やりきれない


私は新宿に住んでいたころ駅を利用する事が多かった


地下鉄に乗るとその道のりにホームレスがダンボールで小屋を作って住んでいた


私は毎日そんな風景を見ていたら一人のホームレスに夜中になって声をかけられた


「お姐さん煙草くれないか。なんでもいいから」


私は持っていたピースを差し出したら

「強いの吸ってんだね~」

「そうよそれがいいの」


私はホームレスに対して何の偏見もない


そして毎日通るとその男はいた


「ねえ煙草ある?」


私は黙って持っていた煙草を差し出した


そんなことがあってこの人とは仲良くなる


私も仕事帰りにカップ酒を持って煙草を持ってお邪魔する機会が多くなった


仕事を首になり離婚して実家にも帰れないという


とても優しい人だ


私が聞いた

「ここに毎日いて何考えてるの?」

「う~ん。そうだね私は地べたを這った生き方してるから他人の足跡でこの人が急いでいるのか悩んでいるのかわかるよ」


優しいまなざしで言っていた


名前を聞いても言ってくれないので私は勝手に「しげさん」と呼んでいた


「しげさん、実家には・・・」

そこで止まってしまった

しげさんの性格を知っていたからだ


しばらくしげさんの所に行かなかった

私も忙しかったので・・・


いつもの場所にいない


隣にあるダンボールの家に聞いてみた


「しげさんどうしたの!」


「あ~死んだよ。凍傷だね。あんな態勢ではダメだって言ったのに」


私は脳天を突き上げられた


しげさんが死んだ


忘れないよ


人間の歩く足跡でその人の何かがわかるって、良く覚えておくね


しげさん安らかにね


享年43歳