プーの籠のある押入れのある六畳間は、まあそれ全体がプーの庭 ぐらいだったことだろう。知らない場所などなかったと思う。

 

他にはプーは掌ワープで台所へも連れて行かれた。

六人掛けのテーブルの上に放されてうろうろと這い回り、ねすみっぽくぷるぷ震えながら渾身の力でテーブルの脚に身を伸ばして下へ降りようとしてつまみ上げられていた。

 

スパゲティを短く折って与えると、両手でつかんでてっぺんからぽりぽりぽりぽりと忙しくかじっていた。

なんだか美味しそうなにおいがしていたのだろう。箸の先をつかんで、早速頬袋におさめはじめた。頬袋はずいぶん深いらしくよくまあそんなに入るもんだと思うぐらいの長さまで箸は押し込まれていったけれど、最後まで入るはずもなくそれどころか、どうにもならない長さを残して頬袋の底を押して押して・・・そのせいでそちら側の顔は後ろへ引っ張られて目まできゅうと細くなった。

 

無理やて・・・それは無理やて

 

それでもしばらく頑張りぬいた後、やっと諦めて箸を投げだした。気になって箸の先をにおってみると案の定臭かった。

ごしごし洗っておいたけど、それがその話題で家族を笑わした後棄てられたのかそれとも気にせず使われたのかについては、わからない。

プーは一度の経験で懲り、二度とそのおもしろい姿を見せてはくれなかった。

 

一回こっきりといえば、トンボを切って見せてくれたこともあった。

背中を向けて丸くなって、何かを夢中になってほうばっているところを、そっと抱き上げえようと両側から掌の中に包み込もうとしたときのことだった。

鼻の両側でひくひく動き続けている短いひげの先に指が触れたとたん、よっぽど驚いたのだろう。

瞬間トンボを切って掌の間から消えて失せ、逃げ出して、途中で振り返りよろよろと戻ってきた。

それも、一回こっきりでタカをくくってしまい、その後はどんなにそっと近づいて掌に入れても、鼻先をふんふん動かしながら、

 

何の用なの~

 

てなものになってしまった。