訳者でもあり、エッセイストとしても名をはせた女性「米原万里」さん。


「幼児に英語を学ばせる愚」 米原 万里 と記事に書かれていました。


沢山のエッセイを書かれた彼女、こんな題名の本があったかもしれないけど


ワタシは処女作である「不実な美女か貞淑な醜女か」と「うちのめされるようなすごい本」の


二冊を読んだ。これもまた遠い昔、さっそく本棚から2冊を取り出し読み直し。


夜空さんは、彼女のこの一説には、一言一句、賛同する。と記事をくくっている。


 当時、ワタシは小さな子どもに英語を教える仕事をしており、なぜか頭にターバンを巻いた


インド人とのペアレッスン。彼にとっては英語は第二外国語のはずだが・・・?


小さな子どもの「きゅうり」や「トマト」の発音の指導していたっけ。


インド人のおっさんと、日本人のおねえちゃんが発音を教えてる・・・?


今、思い出しても摩訶不思議な光景。流れるのは冷や汗。熱血英語教師だったワタシ。


大きなブルドーサーで掘ってもらわなければ埋まりません。


 他にも理由はあったけれど、子どものための英語教室を辞めて、予備校の英語教師になった


のは米原万里さんの本であった。そのことを思い出した。


  空気のような母なる言葉・・・(なんと綺麗な表現でしょう)


米原万里の師匠である、外山滋比古は


幼児にいくつもの言語を詰め込むことの危険性に警鐘を鳴らしている。


本文から引用してみよう。


 幼児にはまず三つ児の魂(個性的基本)をつくるのが最重要である。

これはなるべく私的な言語がよい。標準語より方言がよい。方言より母親の愛語がよい。

ここで、外国語が混入するのは最もまずいことと思われる・・・(中略)

方言・標準語・外国語が三つ巴になって幼児の頭を混乱させるからである。・・・(中略)

家族連れで海外生活をしてきた家庭の子どもにしばしば思考力の不安定なものが見受けられるのは

幼児の外国語教育がもし徹底して行われると、とういうことになるかというひとつの警告とうけとる

べきであろう・

(外山滋比古著 『日本語の倫理』中央公論社)



米原万里が本で紹介してくれなければ、『日本語の倫理』なんて本はまず手に取らない本。


 当時、知り合いから、子どもにすこしでも早く英語を学ばせたいと相談されると


「同じ授業料を払うなら、スイミングスクールを勧めます」と言って呆れ顔をされたことも


ある。不親切なワタシ、こんなこと書いてる本があります、じゃなくて親ならちゃんと調べて


子どもを教育しなよ。


 英語の下手な日本人を笑うけれど、たぶん日本語も下手な輩だと思うな?


何年か前の、化学ノーベル賞を受賞した、日本人化学者、パスポートも持ってなければ、もちろん


英語でスピーチなんてどんでもない。ただひたすら日のあたらない処で研究してきただけ。


二人目のノーベル文学者である大江健三郎氏の受賞当時のコメントで、


「もっと、もっと読まなくてはならない本が山とあります、小説を書くのを辞めてそれらの


 本を読んでいきたいと思っています」


ノーベル賞をとった人が皆立派な人間だとは思わない、完全無欠な人間なんていないんだから。


自分のやりたいことに、外国語が必要な場合じゃなければ、母国語をもっともっと愛することを


勧めます。お母さんの言葉を。

 
 生まれて最初に聞いた言語、自分の心情を吐露し、ものを考えるときに意識的にも無意識的にも


血が流れるがごとく自然に頭の中で紡いでいける母なる言葉。


第二言語は第一言語より、けっしてけっして上手くはならない。単刀直入に申せば日本語の下手な人


は外国語を身につけられるけれども、その日本語の下手さ加減よりもさらに下手にしか身につかない


と言うことでしょか。英語習得に挫折したワタシならではの言葉です。


ともあれ、通訳のToshyさんの頭脳明晰さは記事やコメントの文章で認知済。


その上、彼女のどこまでも謙虚な態度に、いつも学ぶところ多いにあり。


彼女もきっと、通訳の現場での苦労話や、おもしろおかしな話があるんだろうな。


「不実な美女か、貞淑な醜女か」は抱腹絶倒な、大声あげて笑う本です。


 群ようこの次に、笑い涙が出る本です。


ちなみに、この二人のエッセイスト、猫好きですぜ、がたちゃん。(がたねぐらのブログも


笑える)


  ふろく:YOU TUBUにて米原万里の「わが心の旅」をみることが出来ます。

     
      彼女、2006年に亡くなっています。


      若くて、綺麗で、聡明な日本の女が・・・残念、悲しい。