このクリスマス休み、旅行中に夢中で読んだ本。

今さら、ですが、ベストセラー作家Malcolm Gladwellの”Outliers - The Story of Success".

 


すごく面白くて、一気に読み通してしまいました。日本語版は、勝間和代さんが翻訳していて、天才! 成功する人々の法則』というタイトルです。


簡単にまとめると、ビートルズ、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブスなど、天才といわれる者たちは、必ずしも「生まれつきの才能」があったから成功したわけではない。もちろん、音楽やコンピュータが好き、という素養はあったわけだけど、その好きなことに専念し没頭する「時間」と「機会」があった。これが決定的な違い。

彼は、10,000 hours ruleという法則について触れていますが、要は、何事も、その道で第一線に立つには、だいたい10,000時間を費やす必要があって、10,000時間、何かに没頭することができれば、他人に負けないレベルに到達できる。

ただ、この10,000時間を確保するのは並大抵ではないですよね。単純計算で、1日8時間、365日でも、3年ぐらいかかる。でも、人は寝たり学校に行ったりしなければならないわけで、1日8時間も使うのはなかなか難しい。

まず、スタートが早くなければならないし、子どものうちは親がその10,000時間を達成できるスケジュールを立てて、大変な努力をしなければ、できないことです。スポーツや音楽、芸能などの道でトップに立っている人たちの多くの来歴を見ると、共通するのは、やはり幼い頃からスタートしている。そして、親がそれをサポートするために24時間体制でマネージャー、ステージママとなっていますよね。

タイガー・ウッズ、マイケル・ジャクソン、レディ・ガガ、マドンナなど見ても、急に彗星のように現れたわけじゃない。幼い頃からの下積みがあったわけです。

ビル・ゲイツだって、たまたま学校でコンピューターに触れる機会があり、自分用のコンピューターを持つことが出来る環境があった。そして彼の住んでいた場所、生きていた時代がプログラミングに思う存分没頭して時間を費すことを可能にしていた。

モーツァルトだって、2歳からピアノを弾いていたといいますが、2歳から作曲ができて、天才的だったわけではない。本格的に芽を出し始めたのは、ずっとあと、21歳ぐらいになってからです。

本には出てこなかったけど、たとえばエルビス・プレスリー。彼はものすごく貧しい子ども時代をすごしましたが、11歳のときギターを誕生日プレゼントに買ってもらい、地下室にこもって毎日練習し、没頭していた。13歳のとき、メンフィスに引っ越して、貧しい黒人の労働者階級が住む地域に住み、黒人の音楽を聴いて育った。これが彼の音楽性に大きな影響を与えて、”黒人のように歌うことができる白人歌手”としてセンセーショナルに発掘されたわけです。

優れた頭脳、才能だけでは成功できない。その才能を思い切り開花させ、熟練させる環境が必要。また、時代に乗って、運を掴めるかどうかも大事。

締めくくるとそういう内容です。

この点について、IQ180を誇る素晴らしい頭脳を持ちながら、家が貧しかったから大学も出られず、世渡りも上手くなかったがために、結局その才能を何にも生かせずにいるある男性の実話を例にしていました。


また面白かったのが、早生まれの子と遅生まれの子の研究。カナダは、トップレベルのアイスホッケー選手は皆1月、2月生まれなんですね。9月、10月生まれの子はひとりもいない。これはなぜか。カナダは、新学年が1月から始まる。だから、1月生まれの子は早生まれなんです。大人になってしまえば、たとえば1月生まれと10月生まれの差なんて、ほとんど無いでしょうが、幼いうちは、10ヶ月の差というのは非常に大きく、やはり早生まれの子のほうがクラスでも体が大きかったり、スポーツも勉強も遅生まれの子より進んでいる。

他の子より運動神経が発達している1月、2月生まれの子は、小さい頃からホッケーでも上位のジュニアリーグに入れる。上位のリーグに行けば、コーチもしっかり教えてくれて、早くから良い環境でホッケーの上達ができる。小さい頃から上位リーグなら、高校、大学でも当然1軍に入れるわけです。生まれた月によって、スタートですでに差が付いちゃってるわけ

あるいは、こんな話も。アメリカで、長い夏休みが終わって、新学期が始まった際に学力テストをすると、必ず、裕福な家の子は貧しい家の子より点が高い、という統計がありました。でも、学年度の終わりのテストでは、両者の点には大差がない。これも結局、裕福な親は、夏休みの間にサマーキャンプや楽しい旅行、サマースクールなど、子ども達が有意義に時間を過ごせるための投資をしてあげられるので、新学期のスタートの時点で、いろいろな勉強や経験をしているからなのですね。

このように、たとえば、なぜニューヨークのユダヤ人は医者や弁護士が多いのか、なぜアジア人は算数ができるのか、はたまたなぜ大韓航空機は墜落したのか、など、ありとあらゆるケースを用いて、なぜある時代に、その人物が成功することができたのか、時代背景が人の成功にどんな影響を与えるのかについて語っている本で、本当に面白かった。

これを読んで、子ども達育てる上で、いかに環境の選択と親の支援が大切か、ということを思い知り、衝撃を受けました。

小さいうちから、いろいろなことにチャレンジさせて、能力を開発してあげること。そして、それを最大限に発揮するために、「10,000時間」を確保できる環境を作ることがいかに重要か。

子どもは放っておいたら自分で好きなことを見つけるかもしれませんが、でも、やはり、子どもには、手をかければかけただけ成果として現れるのではないでしょうか。幼い頃から、より良いスタート地点に立たせて、アドバンテージを持たせてあげたいものです。

才能を見極め、それを開花させる環境と時間を作ってあげること。それが親としての役目だな、と思いました。

あー、責任重大!と気持ちが引き締まると同時に、怖くもなりました。