猫しっぽ猫からだ猫あたま

たろうや、クロなどの野良猫にエサをあげてたおじいさんが、

大腸がんで入院したのは、

2024年10月24日のことだった。

 

おじいさんは、あらかじめ、

顔見知りだった母に

飼い猫のエサなどをお願いしていった。

 

猫は一匹。

 

いつも押し入れに隠れてて、

飼い主にもなついてない、

老猫という。

 

母と私で、一日2回世話しに行った。

 

エサと水の入れ替え。

 

 

玄関にある猫トイレの排せつ物の始末。

 

 

抜け毛がすごいので、

毎日の床掃除。

 

 

おじいさんは、10月31日に退院して、

私たちの世話の役目は終了した。

 

おじいさんは、おなかに人工肛門をつけることになって、

週2回、ヘルパーと介護士が

世話しにくることになったそうだ。

 

私たちはおじいさんとは、顔見知りだが、

親しくはないので、

その後の生活には関与しなかった。

 

 

猫しっぽ猫からだ猫あたま

 

11月10日。

退院から10日たった夕方、

おじいさんの家から、

わーとかあーとか

わめく声が聞こえてきて、

母に様子を見に行かせた。

 

おじいさんは、

 

「具合がわるくて数歩しか歩けず、

買い出しに行けないため、

朝から何も食べてない」

 

とのことだった。

 

おじいさんは、

 

「去年の残りの灯油でストーブをたいたのが、

不調の原因だと思う」

 

と言ったそう。

 

(あの広い部屋で、

あの一台のストーブが??)

 

私は、違うんじゃないかと思った。

 

 

ともあれ、

おじいさんが、注文した商品を、

コンビニまで買いに走った。

 

弁当2個、サンドイッチ2個

 

個数は言われてないが、

明日の朝の分も考えて多めに。

 

 

母は、体調悪いおじいさんの代わりに、

猫の世話をしに、次の日も家の中に入った。

 

猫しっぽ猫からだ猫あたま

 

その次の日、

おじいさんは、家にいなかった。

 

近所の人が、おじいさんが

救急車で運ばれてくのを見たという。

 

その日は、介護士とヘルパーの訪問の日で、

彼らが異変を察して、

救急車を呼んだらしかった。

 

というわけで、

じいさんが猫の世話ができなくなったので、

勝手ながら、再び、

私と母が、猫の世話を再開した。

 

部屋に入って冷蔵庫を見たら、

あの買った弁当が、

ほぼ手付かずで残されていた。

 

 

イスのわきにも、食べ残しのサンドイッチがあって・・・。

 

つまり、おじいさんは、

この3日間、ほとんど食べてなかったということになる。

 

 

「お母さんは、そばで見てて、異常に気付かなかったの!?」

 

私は、母を責めたが、

 

そうだ、母は、昔から、思いやりにかけて、

介護や人の世話が下手だったんだった。

 

私が独身時代、どれだけ、母から

病気の時、ひどい扱いを受けたか。

 

私が、直接、おじいさんの顔色を

確認できていれば、と悔やんだ。

 

猫しっぽ猫からだ猫あたま

 

11月27日

 

おじいさんの部屋の電気が止められた。

 

おじいさんは、2週間たっても、

退院してこず、

病状は深刻かもしれない、と不安がよぎった。

 

 

 

電気がつかないと、

玄関は昼間でも真っ暗。

 

 

支払い催促状のハガキや封筒が

たくさん、投函されてた。

 

「おじいさんは、再入院なんだから、

猶予をみてよ」

 

と私は悲しくなった。

 

これじゃ、退院後のおじいさんの生活が心配だ。

 

 

暗いので、猫のトイレとエサ水を明るい部屋に移動した。

 

室内はいつも暖かかったが、

日当たりがいいせいだと思った。

 

 

しかし、実際は、この謎の機械が、熱を発してたようだ。下矢印

 

 

冬はじめなので、

日ごとに気温が下がり、

数日たつと、

部屋の中がひんやりするようになったのだった。

 

まだ、極寒ではないので、

猫の体調は大丈夫だろう。

 

猫しっぽ猫からだ猫あたま

 

 

『猫は、飼い主になついてない』と

じいさんは言ってたが、

 

猫は、毎日、

主人がよく座ってた椅子のそばで、

日中は横たわり、

おじいさんの帰宅を待っていた。

 

 

猫しっぽ猫からだ猫あたま

 

2024年12月5日 (木曜日)

 

母の知り合いの、

住宅管理センター―から、

前日に、おじいさんが亡くなったと知らせが来た。

 

