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浮かべた笑顔は引きつっていて。
止まったはずの涙はじわじわと染み出していて。
大きく振った手は震えていて。
そして彼女は、そんな僕を決して振り返らなかった。
…ありがとう。小さく唇を動かしてそんな言葉を紡ぐ。
ありがとう。僕を愛してくれて。
ありがとう。僕を認めてくれて。
ありがとう。僕を守ってくれて。
ありがとう。僕ではなく、自分を選んでくれて。
ありがとう ありがとう ありがとう
彼女の姿が、階段の向こうに消えて行った。最後に見たのは、僕が心の底から綺麗だと思う彼女の長い髪。
彼女の涙は、止まっただろうか。止まっているといい。泣いてほしくない。
『きっと、私の分までレンが泣いてるんだね』
いつか、彼女が僕に言った言葉。ぼろぼろと涙をこぼす僕の頬を拭いながら、言った言葉。
立ち尽くしたままの僕を、何人もの人が追い抜いて行く。止まることのない人の波。僕と彼女の時間のように、止まることなく、留まることなく。
彼女はその波に乗って、去って行った。では、僕はどうしようか。
僕は立ち尽くす。立ち尽くしながら、長い長い日々を思い出す。
僕と彼女の、過ごした日々を。
【泣き虫カレシ 前】
僕と彼女の日々の始まりは、真っ青な青空。
近所の公園の噴水の側。そこで転んで泣いていた僕を、彼女が見つけたのが始まり。
『どうしたの?転んだの?』
大きな瞳をいっぱいに見開いて、彼女は僕を覗きこんできた。
ずきずきと痛む膝を抱えて赤ちゃんみたいに泣きながら、僕は彼女を見上げる。
抜けるような青空を背に、僕を見る彼女の髪の毛が淡く輝いていて、僕は思わず泣きやんだ。
宝石みたいな瞳。絹のような髪の毛。お人形のような女の子。
幼かった僕がそこまで考えていたとはとても思えないけれど、とにかく僕は、彼女に見惚れてしまったのだった。
『ね、大丈夫?』
『う、うん…』
『でも、ケガしてるね。洗おう。バイ菌入っちゃうよ』
ぐい、と僕の手を掴んで、彼女はそのまま僕を水道まで引きずって行った。勢いよく水をかけられ、その冷たさと痛みでまた涙がぼろぼろ溢れてくる。
『う、うぅ~…』
『ごめん、痛かった!?すぐ終わらせるからね』
僕の傷を一生懸命に洗ってくれる彼女を振り払うことなんてとてもできず、僕は洗われている間中、ずっと泣いていた。
洗った傷口の周りを、彼女が丁寧にハンカチで拭ってくれる間に、僕らは自己紹介をした。
そしてそこで僕は、彼女が2軒隣の家に住んでいることを知り、彼女が僕よりも2歳年上だと知ったのだ。
僕・鏡音レンは3歳。彼女・初音ミクは5歳。
この頃の子供が大体そうであるように、僕達はその日以来、特に約束をすることもなく毎日遊んだ。
公園に行き、お互いの家に行き、ちょっと探検しようと町のあちこちを歩き回って、跳ねまわって、はしゃいで。
ふと気が付けば、一緒にいることがお互いに当たり前のような…そんな関係になっていた。
小学校も当然一緒で、僕らは毎日一緒に学校に行って、一緒に帰った。学年が違ったからお互いの授業の終わりが違う日もあったけれど、そんな日は先に帰った方(ほとんど僕だった)が、もう片方の家に先回りして待っているのが常だった。
いつ行っても綺麗で落ちつくミクの家。彼女のお母さんは、彼女によく似ていて朗らかで優しかった。手作りのクッキーは、器用に色々な形で作られていて、猫だったり犬だったり鳥だったり、僕と彼女の姿をしたものなんかも作ってくれた 。
よく冷えたジュースとクッキーを食べながら、ミクの帰りを待つ。ふかふかのソファに座って、時折時計を見上げながら。
