君はどこへいったのだろう。 | 漁師,ぴんぴん物語 EpisodeⅠ

君はどこへいったのだろう。

        君はどこへいったのだろう。



今日、君のことを、ふと思い出したので、君のことを書いてみたい。



君に出会ったのは、5年も前の夏のこと。そう、大学2年の時。



その時、自分は大学での生活に迷いを持っていた。


1年から生活の中心だったサッカーサークル。健全な遊び方してるサークルで、人間的に良い奴らばっかりだった。適度に遊び、サッカーを愛し、そんな中で、すくすく自分が育ってる、そんな感じすらしていた。


そこを離れて、生活を一変させるか、いや今まで通りに生きるか、そんな迷いが生まれた。それは、あるゼミに入って、そこでの研究活動を生活の中心にするか、そういう悩みだった。


ゼミ>サークル。


大学1年の頃は、そんな選択はしなかったと思う。でも、このゼミはあまりにその研究活動に時間を割くせいで、結局、そういう選択をするか、もしくはゼミそのものを捨てるか、そんな選択をしなければならなかった。


サークルで、自分が少しずつ人間的に変われた感じがした。高校で忘れてしまった、人を信じられたり、そんなことが一番大きなことだった。


でもゼミはゼミで、大学、そしてこれから一生どう学ぶか、そんな根本的な問いと向き合うことができる、そんな場のように感じた。そう、ここでもまた自分が少しずつ変われる。そんな感じがした。


結局、「ゼミ>サークル」の構図を選択した自分だった。君に出会ったのは、そんなことに悩んでいるころだった。君は、ゼミのみんなが集まる場に、いつもいた。


最初、君とは全く何の縁も感じなかったし、それほど自分が君に魅力を感じたりしなかった。だって、何かを問いかけたって、応えてくれることはなかったから。むしろ、君よりも、他に目がいっていた。それは、本当のことだった。そっちが、本当に魅力を感じたから。


でも、君と一対一で会うことって、思い出してみれば、意外と無かった気がする。いつも君はみんなと一緒の時に会っていたっけ。そうして君と会うことが次第に、次第に・・・そう、何かあるたびに、君と会う、そんなことは自分の生活の習慣ともいえる感じになっていっていた。自分は本当に無自覚だったけれど、自分は、他に目をくれず、君ばかり見始めた。いつからだろう。それは、全くといっていいほど覚えていない。ふとしたとき、その時には既に君のことばかり見ていた。


それから2年後、自分は韓国へ旅立った。でも自分は、君に何も言っていかなかった。しょうがなかった。だって、その時、まだ自分は君の本当の良さに気がついていなかったから。君に対する気持ちに気がついていなかったから。


でも、自分は韓国で君の良さに気がついた。遅かったのかもしれない。毎日、君のことばかり思っている毎日。そんな日々が続いていた頃、時に街中で君に似ている存在を見かけることがあった。でも、あぁ、やっぱ君じゃなきゃ、そんな風に感じ、他に手を出してしまった、その事実に後悔してしまう自分がいた。そう。韓国に君はいなかった。分からず屋の自分にとっては、当たり前じゃないことだった。


自分が帰ってきてから、そう、自分は毎日のように君に会いに行くようになった。自分から会いにいきたい、そんなキモチを隠さず、週に5回も会った時もあったね。そのうち、君に会っては、いつも自分の中に広がる満足感、そんなのを隠さずに、その思いを友達に語ったこともあった。でも、やっぱり恥ずかしくてか、自分は一人で君に会うことができなかった。何でだろう。一人で会いにいっても良かったのに。でもやっぱ出来なかった。君っていう存在は、結局、みんなの宝物だったから。


そして、初めて会ってから4年後。そう、残暑の厳しかったある夏の終わりの頃。自分が君に会いに行ったら、君はもうそこにいなかった。


どこにいったのか。なぜいなくなったのか。あまりに急な出来事で、唖然とした自分がいた。まさかそんな訳ない。そう思いたいと思い込んでは、友だちに悩みを打ち明けることが多くなった。自分は、たとえストーカーと呼ばれようとも構わない、そんな気持ち一身で、君の行方を捜し続けた。みんなにも声をかけて、君の姿を探した。君が引っ越した、そんなことも聞いた。君は、その親が借金を背負っていたんじゃないか、だから消えたんじゃないか。そんな想像もすることがあった。君の親が、休みの日に競輪や競艇に行く姿を自分も駅で見かけたことがあったから、自分なりにその事実を素直に受け入れるしかないのか、と悩んだときもあった。君の存在そのものがこの世から消えたんじゃないかと。


こんな時代だから可能だったのだろう、インターネットの情報版でも、偶然君に関する噂を聞くことがあった。でも、やっぱり君の行方は分からなかった。君は、どこへ行ったのだろう。


ある日、友人から連絡が来た。君の噂の続きだった。君は、本当は疲れ果てていた。そして、ある町で休息、癒しの時間を過ごしているらしいということだった。そんな話が奇跡的に伝わってきた。




自分は、君に気持ちを伝えることはなかった。でも、本当は、君は、自分の気持ちに気がついてくれていたはず。そう、思っている。だって、ずっと自分はいつも君しか見ていなかったから。


また君に会いたい。それはずっと思っているし、これからも絶対変わらない。君は、他の人にしてみれば、とても「普通」な存在かもしれない。でも自分には違う。君の素朴さと、時にあっさり、時に濃厚な雰囲気を醸し出していたのは、本当に大人の領域に達していた。それが、あまりに大きな魅力だった。だから自分だけでなく、みなが君のことを、愛すべき存在としてみていたんだね。


先の友人は、君の消息の続きをこう伝えてくれた。


「いつか、復活するってよ」と。


君は、どこへ行ったのだろう。


次会うときは、道端で、偶然に出会うのだろうか。


自分はそんな奇跡を信じている。


だって、君は、自分が今まで出会った中で、一番の存在だったから。


だからまた出会えるに違いない。


そう思って、自分は、君に会っていたあの頃のように、生きていく勇気が


湧いてくるんだ。




思い起こせば、君は5年経っても変わらなかったね。


じゃあ、君に会えることを期待して、君の懐かしい姿を


ここに残しておきたい。だって、君はみんなのものだから・・・



それじゃあ、またいつか、会える日を願って、君に、


つまり今まで出会った最高の塩らーめんに、乾杯。


  

          men

           誠● 塩こってり大盛り 半ライス付 ¥700

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