じいさんの猫の存在を知った

管理センターの人が、

猫を心配して、母に電話してきたのだ。

 

「役人が来て、猫が見つかったら、

動物愛護センターに連れて行かれたとしても、

保健所に連れて行かれたとしても、

殺処分されるだろう」

 

と彼女は言うのだった。

 

 

 

「役人が部屋のようすを見に来るのは、

おそらく、月曜以降だろうから、

それまでに、猫を保護しないと」

と、母が言った。

 

冷血の母の、めずらしい心やさしい意見。

 

私は、猫を捕まえる方法として、

「捕まえるのは簡単そう。入り口に箱を用意して追い立てたら箱に入るから---・・・」

と説明しだしたら、

 

「何言ってるのかわからない!」

と母は、私の意見など耳もかさず、

母の知人のボランティアに助けを求めたのだった。

 

猫しっぽ猫からだ猫あたま

 

なんと、次の日の金曜日には、

ボランティアのおばさんがやってきた。

 

あらかじめ、午後1時に来ると聞かされてたので、

私も、実家に急いで向かった。

 

 

おじいさんの猫は、

いつものように、

 

 

人が来ると、押し入れに逃げた。

 

 

 

破れた穴から様子を見てる。

 

 

ボランティアが、離れたところに、

罠オリを置いた。

 

それを私は、置きなおし、

オリの口をふすまの出入り口につけて、

わきのすき間を、

がらくたでふさいだ。

 

ボランティアのおばさんは、

 

「それだと、ふだんと違うから、

警戒して、かえって入らなくなるよ」

 

とあきれながら言った。

 

でも、私は、うまくいく確信があった。

 

なぜなら、この猫は、

『世間知らずに生きて、

何も考えず行動してるから、

おびきエサに関係なく、

ふつうに出ようとしてオリに閉じ込められる。』

 

そう、私と同じボーっと生きてるだけのタイプなので、

絶対そうなるにきまってるのだ。

 

ボランティアのおばさんは、

やれやれと言った感じで、

「4時間近づかないでね」

といって、帰って行った。

 

『10分待っててくれますか。すぐつかまるから』

私は、そう言いたかったが、言わなかった。

 

 

猫を引き取るのに、実家の部屋の中を整えてると、

 

「ガシャン」

 

という衝撃音が聞こえた。

 

いや、聞こえるわけがないのだ、

じいさんの猫のいる部屋から、

この部屋は、遠い。

 

 

しかし、

たしかに、聞こえた。

 

いそいで見に行くと、

おじいさんの猫は、しっかりオリにかかっていた。

 

やはり、このほんの10分の間に。

 

 

オリを、すぐに母の部屋に持ってきた。

 

猫は、罠にかかったことに気づいてるだろうか?

 

 

ぱっとつかまり、

ぱっと、部屋に放した。

 

全然、怖い感じてないよね?

 

 

部屋の中で仮眠中の、野良猫たろうが

おじいさんの猫をのぞき込んでいた。

 

 

 

 

たろうは、数日前、ケンカで耳にケガをして、

 

 

病院で治療し、

この物置部屋で療養中だった。

 

 

ひどいケガなので、あと一晩、

家の中で療養の予定だったが、

 

じいさんの猫と、たろう、

同じ部屋でやっていけるだろうか?

 

そう、不安に思ってた矢先、

たろうは、

おじいさんの猫を嫌って、外に出て行ってしまった。


 

まったく、母は、せっかちのせいで、

じいさん猫の保護、一日ずっらせばよかったのに。

 

 

ボランティアの人がオリを引き取りに戻って来たのは、

それから3時間たった頃だった。

 

猫がオリにかかってすぐに電話したが、

「あとで」と、そっけなく。

 

どうやら、私のあの行動が、

動物ボランティアのプライドを

傷つけたらしい。

 

車から降りてこなかった。

 

 

しばらくたって、母の部屋の物置部屋で、

じいさんの猫はどこいったかとさがすと、

棚のすき間にいた。

 

 

「ずっと押し入れにいる」

と飼い主のおじいさんが言うだけあって、

はさまれてるのが好きらしい。

 

 

エサ、水、トイレを用意したが、

エサは、数日たっても、まったく食べなかった。

 

 

いままで、毎日、

一粒残さず、

エサを完食してたのに、

 

 

保護猫には、こういう

「えさを拒否」の態度はみられるらしいが、

 

これが、長期にわたってしまい、

大変なことになるのだった。

 

(つづく)