5月16日 | がんの人      by さちよ76歳

がんの人      by さちよ76歳

昨年1月に悪性リンパ腫と診断された夫との日々のつれづれ

主人は、朝からうとうとと気持ちよさそうに眠っていたが、お昼ごろに目をさまし「おしっこがしたい」とのこと。居合わせた和則が、主人を起き上がらせ、しびんをあてがうと、ほんのチョロチョロと用を足すことができた。ところで、昨日は、オムツの取り換えでパニクったので、今日はみんなで、手際よくやろうと
決心していたが、大の方はその気配なし。


ここ5日ばかり、ほとんど食べたり飲んだりしていないので、出るものがないのかもしれない。
はじめは何とか食べて欲しいと思いインシュア・リキットを吸い口で飲ませようとしたが、「もういい」との意思表示。水も同様「もういい」としっかり口をつぐんでしまった。


「食べられなくなって飲めなくなったら、そのままにしてくれ」と言われたことを思い出し、主人は自然な死に方を選んでいるのだと、みんなで、その意志を尊重し見守ることにした。でも腸だけは、「食べたいよー」とくーくー大声をだしっぱなし。びっくりしたのは、一度、みゆきが吸い口を主人の口にあてがうと、
その時には少しだけ水を飲んだこと。娘はやっぱり違うんだ。


それにしても主人はいさぎよい人・・・・最後まで自分の意思、自分の人生を生き切ろうとしている。


夕方、ベッドの前で食事をとりながら、主人の方を見やると、いかにも気持ちよさそうに眠っている様子。痛みもモルヒネで抑えられているらしい。よかったねと思いながら、そのまま主人の方を見ていると、急に主人の目が開いた。「あっ、目が覚めたの?」と近づくと、目は開いているものの、
反応なし・・・あわてて利治を呼びながら頭を抱えると、主人は、開いた目を閉じふ~っふ~っと2回ほど息を吹き出してそのままがくんと腕の中で息絶えた。


眠るように死にたいと言っていた人・・・
ほんとうに眠るように死んだ。安らかで、おだやかな死に顔だった。
やったね、おとうさん!