前回、パート1からの続き。

詩集、預言書編。

結構な数なので、さらっと。

ウィリアム•ブレイクは、1788年頃 、レリーフ•エッチングという手法を発明して以来、多くの彩飾印刷による詩集を制作しています。

中世の装飾写本に影響されたデザインは 文字も含めて魅力的。

詩集の第1弾「無垢の歌」より
「The Shepherd  羊飼い」
1789年 印刷、1802年頃 彩色


その後、出版にいたらなかった「経験の歌」と合わせて、1794年、詩集「無垢と経験の歌」を出版。

現在も多くの人に研究されてる詩集です。


印刷後、手描きで水彩絵の具で彩色されています。

タイトル画

数点、展示されてました。

「Laughing Song 笑いの歌 」

グラデーションが素敵!

「The Tyger 虎」

彩色時の色の微妙な変化で色々なバージョンが見れるけど、これはかなり暗い色に仕上がってる。


「The Sick Rose 病める薔薇」


「The Fly 蝿」

文学が苦手な私にも分かりやすい哲学的な詩。


チョーサーの「カンターベリー物語」の登場人物を描いた
「カンターベリーの巡礼者達」1810年頃
エッチング、エングレービング、水彩

主要人物を大きく描き、脇役を小さく描いてある。

背景のゴシック様式の建物が格好いい!
クローズアップ。


「Laocoön ラオコーン」
イメージ:1815年 、テキスト:1826~27年
エッチング、エングレービング、バニシング

1507年にローマで発見された大理石の「ラオコーンと2人の息子」像を元に描かれています。
像自体はB.C.2世紀~A.D.1世紀に彫刻されたものといわれてます。

ギリシャ神話の中のトロイアの祭司ラオコーン。  トロイア戦争で、"トロイの木馬"を受け取るなと提言したため、女神アテーナの怒りに触れ、邪魔だと送り込まれた蛇に子供と一緒に殺される、という場面の有名な彫刻を銅板印刷したもの。

絵の制作から10年を経て、周りにぐるりと文字を書き込む。
まるで落書き状態。

その一見落書きに見える中に ブレイクの哲学、思想がビッチリ。

戦争に関するものも目につきます。
"お金がはびこってる所では芸術は行われず、戦争だけが行われる。"
富は芸術を破壊すると言って、裕福になることを恐れ慎ましく生活していたと言われているブレイクらしい言葉です。

ブレイクはフランス革命やアメリカの独立戦争を身近に感じる時代に生きており、200年以上前に人種の平等、奴隷制度廃止、宗教のシンクレティズム、男女平等、自由愛、経済格差のない世界を主張していた革命的思想の持ち主。

書いてあることは、今では当たり前で現代人の常識に近いと思う。

自分の芸術の信念も書いてあります。
" 芸術は 美しい裸体なしでは存在しない。"とか。

ブレイクはミケランジェロの作品のように筋肉美の描かれた絵画が大好きで、ご覧の通り、彼自身の作品の人物も筋肉美が特徴。

女性の絵も筋肉質。

1フレーズごと読むとブレイクの頭の中を覗けます。


ウィリアム•ブレイクが生んだ神話のキャラクター達のパネル。



多くの神話的叙事詩を書いていて、そこに登場するのです。

この先に、1コーナー展示があったのですが、ガイド付きツアーの方々がいたため、「あとで観よう」と飛ばしてたら、すっかり忘れて観ずに帰ってしまいました泣
まあ、それくらい他の展示で大満足して頭が一杯になってたということですか。。。

ということで、そのコーナーにあったと思われる外の階段にまで宣伝してあり今回の展覧会での主役級の絵「ユリゼン」が観れてない。
大失敗アセアセ

アメリカ  アメリカ  アメリカ

預言書の一つ、
「America A Prophecy アメリカ ひとつの預言 」、アメリカでの展覧会だからか 大々的にフィーチャーされてました。

アメリカの独立戦争はブレイクの住む国イギリスとアメリカ本土のイギリス植民地との戦争。

その結果、アメリカは独立を勝ち取るわけですが、イギリスでも勿論大騒ぎ。

ブレイクは 正統な暴君への対立だったと捉えていたけれど、それをイギリスで堂々と発表すると迫害されかねないため、独立戦争を寓話化して自分が生み出したキャラクターを使いながら語っているというもの。

当時印刷されたものは14冊のみ残っていて、殆どは白黒本。
数少ないカラー本を解体して額に入れ、全ページ展示してありました。

本のページなので、勿論 ビックリするくらい小さい。
その中に 小さく書かれた文字の美しさスター

順番に写真を載せます。

「America A Prophecy 」1807年























次は、100枚の図版からなるブレイク最大の預言書「エルサレム」からのページ数点。

「Jerusalem the Emanation of the
Giant Albion」
1821年頃










ヨーロッパ、アメリカなど大陸シリーズ最後のアフリカ、アジアに捧げられた預言書。
「The song of Los」の扉絵
1795年
ユリゼンが太陽にお祈りしてるところ。



次は、「ミルトン」から数点。

「Milton A Poem」1804-11年頃


ページの後半にある序詩は、現在もイングランドの愛国歌「エルサレム」の歌詞として 色々な行事で歌われている。
そういう意味では、このページは世界中で一番有名だということですね。



詩人ミルトンが天国から戻ってくる時、流れ星となって落ちてきて、ブレイクの左足から入ってきて、そこから出た黒い雲がヨーロッパ中を覆った、という場面。

星がミルトン、人物はブレイク。
筋肉美に魅せられたウィリアム•ブレイクが実際にこの絵の様に鍛え上げていたのか気になるところです。

星星星星星

と、ここで終わろうとしたけど、ついでに
もう数点。

内容的に本当はパート1に載せるべきでしたが、写真数も多くなり省いてたもの。


ブレイクを定期的に支えたパトロンであったThomas Buttsの依頼作品(80点以上あったとか。聖書関連が多い)のうちの5作品。


「The Death of Virgin」1803年
水彩


「Entombment」1805年頃
インク、水彩


「The Crucifixion "Behold thy mother"」1805年頃。  インク、水彩


「Judas betrays him」1803~5年頃
インク、グラファイト、水彩


「The Blasphemer」1800年頃
インク、グラファイト、水彩



展覧会には来てなかったけど、ブレイクの聖書画で好きなものをついでに紹介。

「Mary Magdalene at the Sepulcher 」(1805)

主役のマグダラのマリアではなく、天使が気に入ってます。



おまけ。

ブレイクに仕事の依頼をすることにより経済的にも助けていた友人のHenry Fuseli の作品も
ブレイクを取り巻く同時代の画家のコーナーに展示されていました。


「An Old Man Murdered By Tree Younger Men」
 Henry Fuseli 
1770年代初期
ペン、黒インク、グレーウォッシュ

展示には説明がなかったため、この可哀想な老人に何が起こってるのかは不明です。

お友達同士、影響を与えあっていたのですね。


以上、ウィリアム•ブレイク展 レポートでした。