私は２２～５歳ぐらいまでに銀座のクラブでホステスをしていた。
銀座の公衆電話で電話をしていたら、外から変な男が紙に何かを書いている。
「今、どこのお店にいるんですか？」
私は手を横に振って向きを変えた、、と思ったらその方向にまた来た。
銀座のスカウトマンは粘りが勝負だ。
昼間働いてはいたが、私も半グレの様な生活をしていた。
銀座にあるクラブ「姫」と言う。
店長は田中と言ってた。
ママは作詞家だか作曲家だかの某山口洋子だ。
早速、その山口のママの事務所に連れて行かれる羽目になった。
私も暇だったのだ。
ほんの軽い気持ちだった。
広い事務所に一人でいる某山口洋子が腕を組み足も組み私を下から上まで舐めまわす様に見ている。
ポツリと言った
「田中ちゃんの好きそうな子ね」
そんなこんなで、なんだか流れで入店した。
日給が数万だった。
支度金として数百万をくれた。
なかなか美味しい話しだ。
元来、酒が好きで飲み歩いてる私には天職かもしれない。
ただで酒が飲めて、その上に金までくれると言うのだ。
このときに私は大手有名暴力団の人間と同棲していた。
その人間は銀座を縄張りとしている。
その女がスカウトされたのだ。
私は借りてきた猫のようにおとなしく振舞った。
働きはじめてから、その化けの皮がはがれる時が来たのだ。
あえて実名で言う
カルーセル麻紀がチーママだった。
そのヘルプとして２人の客の接待をする。
私を入れて４人だ。
客の１人が美空ひばりの弟で、ひばり養子になった、かずやと言う男の父親だ。
もう１人は山口組の故田岡組長の長男だ。
この２人が私に向かって話しかけてくる。
ソレを横で見ているカルーセル麻紀は面白くない。
場も半ばに差し掛かった頃に、このオカマに顔を貸せと呼ばれた。
早い話が自分の客を取るなということだ。
階段の踊り場に呼ばれて、デカイ顔をするんじゃねえーよ！ときた。
私も血気盛んな年だった。
「この馬鹿ヤロー！キンタマ取ったって男だろ！」
カルーセル麻紀は湯気が立つほど顔を蒸気させて怒りまくった。
私は内心
（テメーはどうあがいたって女にはなれないんだよ！）
と、言いながら
「ごめんなさい、こういう仕事初めてなもんで・・・・」
ようやく女？に戻った男と二人で客席に戻った。
この一件で私はこの店を辞めた。
半年はいただろう。
支度金は１年いないと返金しなければならない。
そこがヤクザ根性だ。
同棲してるのが姫も縄張りとしてる男と同棲してるとは、初めて知ったのだ。
店長の田中を日航ホテルの喫茶店に呼んだ。
田中は小さくなって一言も喋べらない。
コーヒーを頼む。
男が店長に砂糖は何倍入れるかを聞いた。
それにも応えない
頭にきた男はスプーンで何倍も入れた。
「お前がいいって言うまで入れるぞ・・・・」
こぼれてもお構いなしだ。
今度はそれを全部飲めと言う。
その店長は飲まなかった。
グダグダあったが、支度金は返さないですんだ。
谷隼人の前の奥さんも働いていた。
まばたきをしない人形のように、かなりキメていた。
あれじゃ～離婚だ。
｢姫」と言うところは誰かの台詞ではないけど魔物の住処だ。
丁度、辞めたかったので、よかった。
芸能人と著名人、ヤクザしかこないのだ！
カタギの人間は入りにくいクラブだ。
私が水商売で客のツケを持った。売り掛けだ。
ビビたる金額だ。５０万ぐらいのもんだろう。
それを払わないでトンズラした。
黙っている私ではない。
右翼の事務所に連れ込んで正面に座らせた。
回りは５人の若い衆が直立で立っている。
逃げられないのではなくて、逃がさない！
玄関の鍵は閉めない。
逮捕監禁罪になってしまう。
そこで客の男は払える金が無いと言った。
私は無いなら飲むなと言いたかったが黙ってた。
その無言で沈黙の空気が男を段々圧迫していく。
５０万ぐらいで殴り殺しはしないけど、あまりのギャップに言葉が出なかった。
豪遊してる顔ではない。
数日たって男の客が三田警察に飛び込んだ。
私に逮捕状だ。
罪状「脅迫」
私は静かに言っただけだ
「アンタの指一本もらっても漬物にもならない」
逮捕状に、この文句が書いてあった。
水商売は、水物だ。
飲んで流れるものには客は金を払いたくない。
どうせ脅迫なら、とことん脅しぬいてやるんだった。
罰金で出たが、前に書いたサギさんが日本酒を二本持って刑事部屋に置いて私を横浜に連れて帰った。
サギさんは今懲役です。
脅迫とは相手が怖いと感じたら罪になりますのでご注意。