ブログネタ:まわりが見えなくなる位の恋愛したことある? 参加中あたしが黒猫だった頃。いやそんな昔々じゃない。魔女の手下だった頃でなく。死んで魔女の釜に放り込まれた野良猫でもなく、捨てられたか迷ったか、雨の夜に拾われて同居猫として暮らしていた頃のことだ。
そんな黒猫だったあたしは、子猫から娘猫に育ち、真っ白の気は優しくて力持ちの白猫と恋に落ちて・・・ある夜内緒の外泊のあと、ゆっくりと母猫になったのだった。
小さなコーポの同居人も、そのころ恋の最中で、遠距離恋愛に入った頃だった。
恋の最中は誰にとっても生涯のうちでも最もドラマチックな出来事に溢れた時期だ。
あたしだってその短い間に、同居人に甘えているだけの子猫から母猫にまで変わったのだから。
恋心の切なさも喜びも、同居人はあたしに語り、あたしと分かち合っていた。
国際的な人権問題となった事件が起こり、毎日安否を確認することを依頼された夜があった。
彼の帰国が危ぶまれ退避するように外国に職を探して発つときに、彼女の壊れかけて失われかけて長いことかかっていた恋は実質失われた。
あたしが子猫を抱いているとき、彼女はある日思い立って生命保険をかけた。
そのうちあたしも彼女と別れ野猫になり年を経て死んだ。あの生命保険がおりたやらどうやらは知らない。
そして・・・いつか鯖トラの猫となってアスファルトの路上にいた。
新しく同居人となる女は、あたしを保護した元同僚から運命の猫ですよと言われて2時間以上のドライブであたしを迎えに来るほどの猫きちだったようだ。
子猫だったあたしは、その女、しばとらと暮らしてやがて娘猫になり、通ってくる知り合いに恋をした。
マンション猫で、猫友達も恋猫もいないまま、優しく抱き上げて話しかける知り合いがあたしは好きだ。
けれどある夜、
あたしは、鯖トラの猫でなく黒猫で、小さなコーポの彼女の布団で目覚めた。
同居人が転寝をしていた。そして遠距離恋愛の彼がいた。あたしが目覚めてすぐに彼女は目を覚まし、くるくると見回して、息をついた。
あたしを抱き寄せて、
長い夢を見ていたみたい。彼と別れて泣いて、おまえと別れて泣いて、何年も経って、他の猫と静かに暮らしている夢だった。
ああよかった、また彼ともおまえとも会えた。
そんなことを話した。
ニャアと答えて目覚めた。夢だったようだ。
あたしの枕だった膝が動いて、しばとらがむくむくと起き上がった。
しばとらはあたしを抱き寄せて、あたしの頭の上にぽたぽたと涙を落とした。
おまえが世界で一番の猫・・・
しばとらの言葉も、涙のわけも、あたしは知っているような気がした。