やがて、がちゃりとドアが開く音と一緒に、「ただいま、お母さん、レン!」と、彼女の明るい声が響く。それを聞いたら、僕は立ち上がってミクを玄関まで迎えに行く。そしてミクは玄関先にランドセルを放り出し、僕はごちそうさまを言って、2人で外に飛び出すのだ。
毎日毎日、繰り返し繰り返し、僕らはそんな日々を過ごした。
明るくて他愛もない毎日。時々ケンカもしたけれど、すぐに仲直りすることができた。
僕とミクは「親友」なんだ。誰よりも仲の良い、誰よりも固い絆で結ばれた。
この頃の僕は、僕とミクのことをそう思っていた。
そんな日々が少しだけ変化したのは、僕が中学に上がった時のこと。
ミクは中学3年生。受験を控えていた。
「ねぇレン、私、高校どうしようかなぁ」
「どうって…あそこ行くんじゃなかったの?N高校」
僕達の中学校からは、毎年1人2人行くか行かないか、くらいのレベルの進学校。ミクはそこに行きたいと、去年あたりからずっと言っていた。
【泣き虫カレシ 中】
マク●ナルドの混雑したカウンター席。2人で並んで腰かけて、ミクはシェイクを、僕はハンバーガーとポテトのセットを食べながらの会話だった。
中学に上がっても、僕とミクは相変わらずで。変わったことと言えば、放課後にお互いの家ではなく、どこかお店に入って話をするようになったことだった。
中1と中3。年の差は変わっていないのに、学校が上がっただけで、随分差ができたように思う。
そしてその感覚は、多分勘違いではないのだった。
一般に、女の子の方が早く大人になって、男の子は大学を卒業するまで子供のままだ、なんてことを聞く。
最近になって、僕はその言葉の意味が何となく分かった気がする。
ミクは、僕が小学生をしている間に、ぐんと大人になっていた。
背はそんなに伸びていない。顔だって、年相応に大人っぽくなっただけだ。
それでも何となく、雰囲気が変わっていた。
ミクは僕よりも2歳年上なんだ。そんな当たり前のことを、僕は最近再認識している。
それは、ふとした拍子に出てくるボキャブラリーの違いだったり。
読んでいるファッション雑誌が変わっていたり。
うっすらと化粧をするようになったことだったり。
小さな小さな違い。でも、それに気付かずにはいられないような、そんな違い。
ミクは、年上の、女の子なんだ。そして僕は年下で、男で、彼女と比べたらまだまだ泣き虫な子供だ。
その事実が、とても重要なことに思えた。
ミクはストローの端をかしかし噛みながら、僕の言葉にむぅ、と眉根を寄せる。
「そうしようと思ってたんだけどね…」
「何かあったの?」
「うーん、何て言うかなぁ…私には向いてないような気がするんだよね」
うん、と頷くミク。僕はふぅん?と首を傾げるしかない。
「向いてないって…授業が厳しいとか?」
「そんな感じかな。この間、N高に行った先輩が高校紹介で来たんだけどね、話聞いてたら、何か、私には向いてなさそうだなぁって思って」
やっぱりストローを噛みながら、歯切れ悪くミクは言う。
僕はそれに対して、同じくふぅんと言うしかなかった。高校進学なんて、僕にしてみれば先のこと過ぎてまだまだ想像ができない。進路に悩むほど、将来のことを考えてもいなかった。
そんな僕の考えが分かったのか、ミクは僕を見てからかうように笑う。
「あ、レンにはまだまだ難しい話題だったかな?」
「な…別に難しくないよ!」
「本当?困った顔してたぞー?」
「ミク!」
ムキになる僕に、ミクは声を上げて笑う。その笑顔に、まるで心臓を打ち抜かれたような気がした。
…僕がミクを、友達ではなく女の子として意識したのは、多分ミクが中学生になった時だったと思う。
