「おごらず、他人(ひと)と比べず、面白がって、平気に生きればいい」。
これは希林さんが娘の也哉子さんに贈った言葉だそうです。
樹木希林さんが亡くなって、もう4年も経ったんですね。
モノを持たず、マネージャーも付けないで、自分の仕事は自分で決めるというスタンスを通した希林さん。
不動産が大好きで、俳優の仕事がなくなっても家賃収入で食べていけるから大丈夫!と豪語していた。
勝手に離婚届を出した夫・内田裕也さんとは訴訟を起こしてまで復縁。
それでも生涯一緒に暮らすことはなく、別居暮らしを貫いた。
60歳にして網膜剥離で左目の視力を失い、62歳で患った癌はやがて全身に転移していくが、
その過程の中で私たちの記憶に残るたくさんの映画作品に出演。
誰にもまねのできない独特の演技で自分そのままの生き様を示した人。
75歳。亡くなる少し前に大腿骨を骨折し入院した時には、
「かろうじて首の皮一枚で繋がって生きながらえています」というイラスト付きのメッセージを見せてくれた。
一か月後の9月15日に自宅で亡くなった。
そのわずか半年後には夫の内田裕也さんも後を追うように亡くなった。
樹木希林さんの葬儀の時の娘の内田也哉子さんのご挨拶がとても心打たれるものだったことを覚えています。
その全文がこの本の最後に掲載されていました。
大変個性的なお父さんとお母さんの下で、いろんなことを考え悩みながら成長してきたのであろう也哉子さん。
娘だからこそわからない、娘にしかわかり得ない両親が作った家族のかたちを語っておられました。
その中にあったのが冒頭の言葉です。
希林さんらしい、まさにこのように生きた人でしたね。
自分流を貫いた生き様でした。
人生のラスト近くなって次から次へと公開された作品はどれも見逃せないものでした。
「あん」
「モリのいる場所」
「万引き家族」
「日日是好日」
どれも、これぞ樹木希林!という作品ばかりでした。
癌に侵され、ある意味で開き直った生き方が、
人生後半の作品作りに投影されたのかもしれないなあと今になって感じたりもします。
この本は希林さんが様々な雑誌や番組で語った言葉の数々の中から、
希林さんらしいスパイスたっぷりなものを抽出編集してある一冊です。
文藝春秋から出版されていますが、この編集をされた方に敬意を表します。
よくこれだけのものを網羅されたものです。
也哉子さんが本木雅弘さんと結婚したことが、希林さんにとっては人生で一番嬉しかったことかもしれないなあと思ったりします。
家族をちゃんと安定して守っていってくれる人が身近にいてくれるようになったこと。
希林さんが作りたかった家族のあるべき像を娘家族が作ってくれた。
それが何よりの幸せだったかもしれないなあ、と。