それは奇怪な・・

チリッと音をたてて炎がはじけた。

 ではその汽車は妖怪列車だったというわけか・・・

ぬらぬらとあぶりだされる顔たちはいずれも劣らぬ険しい顔つき

額のとびでた男が声をだした

 それならこんな話もあるぜ

男の声は顔からは想像できないほど甲高く通る声だった


海のある町にでた

それは三方を山に最後のひとつを海に向かう小さな田舎町だった


人魚の伝説があるというのでいったのだが町の者たちの話はなんとも的を得ず

半ばあきらめかけていた


世界に五万とあるほら話のひとつだときめかかっていた。


最後の一人にしようときめて海にうかぶ小さな小船の船長に声をかけたんだ


 よう船長今日の機嫌はどうだい?大漁かい?


 ああ・・・いつもどおり大漁さ


 そうかい そりゃあ何よりさ。ちょっとききたいことがあるんだが話きいてくれるかい?

 

 よそ者の話なんか聞く暇はねえよ


 まあそういうなよ。この町に伝わる人魚の伝説の話なんだ


 人魚?ああ それがどうしたい?


 そんなもんはいねえとは思うんだがその伝説をきいたことあるかい?


 あるも何も人魚はいるよ。

 

 本当かい?どこにだい


 そこらじゅうにさ

 

 あったことあるのかい?


 できたら会いたくないね

 

 なぜだい


 魚がとれねえからさ


 どういったことでい そりゃ


 人魚の恨みは怖いぜ。人間の何倍もだ。一度嫌われたら海に嫌われたも同然だ。二度と漁にでれないどころ   か食い物にされちまうよ。


 本当かい そりゃ。そんなに怖いのかい?


 本当さ。もし疑うんならあの岬の向こうにみえる無人島にいってみな。うようよいるよ。人魚は人間が好きだからな。遊び半分でいったら怪我するぞ。

 

次の日私は小さな小船を借りてその島に近づくことにした。


ようやく近くまで来たのだが島のまわりはきりたった岩場ばかりで船をつけられない。

さてどうしたもんかと思案していると一艘の小船がぼんやりとみえるではないか


霧が多くみえにくかったが近づくとやはり船のようだ。

声をかけようとしてふと気がついた。これはあの爺さんの船ではないか。。。


 きたのかい?

ぞっとしたよ。なにしろその声はまさに爺さんの声だった。何より私の船からきこえてくるんだよ


 怪我するっていっただろう

背筋が凍ったよ。人間でないなにかをかんじたんだ。

 ここは人間の墓場だ。どうしてもみたいならみせてやろう。

 もやもやとした霧のむこうに島のかたちがみえる。船はゆっくりと舵をとり岩場のひとつにちかづいていった。


そこでわたしはみたんだよ。

たくさんの白骨化した人間のそれを。


 気がついたかい。ここは人魚の村だ。誰もたちいることのできない人魚のな。

 これ以上かぎまわるとお前も。。。


私は気を失ったらしい。

気がつくと海岸に寝そべっていたよ。

夢かもしれない。しかし現実と考えると合点のいくことがあるんだ。

その町の人たちはあの爺さんをのぞいて誰一人口がきけなかったんだ。



 





霧深い夜だった。

私はある山小屋にたどりついたのだ。


それは濃くぬめぬめした空気のカーテンの向こう側にあった。

真っ黒な漆黒の闇の中にちろちろとほのおの先が見えたのだ。

たどりついたのが何時のことだったのかわからないが、夜はたっぷりあるように思えた。


真ん中の土間には火があり、みなそれに向かって座っていた。

ごつごつしたできものだらけの顔やひげに埋もれた顔が炎の妖艶で気まぐれな動きに照らされて、より醜悪にみえた。


今から話す話たちは、そこで聞いた摩訶不思議な話たちなのである。


第一章


河童 Kappa


これはアルプスに程近い小さな村を旅していたときのことだが、不思議なうわさをきいた。

河童と会ったというんだ。正確にはkappaとね。

河童というのは日本にいる妖怪の類だと思っていたが、スイスのアルプスでも妖怪の類として知られているもの

でkappaという生き物がいるらしい。


よくよく話をきくと見た目は全然違うようだ。


顔は赤くけむくじゃらで頭の上に皿はないらしい。眼はきいろく、しっぱほ長くサルのようだが基本的には二足歩行で人間の何倍も早く走ることができるらしい。身長も高く小さなものでも1メートル80はあるんだそうだ。そして高い山の山頂近くに住むという。


見た目は違えど人にあらずものでそのような生き物が日本の河童と同じ呼び名で呼ばれていることに多少驚いた。


どこで会ったのかときくと駅の近くでそれらしきものをみたというのだ。

「あれは確かに伝説の妖怪kappaだっった」と言い張るので興味が湧いて駅のほうに歩いていった。


町で唯一の駅であったがそこには売店のひとつもなく寂れた様子であった。

駅員もいないので構内にはいって線路をみつめながらいつくるともしれない汽車の汽笛を思い出そうとしていた。

すると漆黒の闇の中にだれかがいる気配がするではないか。


目をこらしてよくみると何と線路の真ん中に大きな人の形をしたものがへそを上にしてねっころがっているではないか。


私は駅の先まで走っていってもう一度それをよくみようと目をこらした。

そうするとそれはムクリと体を起こしこちらをみているようであった。


瞬きひとつしたであろうか。次に私が目をあけるとすぐ横に駅員がたっていた。


「何を探しておられるのです。」


心臓が飛び出すかとおもわれるほど驚いた私はあやうく線路に落ちそうになったが踏みとどまった。


遠くのほうに汽笛が聞こえその音はどんどん近づいてくる。

大きな黄色い眼んたまのようなライトが大きな音とともにむこうのカーブをまわっているのが見えた。


「のられますか?」

とっさに首を横にふった。


駅員はそのまま何もいわず駅員室に戻る途中鏡のまえで立ち止まりしげしげと自分の顔をのぞきこんでいた。

そして汽車がつくとのりこんでいってしまったのだ。


駅員は体長2メートル50はあろうかという大男でぜんしんけむくじゃらの黄色い目をした男だった。


私はしばらく呆然としていたのだがようやく夢から覚めたように気を取り戻し切符売り場にもどってきた。

ガラス越しに先ほどの汽車で降りてきた男が駅員の姿で何食わぬ顔で座っていたよ。