末端の売人は客に売る商売モノから、かすめて自分で食っているのが多い。
仕入れたネタを買ってくるならまだいいほうだ。
客から先に金を取り、買いに行く。
これは最悪だ。
自分で食うモノが早く欲しいのだが金がない!
客も仕方がないから銭を出すのだろう。
ポン中は一度飛び出すと何時間も帰ってこない。時間の感覚も麻痺しているから待ち合わせなどは出来ない。
末端も最初は買い手だったのが売人に変わっていく。
旨みを覚えるのだろう。
そのためにパケの中身が統一されてない。
「姐さん、これ見てください。こっちの方が少なくないですかね・・・」
「少ない!・・かなり少ないよ!」
その一言だ。
自分で食えば少なくなるのは当たり前だ。
客の上前をはねている。
私の知る限り、セコイ売人が多かった。
パケを作るのに
「姐さん、煎餅の袋ありませんか?」
「あるわよ」
「じゃあ、今から取りに行きます」
そんな具合で煎餅の袋はパケの袋に変身する。
煎餅の袋は確かに丈夫だ。
私も何度か手伝った事がある。
感心しながらその煎餅のパケを眺めていたものだ。
ネタ屋に来れば、必ず試し打ちをするのが当たり前だ。
そのまますぐに帰る売人もいるが、なかなか帰らないのもいる。
「姐さん、もう少しいいですか・・・」
遠慮がちに言う
長居するのはもう一発を待っているのだ。
ガツンとモノを入れておきたいのだろう。
「体は大丈夫なの?そこにあるから勝手にやって・・」
そう言うと、勝手にやった後、少しかすめて行くのがわかる。
まったくセコイが、生活もかかっているんだな~と諦めていた。
1gのパケには、どう考えても0.6~7gではないだろうか。
文句を言う客もいるみたいだが、新しい客はもんくさえ言わない。
きっとこんなものかとおもっているのかも。
私の借りていた部屋の下は布団屋だった。
その二階に住んでいたのだ。
布団屋にドラ息子がいて、すぐにシャブヅケになった。
手なずけるのには簡単な息子だ。
それ以降は客は蒲団屋から入ってくる。
外見は繁盛してる蒲団屋に見えたかも知れない。
私にとっては一石二鳥だった。
シャブの在庫は蒲団屋の倉庫に入れていた。
バレることはなかったのだ。
昔、まだトルコ風呂と呼ばれていた時代に、そこで働く女の客が多かった。
1発分だけやって出かける。
「まったく!こんなもんでもやらなきゃ客の相手なんかしてられないわよ」
と言いながら、慣れた手つきで素早く打つ。
「じゃー、また」
そう言いながら商売に出かけていく。
シャブは持って歩かない女が多かった。
慎重派だ。
末端のネタ屋は色々な混ぜモノを確かに入れる。
下ネタなどはどこでも入っているだろう。
これでセックスなどをしたら何日やっているのか・・・・
サル並みだ。
アンナカがいいと言う者も多い。
細かい作業をしたいからと言うのもいる。
理由は色々だ・・・
いずれにしても寝れないのがシャブだろう。
しかしポン中とはおかしなものだ。
体に悪いのは承知でやってることだろうが
「姐さん、これカルシウムですけど、飲んどいた方がいいですよ」
「これ栄養剤のドリンクです」
こんな事は日常茶飯事だった。
誰もが身体に悪いと自覚はしていても、それを辞められないのだから仕方がない。
私もドリンクなどは飲んでいた。
売人は銭が無いのばかりだった。
その為にネタも買えない。
私のところは、いつもニコニコ現金払いが鉄則だ。
仕方がないので、私の喜平型の金を何度、一六銀行に行かせたかわからない。
売人は金があれば客の上前をかするのは当たり前だ。
客は何も知らずに買っていく。
ネタ屋の前で売人達は試し打ちに皮膚の硬くなった部分に針を刺す。
針が弓なりに曲がるが、お構いないしだ。
それでもスンナリはいるのだから恐れ入った。
私は人前では打たないので、いつも言われる
「姐さんもやったらどうですか?」
もうやってるんだ!と言いたいが
「私は、いいのよ」
なんて、素知らぬ顔をする。
末端の売り物は1gパケに0.5も入ってれば上等か・・・
セコイがそれでもパケは売れていく。
末端はそれなりに、美味しい仕事かもしれない。
ただ、見るたびに身体が小さくなり、顔色が黒光りしていくのがわかる。
でも大事な客だ。
そんな事まで心配はしていられない。
それがネタ元の本音かも・・・
危ないのには売らないだけだ・・・
汚い銭も銭には変わり無い。
客が帰ると私はゆっくりネタを溶いていた。