9月1日
びっくりするほど、昨日と今日が違います。
昨日は8月、今日は9月。
「おもしろいね」「不思議だね」
朝一の挨拶がわりの会話です。
秋がやってきました、歳のせいでしょうか?
とてもせっかちにやってきたような気がします。
食欲の秋です、もちろん、そして、芸術の秋でもあります。
中でも絵画は、ツレの仕事でもあることですし、志半ばで筆を折ってしまいましたが
描けない自分に、萎れた心は、もうとっくに諦めていますが、好きな画家の絵を見ると
ズキズキと痛みます。
さて、今年は夭折の画家「松本俊介」の生誕100年になります。
岩手、神奈川と展覧会を開催され、とうとう9月は島根県立美術館で開催されることに
なっています。岩手や神奈川へ行くことを思えば、近いので会いに行こうと計画してい
ます。
松本俊介を知ったのは、群馬県の大川美術館でのことです。
当時は、ツレとワタシは恋愛中でして、「絶対見せてあげたい美術館」ということで
連れていってもらった、あこがれの美術館です。
ここで、ワタシはクリムトとシーレの違いを教えてもらい、中川一正を知り、
熊谷守一の「とり」を見て、あまりの可愛さにもって帰りたいと思い、
松本俊介の「街」を見て、動けなくなりました。
ツレは若い時から、松本俊介が好きで、「Y市の橋」「立てる像」を見ています。
後にワタシも自画像や「立てる像」を見て、ますます、彼が好きになりました。
今回9月に、また、会えると思うとワクワクしています。
廃墟に仁王立ちのように立っている俊介を見ると、目頭が熱くなってきます。
そして、何だか腹の底から力が湧いてくるのです。
くよくよ、グズグズなんて言わないぞ、一人でも立って歩いて行くぞ。
いい絵です。心の底からいい絵です。
彼は12歳で聴覚を失っています。音の無い世界を彼は36歳まで無我夢中で
生きました。
都会の街の風景がよく知られていますが、その一方社会派のドイツ人画家グロッスの影響を
受けたことが知られています。線描のタッチからは影響を受けていると考えられます。
綺麗な色使いです。
でも、構造は「立てる像」と同じです。
何かに向かってすっくっと、立っている。
無国籍的な都会風景や人物をモンタージュ風に描いたこの絵は戦前の作品、戦争色が濃く
なってくると作品の色も変わってきます。
妻と二人、絵画だけでなく、文藝活動にも力を注いできました。
戦意高揚のための芸術制作が求められていた時代のなかで、(当時の画家は戦争の絵を
書いていました。強い日本兵の絵や、兵隊さんにあこがれる少年の絵などです。)
「芸術の自立」を主張するなどやはり絵画だけでなく、グロッスの思想の影響を強く
受けていると思われます。
当時の美術雑誌に文章も書いています。論文「生きてゐる画家」是非、探して読みたいと
考えています。
秋が深くなると、食欲と一緒に文化、芸術を鑑賞、考えるには、もってこいの静かで
落ち着いた季節になっていきます。
日本の四季をそれぞれに、楽しみ、慈しみたいと思います。
でわ、今夜はこのへんで。