届いたばかりだった制服を着て家に遊びに来たミクは、まるで見知らぬ女の子のようだった。
スカートもブレザーも、どこか着慣れていない感じがして、そのちょっと緊張した様子と紅潮した頬がとても可愛いと思って。
僕は強くそう思った。
次の日、僕とミクはまたマク●ナルドに来ていた。食べるものも変わらない。ミクはシェイク。僕はハンバーガーとポテト。
席に着くと、ミクは何かが吹っ切れた顔で明るく言う。
「私、N高やめることにした」
「いいの?ずっと行きたいって言ってたのに」
「うん、いいの」
にっこりと、もう大丈夫だと笑うミク。
きっと、本当に大丈夫なのだろう。ミクがこの笑顔を浮かべる時は、僕に大丈夫を伝える時だ。
だから、僕もそれを受け入れて笑う。
「そっか。…じゃぁ、どこに行くかはもう決めたの?」
「ううん、まだ。何個か候補はあるけど、これから絞って行こうと思って。成績的には余裕だしね~」
「うわ、嫌味っぽい」
はは、と笑いあう。カウンターの前の窓ガラスに映る僕と彼女は、まるでカップルみたいだった。
…でも、僕達は友達だ。家が近所の幼馴染。ミクがお姉さんで、僕が弟で。
その事実が、少しだけ胸に刺さる。
こっそりと苦い気持ちを抱える僕に、ミクは楽しそうに言った。
僕のもやもやを吹き飛ばすような言葉を。
「ね、レン。今度映画見に行こうよ」
「映画?」
「今一緒じゃん」
「これは放課後デートでしょ?そうじゃなくて、普通に遊びに行きたいの!」
「え…」
とっさに、反応できなかった。
目を丸くして言葉を失う僕。頭の中では、彼女の言葉が踊っている。
放課後デート
デート
固まった僕に、ミクは不思議そうに瞬いた後、「あ」と間抜けな声を上げる。その頬が、耳が、首筋まで一気に真っ赤になった。
お互いの顔を見て沈黙して、しばらく。先に言葉を取り戻したのは僕の方だった。
「…えっと、ミク…?」
「う、あう…」
「えぇと…放課後デートって…」
ごくりと唾を飲み込んで、恐る恐る言う。
「僕と…デートしてるって、思ってくれてたの?」
「…だ、だって…」
真っ赤な林檎のような顔のまま、ミクはしばらくためらった後、意を決したように言う。
「私は、レンのことが好きだもの」
店内の喧騒が、波が引くように消えて行く。そして僕は、まるでその波に僕の言葉も飲まれてしまったかのように言葉を失っていた。
ミクが、僕を好き?
友達としてでは、なく?
一向に答える気配のない僕に、不安になってきたのかミクがもう一度繰り返す。
「私は、レンのことが好き。友達としてじゃなくて、男の子として、好きなの」
繰り返されて、やっと僕の中にその言葉が染み渡って行く。
同時に、泣きだしたいような、飛び上がりたいような、そんな不安定な気持ちに翻弄されて、じんわりと涙が浮かんだ。
「レ、レン、泣かないでよ。…嫌だった?」
「…違うよ。嫌じゃない。嫌な訳ない」
僕は笑う。きっとこの笑顔は、生涯浮かべる飛びきりの笑顔だと思いつつ。
「僕も、ミクのことが大好きだよ」
笑顔に押し出されるように、涙が一粒だけ膝に落ちた。
その後、ミクは無事に高校に進学し、僕とミクはまた、中学と高校という別々の場所に通うことになった。
当たり前と言えば当たり前の話だけど、僕達にとってそれはとてももどかしくて。
僕が塾に通うようになってから買ってもらった携帯電話で、僕達は毎晩電話した。学校に行っている時はメール。休みの日は遊びに行く。
中2の夏休み。初めて志望高校を記入することになって、僕が迷わず書いた高校は、ミクと同じ高校だった。
「レン、私と一緒の高校じゃなくてももっと上のところに行けるのに」
