私たちのような彫り物をしていると温泉にも入れない。お断りだ。
サウナにしても同じである。
正月に熱海で新年会があると言うので愛人さま御一行で行った。
湯河原にある小さな日本家屋の旅館を貸し切ったのだ。
若い衆が数人、愛人は3人、私は本妻として行った。
部屋を見て回ると、それなりに綺麗な部屋だ。
夜はドンちゃん騒ぎで盛り上がる。
「誰か温泉でも入って来い!」
組長が叫んだ
しかし誰も返事をしない。
先に入るのを躊躇したのだろう。
組長はそれを察して先に入りに行った。
私も行く。
そこは混浴の岩風呂だった。
薄暗い雰囲気でなかなかいい。
あとからドカドカと若い衆が皆で来た。
愛人も来た。
混浴の風呂の水の色が変わらないかと思うほどの彫り物のオンパレードだ。
これじゃーカタギは入りずらいだろう。
組長は私の背中の浮き上がった龍を見て
「大きな龍だな・・・・」
組長には背中に仁王様、腕に龍が入っていた。
小さい龍だ。
私が
「その龍はもう年ね・・」
などと言うと黙ってしまう。
組長の体は傷だらけだ。
自然にその体の傷に湯をかけている。
何を思っていたのだろう・・・・
私たちの様にこんな彫り物をしていると、貸し仕切るか、内風呂しかないのだ。
極道にも家族がいる、子供もいる。
たまには海水浴にでも行かせてあげたい。
10数人の家族が江ノ島アタリで子供を遊ばせる。
そのうちに隠していた彫り物を出して日焼けをする。
「ここは天下の大道路だ!文句あっか!!」
回りの客が静かに去っていく
そんな事を言うからヤクザは怖いと思われるのだろう。
実際に怖いのだが・・・・・
私はこういうときは脱いでいる。
余計な虫がついてこないからだ。
極道の海水浴も温泉もそれなりに楽しいのだが、世間の皆様には嫌な思いをさせてしまっただろう。
極道も人間なのだ。
たまには大目に見てやってくれ。
可愛いもんだよ。
ヤクザをたまにはナンパしてみては・・・意外にウブです。
*この江ノ島の海水浴で地元の極道がかなりの数でやってきた、
民宿の台所に上り、包丁を取り出し一気に喧嘩だ。
ここで止めるバカはいない。
包丁を持った極道に怪我をするなというだけだ。
極道にはこんなことがどこに行ってもつき物だ
借り切るにしては海は大きい・・・・