東京ステーションギャラリー「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」 | 黒田幸彦のブログ

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徒然なること

★★★★☆☆☆☆☆☆

 

人間の創造物を総じて芸術と捉えるのであれば、アート。精神疾患の症例と見れば、学術資料。ひとつの信仰と見做せば、聖典。作者当人にとっては、己の人生と並行して存在するもうひとつの世界における物語。

 

1864年、スイスの首都ベルン近郊の貧しい家庭に生まれる。幼女への性的虐待未遂の容疑で逮捕、統合失調症と診断され、1895年精神科病院に収容。66年の生涯を終えるまでのおよそ30年に渡り、狭い病室で生み出された夥しい量の作品群。1枚1枚が、絵、文字、楽譜、記号で、余白なくびっしりと埋め尽くされる。無秩序な集積に非ず、バラエティに富む様式がある。記されるのは、世界征服の企み。王国に積み増しされていく利子の計算。自身の葬送曲。

人間の可能性、想像力の果ての無さについて思いを巡らせ、眩暈。