今回ご紹介する本は、

 

茂市久美子作『招福堂のまねきねこ』

 

 

『招福堂のまねきねこ』表紙絵

 

 

絵は黒井健さんです。

 

この本は短編集で、“またたびトラベル”という旅行会社がからむ不思議なお話が七編入っています。

そのうち表題作の「招福堂のまねきねこ」をご紹介します。
 

 

大みそかの夜、ある男性がまたたびトラベルにやってきました。

そば屋「耕さく」の主人、耕作さんです。

 

そば屋「耕さく」は、耕作さんが半年前に開いたニシンそばが看板メニューの店です。

修行した前の店では、耕作さんのニシンそばは人気で、耕作さんは自信に満ち溢れていました。

しかし、開いた店「耕さく」では思ったようにお客が入らず、三ヶ月もすると閑古鳥が鳴きはじめました。

 

 

そんなある日、和服姿の老人が店にやってきて耕作さんに言いました。

「どうしてまねきねこを置かないのかね?」

老人はまねきねこを貸してくれる『招福堂』という店を教え、地図まで書いてくれました。

耕作さんはその夜招福堂を訪ねようと地図を見ながら行くのですが、道に迷ってしまいます。

すると一匹のネコが現れ、招福堂へ案内してくれます。

 

 

招福堂に入ると、そこにいたのはあの和服の老人でした。

老人は三種類のまねきねこを出してきました。

右手をあげているねこ、左手をあげているねこ、両手をあげているねこです。

「まねきねこの右手はお金、左手はお客さんを招きます。三つの中から一つ選んでください」

 

 

耕作さんは、お金もお客さんも招いてくれる両手をあげたまねきねこを手に取ろうとしますが、さっきのネコが足元で、だめだめと言うように耕作さんのズボンのすそを引っ張ります。

耕作さんは、しぶしぶ左手をあげたまねきねこを選びました。

 

まねきねこの貸し出し条件は、ひと月三千円の借り賃と、毎日必ずまねきねこにお供え物をすることです。

この条件は割に合わない気がしましたが、耕作さんはまねきねこを抱えて帰ります。

 

まねきねこを店の棚の上に置いて、ニシンを供え、手を合わせました。

すると、翌日から「耕さく」にはお客さんがどんどん入るようになり、行列ができるほどになりました。

まねきねこのおかげだと耕作さんは感謝感激です。

 

 

しかし、お客たちが口々に、「こんなにおいしいにしんそばは、初めてだ!」と言います。

そんな褒め言葉を耳にするうち、店が繁盛しているのは、まねきねこのせいではなく、そもそも自分の腕がいいからだと思うようになります。そして、次第にまねきねこにお供え物をするのもばかばかしくなり、やめてしまいました。

 

 

そんなある夜、招福堂の老人がやってきて、まねきねこを棚から下ろすと、抱えて帰ってしまいました。

次の日から「耕さく」のお客さんは日に日に減り始め、まねきねこを置く前と同じになってしまいました。

 

 

そして、とうとう大みそかの夜になりました。

耕作さんは、まねきねこの借り賃をずっと払っていなかったことを思い出し、払いに行こうとします。しかし、また道に迷ってしまいました。

そのとき、前を行くネコが、こないだのネコだと気づきます。耕作さんが声をかけると、ネコは案内どころかかけだして行ってしまいました。

耕作さんがネコを追いかけてたどり着いたのは、「またたびトラベル」という小さな看板のある事務所でした。

さて、耕作さんとそば屋「耕さく」の運命やいかに……。

 

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。