注意書き
目が覚めると、雨はすっかりあがっていた。
昨晩の雨もたいしたことはなかったらしい。
まずは、軽く胸を撫で下ろす。
雨が降ると気になることがあった。
公園。
公園の看板。注意書き。
家から歩いて10分くらいのところに比較的大きな公園がある。
園内には池があり、噴水があり、
ちょっとした野球場まで隣接されている近所の憩いの場。
先日も散歩の帰り道にぶらっと寄ってみたが、
子供連れの親たちが一様に楽しそうだったのが印象的だった。
入口には公園の敷地案内図。
ジョギングコースや敷地内の高低差などが記されている。
かなり薄くなってしまっているが、
その日、公園デビューを果たそうとしていたオレは、
興味深くその内容に目を通していた。
しばらくして、オレはある注意書きに目を奪われる。
池の周囲を巡らす遊歩道。
隣にはこんな一文が記されている。
『5年に1度の割合で水没』
オレの頭に衝撃が走る。
確かに池が溢れるくらいの大雨もあるだろう。
それは長い歴史からはじき出されたものに違いないし、
ちょうど5年に1度の間隔でそんな惨事が起こってきてしまったに違いない。
注意書きは、そのくらいシビアなほうがいいのかもしれない。
さらに読み進める。
『50年に1度の割合で水没』
桁が変わっていた。
頭を殴られたような衝撃が走る。
この警告文が表しているもの。
50年に1度の割合で、この公園全体は水没します。
これが過去の歴史から算出されたものかは分からない。
ただ、その公園が水没するほどの雨量は、
まず確実に町一帯が大惨事である。
シビアな注意書きに身を震わせながら、
その日のオレは帰宅の途についた。
雨が降ると気になることがある。
この雨は5年に1度の始まりなのではないか。
50年に1度の始まりなのではないかと。
目が覚めると、雨はすっかりあがっていた。
今日も公園は賑やかであるに違いない。