いつからか、

私は息子に

「いや」

と言うようになった。

「それは嫌だからやめて」

喧嘩したあとに

息子に遊んで欲しいと言われた時、

「いまはいや」

そんな風に、

赤ちゃんのころは彼の全てを受け入れて

自分の嫌も見ないふりしていたけれど、

少しずつ意思の疎通がとれるようになってきて

こちらの気持ちも伝え始めた。

私にとって、

息子に「いや」と言うのは大きなチャレンジだった。

それまでは

子供の全てを受け入れるのが

母親じゃないの？

って思っていて、

トイレも我慢、眠気も我慢、

我慢、我慢で息子を優先していたから

自分がどんどん苦しくなっていった。

今思うと、

あの優先の仕方は違ってたな、って

わかるんだけど、

初めての妊娠、出産で

右も左もわからず、

自分は後回しこそ、

子育てママの鑑だと思っていた。

だってよくそう見たり聞いたりしてたし。

でもある時本当に苦しくなったし、

息子も理解できる年齢になってきたので、

勇気を出して「いや」って言ってみたのだ。

息子はびっくりしていたようだけど、

私自身は

とても爽快だった。

もちろん、親子といえど

人と人、

いや、やめて、を伝えるのは大事なことだと思う。

でもいつの間にか、

私は私を優先しすぎて

私がやってること全部終わらないと

息子と接しない、

と言うところまでやるようになってしまっていた。

そんなことを続けているうちに、

少しずつ、息子が

私に寄り付かなくなり

夫の方にばかりいくようになった。

それはそうだろう、

抱っこもしてくれないし、

して欲しいことを全然叶えてくれない母親になんて、

お願いしになんていかなくなるよ。

自分がそういう対応をしておいて、

息子が夫の方にばかり行くと寂しくて

自分の都合のいい時だけ

息子に構う私。

そういう構図になってから、

私はずっと

なんだか苦しかった。

でもそれが何故なのかはわからなくて

目の前にいる

夫や息子のせいにして

深く考えることをしていなかった。

でも、

自分の中には

ずっと違和感があった。

最近もう、

息子に辛く当たる自分が嫌すぎて

どうしたらいいのか、本当に悩んでいた。

前はこうじゃなかったよな、って。

昨日、

JAFが発行するJAFmateという冊子に

よしもとばななさんのエッセイが載っていた。

「幸せの瞬間」という題名で書かれたその文章には、

何気ない日常の、

家族で過ごせるほんの些細な瞬間が

幸せなんだよなあ、

って言うことが書かれていて、

本当にハッとした。

「・・

みんながぶじで、たまたま同じ時間に体が空いているのは、現代社会では決して当たり前のことではない。

小さな奇跡なのだ。

・・」

私は、また、

目の前の日常から目を逸らして

別のところに幸せを見出そうとしていた。

「こうなったら幸せ。

ああなったら幸せ。」

常に、何かをコントロールしようとして、

幸せを作り出そうとしていた。

目の前に広がっている、

当たり前ではない奇跡を

価値のないものとしていた。

ああ、息子が

「抱っこ」と擦り寄ってくるのも

今だけの特別な時間なんだ。

家族3人で

何度も観て見飽きたアニメを見るのも

今だけ。

永遠に続くかと思われる日常に

飽き飽きして

全然味わっていなかった。

なんてことをしていたんだ。

だから、辛かったんだ。

心と身体はわかっているんだ、

今こそが奇跡の瞬間だと。

今に幸せがあるんだと。

でも頭が

幸せを別のところに見出そうと

目の前の日常を否定して

逃げようとしていたから、

頭対　心&身体の対立が起きていて、

その葛藤が

いつも私を苦しめていたんだ。

それに気づいてすぐ、

夜中に息子の布団に入り、

ぎゅーっとその小さな体を抱きしめたら

驚くほど温かくて

彼の溢れ出る生命エネルギーを感じた。

感動した。

私はこの生きる奇跡を

見ないようにしていた。

息子のせいで

私はしたいことが出来ないんだ、って

邪険に思っていた。頭では。

でも本当は、

肚の底では、

抱っこしてあげたいし、

遊びに付き合ってあげたいし、

保育園に遅れてもいいから、彼の集中力に付き合ってあげたかったんだ。

だから、苦しかった。

したいことを自分にさせてあげていなかったのは、私だ。　

今朝も

起きた後に

「一緒にお布団に入ろう？」

と二度寝に誘ってくる息子に対し、

いつもは「いや」と言っていたけれど

「うん！！」と布団に飛び込んだら

びっくりするほど幸せだった。

全然、苦しくなかった。

今朝中、息子にべったりしてたら

息子はとても嬉しそうに

夫よりも私にくっついてきた。

ああ、息子も寂しかったんだなあ、

悪いことしたなあ、と思った。

もう一度、目の前の日常の

奇跡を感じること。

それを改めてしていこう、と思った日でした。

自分のやりたいことをやれていれば幸せなのか？