とある休日。僕とミクはお互い私服で、チェーン店の喫茶店にいた。僕の向かいでアイスココアを飲みながら、ミクは不満そうに言う。
「勿論、一緒に通えたら嬉しいけど。でも、レンはやりたいこととかないの?」
「やりたいこと、かぁ」
僕はカフェオレのカップを置くと、天井を見上げる。空調のファンがゆっくり回っていて、スピーカーからは、コンビニでもよく聞くクラシックだか何だか分からない曲が流れていた。
僕のやりたいこと。言われてとっさには出て来なかった。というか、考えたこともなかった。
やりたいことって何だろう。将来就きたい職業も、叶えたい夢も、特に思いつくものはない。精々、ニートにはなりたくない位のものだ。
考えて考えて考えて。熱が出そうになるくらい考えて、僕の心にふっと浮かんできた答えは。
「…一緒にいたいな」
「え?」
「ミクと一緒にいたい。そのために、早く大人になりたいと思うよ。…それじゃ駄目?」
「…ううん。いいと思う」
頭をかく僕に、ミクは笑う。
きっと僕は、この時、気付くべきだったんだと思う。
ミクの笑顔が、ほんの少しだけ、普段とは違っていたことに。
でも、この時の僕はミクと一緒に過ごす時間がただ楽しくて、幸せで、何も考えていなかった。どうしてミクがそんな質問をしたのか。逆に、ミクは将来何をやりたいのか。
僕は子供だった。幼かった。2つの年の差なんて関係ない。僕個人が、幼かった。
季節はゆっくりと、しかし確実に過ぎて行った。
僕とミクが出会って12年。干支が1つ回るくらいの年月が過ぎ、僕達はご近所さんから友達へ、親友へ、恋人へ変わった。
それでも、僕は僕のままいつまで経っても泣き虫だったし、ミクはいつだって僕をしっかり支えてくれるお姉さんだった。
そして変わらなかったことで、変わらなかったことこそが、ミクに最後の決断をさせてしまった原因かもしれない。今更、僕はそんなことを考えている。
【泣き虫カレシ 後】
久しぶりにお互いが丸一日自由になる日があって、僕とミクは映画を見に行った。
新作のラブロマンス。恋愛映画は特に興味はなかったけれど、久しぶりに見る映画はやっぱり面白くて、気が付いたらぼろぼろ泣いていた。でも、感動して流す涙はいい涙じゃないかな、なんて、そんなことを思う。
だってそれは、心が動いている証拠だから。
心を揺さぶられ、泣かずにはいられない程の感動を受け止めることができた証拠だから。
…まぁ、僕に限らず、僕が泣いたシーンではあちこちからすすり泣きが聞こえたので、取り立てて僕が感動屋という訳ではないのだろうけど。ミクもしっかり泣いていて、思わず2人で声を殺して笑ってしまった。
とにかく、僕は感動屋ではない。僕はただの泣き虫だ。
そんなこんなで、お互いに目をはらしながら映画館を出て、そのまま軽くケーキを食べたりなんかして、夕方。
僕達は、いつも通る歩道橋に差しかかっていた。
僕達が住んでいる場所は典型的な住宅街で、繁華街とは国道を一本隔てている。だから、国道にかかっている歩道橋は、僕達がどこに出かけたとしても必ず通るお決まりの場所だった。
僕達の思い出が、必ず通過する場所。それが、この歩道橋だったのだ。
「今日は楽しかったね、ミク」
手を繋いで歩きながら、僕よりも少し背の高いミクの顔を見上げる。ミクはぼんやりと歩道橋の向こうに投げていた視線を慌てて戻して、「そうだね」と笑った。
僕は、その様子に思わず立ち止まる。
最近のミクは、ずっとこんな感じだった。
僕は中学3年生。ミクは高校2年生。いつかも経験したような、進学というタイミング。
自身の高校進学の時は僕に何かと相談してきたミクは、僕が「一緒にいたい」と言った日から、僕の進路について聞いてこなくなった。単純に、僕がミクの高校を受けると言い切ったから聞かないだけかとも思っていたのだけれど、今一つそれとは違う気がする。
