神様ははじめ

欲の魂と愛の魂

ふたつを
創りました


欲の魂は
いつも
満たされず
見るもの全てを
ねだりました

愛の魂は
そんな欲の魂を
心から愛し

傍らで
持てる全てを
与え続けました

しかし
永い時間が経つ内に
愛の魂には
与える物が
ついに
尽きてしまったのです

愛の魂は

ごめんねこれが私が
あげられる最後の物

そう言うと
自分自身の魂を
欲に与えて
消えてゆきました

独りになった
欲の魂

しばらくの間
静かな時間が
流れました

すると
欲の魂の中に

今迄は
なかった
感情が芽生えて
きました

それは
飢えとも
渇きとも
違う

何か
とてつもない寒さ

その寒さとは

かけがえのない
大切な存在を
なくした
心の痛みだと

欲の魂は
気づきました

いつまでも
あると思っていた
愛にも
限りがあったのです

欲の魂は
泣きながら
愛の魂の名を呼び

神様に
未来永劫
何もいらないから

もう一度
愛の魂を
生き返らせて欲しいと
懇願しました


しかし

その願いが
神様に
届くことは
ありませんでした

一度
旅立った者を
生き返らすのは

命の
理コトワリを
曲げること

それは
いくら神様でも
出来なかったのです

欲の魂は
希望をなくし

くる日も
くる日も

悲しみの底で
愛の魂の名を
呼び続けました

日々
欲の魂は
弱っていきます

何かを
欲しがることや
食べたいと思う
ことは

生きるうえで
とっても
大切なこと

でも今の
欲の魂には
その欲するという
気持ちが消えかかって
いたのです

ある朝
欲の魂が
涙を拭った自分の手を
見ると

透明に
透けてゆくのに
気づきました

自分の
最後の時を
悟った
欲の魂は

ゆっくりと
歩きはじめました

向かったのは
愛の魂が一番好きだった
無償の愛の花が咲く
草原

一歩
一歩と
進むごとに
楽しかった
思い出が

走馬灯のように
巡ります

草原に着くと
欲の魂は
ついに力尽き
倒れ込んでしまいました


欲の魂が
草原に
身を横たえると

その
心の中に
生れた気持ちに
呼応するように

無償の愛の花々が
周りで
一斉に咲きました


なにも
いらない

そんな
混じりけのない
気持ちのまま

瞼を閉じようと
した時

絶対に起こるはずの
ない
奇跡が起こりました

愛の魂が
目の前に
現れたのです


その容姿は
別れた時から
くらべると

随分変わっては
いましたが

欲の魂は
一目で目の前に
居るのが

あの
愛の魂だと
分かりました

でも
どおして
神様でも
叶えられなかった
事が
起こったのでしょう…

そこには
こんな
もう一つの
事実がありました

********


持てる全てを与え
欲の魂の前から
消えた
愛の魂は

次の世界へと続く
遥か彼方の境界を
漂っていました

もう
なにも
あげれない


いよいよ
愛の魂が
転生の門を
潜ろうとした時

この世で
一番愛おしく

悲しい音色が
聞こえて
きました

それは
自分の名を
呼び続ける
欲の魂の声でした

その声は
愛の魂の心を
激しく揺さぶり
共鳴させ

一番
大切な事を
気づかせました

たとえ
あげる物が無くても

一緒に居れる
時間を
大切にすれば
よかった

なにより
何かを犠牲にした
愛なんて
あるはずも無かった

愛の魂の中に
はじめて

純粋で
強い
欲が生まれました

もう一度
逢いたい


愛の魂は
その声のする方向へ

理コトワリを
遡り
飛ぶように
走り出しました

出来るか
どうかなんて
未来を
案ずるより

今を
精一杯に
生きる事

その先に
自分を愛するって
事が
待っている

理コトワリ
に背いた者への
逆風が愛の魂を襲います

愛の魂を
襲ったのは
無の嵐

全てを無に還す
凄まじい奔流

何度も転び
手を地につく内に

愛の魂の
両の手は
脚に変わり

身を守る為に
全身は毛で覆われました

魂は削られ
寿命は
たった十数年に
減り

声は枯れ
言葉すら
失いかけた時

やっと
欲の魂の元へ
たどり着けたのです


欲の魂に
無償の愛

愛の魂に
純粋な欲

相手の気持ちが
自らの心に
生まれた事で

二つの魂は

相手の
喜びや
悲しみ

そして
苦楽を

自分の事の
ように
分かち合える

唯一無二の
存在に
なったのです

神様でも
起こせなかった奇跡
それを
起こしたのは

相手の
幸せも
痛みも
自分の
事のように感じ

ただ
ただ

一緒に生きたいと
お互いに
引き合う
強い想いだったのです

再会の喜びは
まばゆい
虹色の光となって
あたり一面をつつみ

その草原にあった
無償の愛の花々を
染めてゆきました…


***********

一瞬とも
永遠とも
思える
歓喜の
時間が経ったあと

神様は

無償の愛が
芽生えた
欲の魂には
“人ヒト”

純粋な欲が
芽生えた
愛の魂には
“動物ドウブツ”🐶😹

という名を
あたえ

たとえ
限りある
時間の中でも

お互いに
生まれた心を
いつまでも
忘れないよう

寄り添って
生きるように
告げ

地上への橋を
架けました


二つの魂は
見つめあい
手を繋ぎながら
ゆっくりと
地上へ墜ちてゆき

最後に
その橋を虹色に
輝かせました

こうして
この世から

永遠が無くなり
今が生まれ

再会の約束を
交わした
その橋は

いつしか
『虹の橋』
と呼ばれるように
なり

人々の記憶の中で
いつまでも
いつまでも
輝き続けました

FIN


◇◇◇◇◇◇◇◇◇
~あとがき~

どうして君は
こんなに
愛してくれるの?

その答えが
どうしても
見つかりませんでした

こんなにも身近で
こんなにも
かけがいの無い存在
なのに…

だから
その答えは

こんな
神話の中に
あるのかも知れない
そう
思って
書いたお話です

あるか
ないか
じゃなくて

人は
夢を想い描くから

その
夢を叶えてゆくことも
出来る

この
逸話を
読んで頂いた方と

その
傍らに寄り添う子達の
笑顔が
いつまでも
続くよう
願っています

2018.11.
夏にかかる虹.corgi
◇◇◇◇◇◇◇◇◇