・瘀血性腰痛
瘀血とは、うっ滞した血液のことです。
腰部から仙骨にかけて脊柱付近の静脈の障害があると、
そこで産生された発痛物質のために痛みが生じます。
これを瘀血性腰痛といいます。
つまり瘀血性腰痛とは、腰部の末梢静脈循環障害による
腰痛のことです。
瘀血によって局所の静脈圧が増すと
普段は少量しか流れていない末梢静脈血管部を迂回路として、
血流量が増し細絡が出現します。
※細絡とは、普通は肉眼的に見えない動静脈の吻合枝が、
局所の血流増加に代償的に拡大したものです。
瘀血性腰痛の特徴として、
腰部から仙骨部にかけて鈍重感を訴えます。
筋緊張や圧痛があまりない場合は本症を疑います。
細絡はL4L5、L5S1棘突起周囲に出現しやすく、
決めての一つとなりますが、発見できないことも多くあります。
細絡があれば治療は、亢進しているであろう静脈圧の軽減を目的に、
細絡部から刺絡します。もしくは、灸頭鍼で強力に加熱します。
細絡は浅在静脈(皮膚の浅い部分の静脈)、
もしくはその部分の動静脈吻合枝に現れるもので、
皮膚を観察して見られるものですが、
ある程度深部の血行渋滞は細絡現象を生じません。
細絡がない場合は、委中から刺絡します。
これも脊柱付近の静脈圧を減らすことが目的です。
委中部の静脈は膝窩静脈ですが、この下流になる腸骨静脈から
奇静脈が分します。奇静脈は脊柱傍らを走行し、
椎体や椎間板に枝を出しています。
以上が瘀血性腰痛についての概要と治療法ですが、
筋筋膜性の腰痛などのものと同時に発症していることも
少なくありません。
静脈の流れが悪くなる理由、ひいては瘀血性や筋筋膜性の腰痛を
起こす原因とは、直接的間接的に運動不足や
バランスの悪い食生活などが挙げられます。
原因が同じなわけですから、
同時に複数の症状が現れることは十分に考えられることです。