その朝、あたしは、猫にあるまじき行為・・・無理やり起きて出勤!なんて事をした。


猫にあるまじき、病気でもないのに、ストレスを抱え込んだ結果の疲れとやらを、身に持っていた。



肉球も爪の際もよく洗って前足を拭き、普段の生活のように舐めたりしないように良く注意して、代わりにぷるぷるっと前足を振ってから、いつものように、るんるんと生薬を混ぜていた。


その隣にいらした「おくさん」が、ふと顔を覗き込んで、


ネコちゃん、今日は調子悪いの?


にゃっ・・・  どうして?なの・・・


なんだか今日はいつもより顔が白いから




あたしの顔は、もちろん けっこう毛だらけである。

灰だらけではないが、顔色を特にどうこう言ってくれた人はいない。


「おくさん」の眼力には、ごまかしなんか効きそうにない・・・



ちょっと疲れてるかもしれないです。なじみの猫友達がいなくなって・・・



猫にストレスなんて人間にそうそう知られることも無いはずだった。それほど「おくさん」の目は鋭く、心は温かかった。


良き妻、良き母であり続けた結果であり、その証拠であろうと思った。


家族でもなく、毛だらけの猫の顔色から、考えることも無く、「おくさん」の目は的確に見抜き、

舌はどうということの無い推測の言葉にやさしさとねぎらいを載せて話しかけた。



いつもと変わりなかったのに・・・

思いもかけなかった・・・

この子に限って・・・


実力の不十分なことを、必要な努力を積み重ねていないことを、危機管理の甘さを露見する 様々な言葉がある。


その逆を指し示す、「おくさん」の歩いてきた道、その実力が見えていた。