代わりにミクは、どこか遠くを見るようになった。
今のように。
黙ってミクを見上げる僕に、彼女は何でもないように首を傾げて見せる。
「どうしたの、レン?」
「…どうしたのは、ミクの方だろ」
「レン…」
「最近ミク、ボーっとしてることが多いよ。電話してても上の空だったり。…何か悩みでもあるの?」
「…そんなことないよ?」
「そんなことあるだろ!明らかにおかしいじゃないか」
思わず語気が荒くなる。ミクは小さく息を飲むと、諦めたように溜息を吐いた。
「…ちょっと、悩んでることがあるの。それはレンの言う通り。でも、これは私1人で考えたい。…駄目?」
「…僕には話せないこと?」
子供っぽい言い方になってしまう。でもミクは、その言葉にこっくりと頷いた。
「レンだけじゃない。誰にも言わない。これは、私が悩むことだから」
そしてミクは笑う。にっこりと。
その笑顔に、僕は、これはミクは絶対に折れないなと悟って、仕方なく肩を落とす。
「…分かったよ。でも、解決したら、話してほしい」
「うん。約束する」
階段の下に消える姿を見送りながら、僕は知らず知らず、右手の薬指にはめた指輪を手で触っていた。お揃いの指輪。記念日に2人で買った、安物のシルバーリング。
ミク。
「話してくれるよな…?」
そっと風に流した言葉は、でも、できれば彼女に届かないで欲しいと願った。
無性に、嫌な予感がして仕方なかったから。
それからしばらく、お互いのテスト期間が重なって会えない日が続いた。
梅雨のじめじめした空気と、同じくらいじめじめしたテストを乗り越えて、6月の末。
梅雨の晴れ間の、からっとした気持ちの良い日に、僕とミクはデートをした。
他愛もないことを話して馬鹿笑いし、新しくできたというペットショップを冷やかしに行って、ミクの好きなパスタ屋さんでお昼を食べた。午後はまた映画。僕がずっと見たかった新作のアクションを見て、夕暮れ時。
今日も僕達は、歩道橋を渡っていた。
…何か嫌な予感がしていた。
繋いだ手から伝わる温もりが。
いつもと同じ、本当にいつもと同じようにかわす会話が。
ミクの笑顔が。
歩く速さが。
全てが全て、いつも通りなのに、まるで鏡に映したような違和感を伝えてくる。
気が付けば、歩道橋の真ん中で、2人とも立ち止まっていた。
手を、そっと外す。
沈黙。
やがてミクが、絞り出すように言った。
「…あのね、レン」
「私、あなたと別れたいと思うの」
その言葉は、きっと精一杯の誠実さだったんだと思う。
「私達、別れよう」とか、そんな押しつけがましいセリフではなく。
ただ、自分の気持ちを告げるだけの言葉。
僕は手をぐっと力いっぱい握りしめて、揺れそうになる視界を必死に抑えて、言う。
「…どうして?」
「…私とあなたは、一緒にいない方がいいと思うから」
どうして、と僕は問いを繰り返す。
ミクはそっと目を伏せて、胸元に自分の手を引き寄せた。その右手に、指輪はない。
彼女は、もう決めてしまっているんだ。
この場には、話し合いに来たのではなく…ただ、伝える為だけにいるのだ。
それを痛感しながらも、僕は待つ。
ミクは、言葉を選ぶようにゆっくりと、でもはっきりと、言った。
「一緒にいない方がいい、なんて言い方は、卑怯だよね。…違うの。そうじゃなくて、私は、…外国に行きたいの」
「…外国?」
「大学を、海外の大学を受けようと思ってて。学校の先生とは1年の頃からずっとその話をしてて、今は受験勉強してるところ。…このまま頑張ったら、きっと受かると思う」
外国、と、繰り返す。外国。ガイコク。知らない言葉みたいだった。
