最近に観た映画について | Making Of Sad Paradise

Making Of Sad Paradise

Empty Black Boxのベーシスト佐藤鷹のブログ

2010年のいくつもある目標の一つとして、毎月新作映画を3本観る、というのを打ち立てまして、それは1月にしてすでに達成されないことが明らかになってしまったのですが、それについては来月からまた頑張るということで、今日は今月に観た2本について書きます。


今月は『イングロリアス・バスターズ』と『パブリック・エネミーズ』を観てまいりまして、いずれも昨年に公開されたもの。僕が観た時点でどちらも上映終了ぎりぎりの滑り込みだったので、未見且つ気になった方々はDVDリリースをお楽しみに(サーセン・・・)。では、まず『イングロ』から。



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ご存知クエンティン・タランティーノ監督の最新作。ブラッド・ピットの主演という異色のキャストも話題を呼んで大ヒット、2009年の10月の時点でタラ氏の監督作品の中では『パルプ・フィクション』を抜いて最大のヒットとなっています。


シネマトゥデイよりあらすじ「 1941年、ナチス占領下のフランスの田舎町で、家族を虐殺されたユダヤ人のショシャナ(メラニー・ロラン)はランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)の追跡を逃れる。一方、“イングロリアス・バスターズ”と呼ばれるレイン中尉(ブラッド・ピット)率いる連合軍の極秘部隊は、次々とナチス兵を血祭りにあげていた。やがて彼らはパリでの作戦を実行に移す。」


なんといってもタランティーノ映画なので細かい見所がたくさんあるのですが、もうこれについては『映画秘宝』系の方々(特にに町山智浩さん)が質・量ともに圧倒的で、僕のソースももうほとんどそれに尽きるので、そのままリンク貼っちゃいます。劇場ですでにご覧になった方も、DVDで観てみようと言う方にも面白くて参考になる話だと思いますので、是非チェックしてみてください。


http://www.youtube.com/watch?v=lyDimyyesYg&NR=1

↑YouTube-FBB秋の『イングロリアス・バスターズ』大予習会! 第1弾


http://www.youtube.com/watch?v=I140V-tuPCY&feature=related

↑YouTube-FBB秋の『イングロリアス・バスターズ』大予習会! 第2弾


http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20091219_hustler_2.mp3

↑TBSライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル:シネマ・ハスラー『イングロリアス・バスターズ』


http://newsweekjapan.jp/column/machiyama/2009/10/post-74.php

↑Newsweek日本版 > コラム&ブログ > やじうまUSAウォッチ  > 『イングロリアス・バスターズ』はなぜヘナチョコ青年ばかりなのか


http://www.enterjam.com/podcast/tokuden/tokuden087.mp3

↑EnterJam 町山智浩のアメリカ映画特電:第87回『イングロリアス・バスターズ』とナチへの復讐ロマン『追想』


上のポッドキャストで宇多丸師匠はけっこう厳しめな評論をしていましたが、僕は全編かなり面白く見ることが出来ました。歴史的事実を下敷きにしながらも基本的に無視しているため、オリジナルの劇映画よりも逆に緊張感と興味の持続が続きましたね。チャプターが5つに分かれているのですが、チャプターに分かれているということを重要視すると確かに、チャプター1と5以外の内容が独立したストーリーとしてはちょっと物足りない気もするのですが、ひとつの映画として捉えればクライマックスに向けてスムーズに進行していると思うので、そこはあまり気にしないほうが良いかもしれません。


バスターズのボンクラ加減と残虐ぶりのミスマッチや、ブラッドピット氏がしょぼい上に人でなしというのが最高でした。クライマックスは絵づらもギミックもめちゃくちゃ格好良くて、まさに映画的というに相応しい興奮を味わえました。


