振り返って、あたしの愛の品質保持期間は長い。玄米のように長く持つ。リキュールのようにゆっくりとふくらむ。

けれど、表につけるべき賞味期限は、買い手を意識して付けなければなるまい。


目に留め、手に取った者が、早く味わっておかねばと思わなければ、恋は前に進まず、こちらの愛に関わらず相手の愛は朽ちてしまう。

愛はゆっくりと長く・・・そんなふうに思っているらしい相手でさえ、手の中にあることを見失い、戸棚の奥にしまいこんだかのように存在を忘れ、他の美味しいものを手に入れては口に運ぶ。

この先ずっと続くような愛であろうと、賞味期限が長ければ期限が尽きないうちに埃にまみれさせ、何となくその期限を信じられなくなり、処分してしまったりする。


品質保持は一生もの、賞味期限は少なめにとしても40年は固いわよ。


そんな表示をしてしまうばかりに、あたしの愛は、何度も何度も処分の憂き目あってきた。




賞味期限を見もしないらしい男は言った。


賞味期限?そんなものあてになるか、食ってみてだめならしかたあるまい。



あたしは返した。


期限が当てにならないなら、一定期間ごとに試験をしましょう。どちらかが規格に外れたら捨てればいい。



あたしたちは互いに互いのリテストを何度も何度もクリアした。

そして、これからも、願うらくは体が朽ちて無くなるまで、リテストを繰り返したい。