うつむく僕に、ミクはそれでも言葉を続ける。
「私はね、レン。レンと一緒にいる未来でもいいかなって思ってたの。レンが去年言ってたみたいに、ずっと一緒の学校に行って、卒業したら結婚して、レンが働いて私が家事をして、て、そんな生活でも。でも…」
でも、と、そこで初めてミクは言い淀んだ。
僕は静かに続きを待つ。半分以上予想は出来ている、決定打の一言を。
果たして、ミクは時が止まったような沈黙を挟んで、きっぱりと告げた。
「私は、自分の人生をレンに縛られたくはないと思った」
こんなにきっぱりと言い切るミクを見るのは、いつ以来のことだっただろう。
僕は顔を上げられない。上げた瞬間、何をするか分からなくて、とてもではないが彼女の顔なんて見ることができない。
ミクはすう、と深く息を吸い込むと、決定打の続きを述べる。
「レンと一緒にいるのは楽しい。幸せだし、私はレンが好き。大好き。でも、私は、レンとこのまま一緒にいるよりも、自分の意志で夢を叶える世界に行きたいと思ったの」
だから、別れてください。
最後まで言い終えて、ミクはまるで僕に頭を下げるかのように、目を伏せた。
何となく、こうなることは分かっていた気がした。
彼女の心が僕から離れて行っていることくらいは、分かっていた気がした。
でも、何も今じゃなくたっていいじゃないか。デートの終わりで言うなんて、そんな。そんな思いがこみ上げて来て、ぶつけてしまいそうになるのを必死に堪える。八つ当たりだけはしたくない。そう思った。
ミクは、悩んでいた。
ずっと、僕と留学を天秤にかけて悩んでいた。そして、留学を選んだ。それだけの話。
それだけの、話。
頭まで伏せ気味にしながら目を伏せているミクの頭に、僕はゆっくりと手を伸ばす。右手。指輪はたった今、引き抜いてポケットに入れた。何もない右手で、ミクの髪をゆっくりと撫でる。
これが、僕の答えだ。
「…笑って、ミク」
「レン…?」
「笑って。…ミクは、笑っててほしいんだ」
無理矢理浮かべた笑顔は、きっとぼろぼろだろう。
それでも僕は笑顔を浮かべる。浮かべ続ける。
だって、それしか君に贈るものはないと、知っているのだから。
君にすがってばかりだった僕。
泣き虫だった僕。
君の重みになっていた僕。
君が安心できるように、そんな僕は今だけは覆い隠すから。
だから、笑って。
笑って頭を撫で続ける僕を呆然と見上げていたミクは、我に返るとくしゃりと顔を歪める。そして一歩、後ろに下がった。
僕の手の届かない場所へ。
「…さよなら、レン。…ごめんね」
全てを断ち切るように言うと、ミクは僕が止める間もなく後ろを向いて早足で歩きだしてしまう。
その背中を追うことはできなかった。
僕は力なく手を下ろす。笑顔が崩れる。崩れて消える。
…そうか、別れたんだ、僕達。
その言葉がやっと実感を持って僕の中に落ちてくる。
ミクはきっと、もう振り返らない。
それを理解した瞬間に、僕は泣いた。
声を殺して、しゃがみこみそうになるのをこらえて、こらえて、こらえて。
涙だけを、体中の水分を絞りつくすように流しながら。
ミク
ミク
ミク…
「…ほら、泣かないの」
突然優しい声が降ってきて、僕はハッと顔を上げた。
目の前には、立ち去ったはずのミクが、呆れたような顔をして立っていた。よく見えない。涙で視界がかすんでいる。
「ミ、ク…?」
「泣かないで、レン。…お願い」
ミクの声が、何だか震えて聞こえた。
でも彼女の顔が見えない。涙が止まらない。
ごしごしと何度も目元をこすっていると、不意にミクが僕の手を取り上げて、指先で涙を払ってくれた。
少しだけ晴れる視界。おでこをくっつけるように僕の顔を覗きこんだミクが、歌うように言う。