以下は蛇足ですが、僕が『イングロ』を観た恵比寿のガーデンシネマはちょっと古めかしいハイソな雰囲気の劇場で、もしかするとシネコンで観るよりも、特に『プレミア』の場面のシンクロ率が高かったのかもしれないと思いました。ガーデンシネマで『イングロリアス・バスターズ』をかけてるというのが当初、意外な気もしたのですが、実際に観終ってみると、過去が舞台の映画だからかなかなか良い雰囲気だと改めて思いました。『シャネル&ストラヴィンスキー』なんかは是非ガーデンシネマで観たいですね。



お次は、ジョニー・デップ氏が主演なのにあまり盛り上がらなかった、笑、『パブリック・エネミーズ』。
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デップ扮する大恐慌時代に実在した伝説の義賊ジョン・デリンジャーとマリオン・コティヤール演じる恋人ビリーとの逃走劇をリアルなアクションシーンをとともに描いた作品。


あらすじはシネマトゥデイより。「1933年、大恐慌時代のアメリカで、ジョン(ジョニー・デップ)は紳士的な態度と鮮やかな手腕の銀行強盗として注目を集めていた。ある日、彼はクラブのクローク係として働く美しいビリー(マリオン・コティヤール)に目を奪われる。二人はダンスを楽しみ、共に食事を堪能するが、いつの間にかビリーは彼の前から姿を消す。」

こちらは『イングロ』に比べて語ってる人がやはり少ないですねぇ。デップファンしか観にいってないからでしょうかw僕も、正直な感想としては、悪い作品ではないんだけど観なくても良かったかなぁ、といったところでした。


僕は、なによりも「同時代性の欠如」を感じてしまったのですが、簡単に言うと、とても2009年の作品とは思えず、「なんで今これなの??」と突っ込まざるを得ませんでした(金融不安で銀行への不信感が強まっていた時期だったからこれを題材にしたとはちょっと考えたくないですしね・・・)。


同じく過去を舞台にした『イングロ』は題材の扱い方の斬新さや、撮影や編集の技巧、手法としてのサンプリングなどなど、いかにもゼロ年代的な作品だったわけで、それと比較すると同時代的な説得力に欠けるのがやはりとても気になりました。デジタルでの撮影はアクションシーンの臨場感には大いに貢献したものの、逆に現代とのギャップを強めてしまったのではないでしょうか。


もちろん、同時代性が感じられないからといって、それだけで素晴らしい作品でないとはもちろん言えないのですが、監督のインタビューを読んでも明らかなように、近作ではジョン・デリンジャーを必要以上にヒーローとして描かないというリアリティを重視しているため、ストーリーや展開が意外なところで素っ気なかったり、観客の期待するような盛り上がりが無かったり、というところで映画的な興奮は得られませんでした。単に僕の好みというのも多分にあるかもしれませんが、同じ実在の犯罪者を描いたものでいえば例えば『Catch Me If You Can』のように劇映画的に作ったほうが、魅力的なキャラクターが主人公なだけにやっぱり面白かったのではないでしょうか。それが説得力や魅力につながるのならリアリティ重視で大いに結構だと思うのですが、少なくとも『パブリック・エネミーズ』に関しては選択を誤ったのではないかと思わざるをえませんでした。


ちなみに役者陣はとても素敵な演技だったと思います。ジョニー・デップは言わずもがなの存在感で、ジョン・デリンジャーがそこにいると思わせるはまりっぷりでした。マリオン・コティヤールもキュート且つセクシーなキャラクターで、ジョンの恋人とというにまったく遜色ありませんでした。


最後に『イングロ』の流れで劇場の話になりますが、こちらは銀座シネパトスで観てまいりました。いかにもミニシアターというたたずまいの劇場で、僕としてはフィルム・ノワールかという今作には幸運にもうってつけでした。逆に言うと、シネコンで観なくて本当に良かったと思いました。シネパトスはあまり良い上映環境ではないんですけどねw




来月は、『BANDAGE』『シャネル&ストラヴィンスキー』『500日のサマー』『Dr.パルナサスの鏡』など観にいく予定で、今からわくわくしますね!『BANDAGE』はねぇ、本当は観たくないんですけどw、でも自分史的にはやはり観なきゃダメだーってな感じで、ちょっと心を強くもって行って参りたいと思います。それではまたクローバー