風のゆうびんやさん
たけした ふみこさん 文
🍃風のゆうびんやさんは
風のじてん車にのって
やってきます。
リンリンと ベルを ならして、
ひゅうっと とおりすぎて
いきます。
ゆうびんやさんの かばんは、
はいたつする 手紙で いっぱいです。
でも、ちっとも
おもたそうでは ありません。
せまい みちでも、さかみちでも、
ゆうびんやさんは、口ぶえを
ふきながら、すいすい
はしります。
🍃「あげはちょうさん、ゆうびんです。」
花びらみたいな、いい
においの 手紙が とどきました。
「あら、うれしい。パーティの
しょうたいじょうですって。
こうえんで、ばらの 花が
さいたんですって。
ぜひ 行かなくちゃ。」
おしゃれな あげはちょうは、
いそいそと したくを
はじめます。
🍃「犬さん、ゆうびんです。」
にわの 犬小屋の、
おじいさん犬の ところには、
はがきが とどきました。
「ほう。となり町に
ひっこして いった、
まごたちからだ。みんな
元気に くらして います、か。
うん。よかった、よかった。」
犬は、目を ほそくして、
なんども はがきを
読みなおします。
🍃「すずめさん、ゆうびんです。」
こんどの 手紙は、やねの上。
でも、風の じてん車は、
どこにでも はいたつします。
「すずめの 学校が はじまる
おしらせよ。」
手紙を 読んで、すずめの
おかあさんが いいました。
「学校って、なあに。
なに する ところなの。」
この 春 生まれた
子すずめたちが ききました。
「みんなで あそんだり、
うたを うたったり、それから、
じょうずな とびかたとか、
えさの さがしかたとか、
いろんな ことを ならうのよ。」
「わあ、おもしろそう。
早く 行きたいな。」
子すずめたちは、 みじかい
羽を ひろげて、おかあさんの
まわりを ぴょんぴょん
とびまわりました。
🍃リンリン。じてん車の ベルを
ならして、ゆうびんやさんは、
みどりの 木かげを くぐります。
「くもさん、ゆうびんです。
おや、くもさんは、
おひるね中だ。」
ゆうびんやさんは、くもの すの
はしっこに、小さな みどり色の
ふうとうを、ていねいに
はさみました。
くもが目を さましたら、
すぐ 気が つくように。
でも、しらない 人がみたら、
ぎん色に 光る くものすに
小さな はっぱがひっかかって
いるだけだと おもうかも
しれません。
はいたつする 手紙は まだまだ
たくさん あります。
風の ゆうびんやさんは、
口ぶえを ふきながら
元気よく はしって いきます。