「レンの涙が止まる魔法をかけてあげる」
「…笑って。私と、同じ顔をして」
そして、ミクは笑った。
笑った拍子に、目尻に溜まっていた涙がぽろぽろと零れていたけれど、ミクはそんなもの気にしないで笑った。
つられて、僕も笑う。
何がおかしい訳でもない。悲しみしかなくて、寂しくて、やりきれなくて、…それでも。
これを、終わりとできるように。
僕達は笑った。
笑って、笑顔のまま、僕はまた彼女を見送る。
去り際にたった一言、これまでの全ての想いを乗せて、口にした言葉は。
「ありがと」
そして僕は、たくさんのありがとうを彼女に贈る。
これまでの全てに感謝するように。
これからの未来を祈るように。
これから、僕が向かうべき場所も分からないまま。
最後の最後で、…強がりを。
…僕は、立ち尽くして疲れ切った足を、一歩踏み出す。
彼女とは逆の方向へ。
剥がれそうになる笑顔を必死に張り付けて。
これで終わりだと、心にしっかり言い聞かせて。
「…泣かないぞ」
呟いた瞬間、零れたものには見ないフリをしよう。
夕暮れが、少しずつ夜に変わっていく。
明日がゆっくりとやってくる。
今夜は、満天の星を眺めて夜を明かそう。
心の中いっぱいに広がる、星のような思い出を胸に抱きしめながら。
みんなおひさッス
Amebaにはしょっちゅう来てるけどねwよくなうにいるぜ
それにしても…いやー何日ぶりだっけ?笑笑
一か月とかぶり?約一か月ブログ放置してた~wwやってもーた、さち
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最近いろいろと忙しいんですよ。ボカロの曲聞いたり、ケータイ小説読んだり、ツイッター行ったり、Amebaなう来たり、メール見たり。もうマジ大変なんですよー![]()
まぁそこは置いといて。
ってかねてかね!今日発育測定があったのよ!なんかうち、あるの知らなくて~。マニキュアとるのわすれてたという………めっちゃアカン状況だったんですよ
もうマジ焦った。友達いてよかった~って改めて思った瞬間だった。
んでまぁ、本題はいるよ。
今日発育測定で、身長と体重をはかったんですよ。なんと身長! 縮んでました…
徐々に縮んで行ってるうちの背?
小6の時155.6㎝だったくせに中1の一学期155.4㎝で?今が155.1㎝………なんなのこれ。うちの成長期が終わったとでも?まぁ終わってますけど。←
で、体重!体重ナントナント!!○○㎏だった~!40㎏前半。一学期の時44㎏だったのにナント今!42㎏だったという。2㎏も減ったぜ!2㎏も![]()
なんという…体重減った……嬉しい………!o(^▽^)oいやー、
部活のおかげかね?ナイス部活(*^-^)b
今日は、朝の8時半から、お昼の12時まで、部活があった~
ちなみに
ね。
昨日までね、熱が37.5°とかあったからね、すぐ気持ち悪くなっちゃって…ほとんど休んじゃったんだよねー…あぁ…ホントに申し訳ない…![]()
んで、そのあと、お囃子があった―
実はうちの住んでる地域はね、今日明日お祭りなんですよー
夏祭り
ほんとテンション上がるぜ![]()
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明日はね、ほんとは高校で試合があったんだけど、お囃子出なきゃいけなくなっちゃったから、試合行けなくなった―![]()
でもその行けなくなったぶん、めっちゃ盛り上がってきまーす![]()
![]()
きっと明日には声が死んでるでしょう。
んまあ今日はこんくらいかな。てか左足めっちゃ痛い~![]()

