夏休みが近いらしい。

今年の夏もちょっと同居人は出かけるらしい。その間あたしはアルバイトも休んで、エアコンもいれずにだらだらと、カリカリとお風呂場の洗面器の水で留守番をつとめるわけだ。

もしも同居人に電車のフリーパスがあったら、長旅は船でとか、遠方へは飛行機でとか、誰かと同乗でドライブ旅行とかをやめにしてさ、どこへ行くのも電車でごとごとあたしは彼女の足元にひそんで、そんな風にでかけることにしてもらおう。

きっと帰ってくるからね。事故にあっても幽霊になっても絶対帰ってくるからね。

なんて、怪しいこっちが遠慮したくなるような約束を同居人もしなくてもよくなる。
そうでなくても、うちに居るときのあたしは寂しがりやなんだぞ。

そんなに静かにそばにばかりいたら、切なくなるよ。

同居人はときどきあたしにそういうけど、留守番でせつなくなってるのはあたしのほうなんだぞ。

夏休みの留守番を思うとちょっとブルーになってたけど、そういえばあたしね、昨日お土産を持ってきたんだよね。うにゃ・・・

あたしの習った流儀とは違う先生の組み立てた処方があるけど、飲んでみるニャ？

味見どうにゃ？

わかったわかった。飲んでみるよ付き合うよ。
だからさあ、立てば踏むようなとこに寝転がってるの勘弁してよ。
薬はわたしが煎じるから、椅子の上に座ってなよ。
それと、フリーパスは無いから、電車のプチ旅行もないから、今年も絶対ちゃんと帰ってくるから、留守番ヨロシク。