いやらしい話だが、収益を調べてしまった。

およそ前者が13億、後者が9億。

 

『君に届け』はかなり低予算の映画だと思う。

高校生の恋と友情が非常にふんわりと描かれ、ほぼ高校の校舎で撮影が行われている。

物語の起伏も乏しく、冒頭から両思いの二人が、特に波乱もなく最後結ばれる話である。

主人公の爽子は貞子と呼ばれ、忌み嫌われる存在だが、肝試しで貞子役をかって出てことにより、いけてる女子二人と仲良くなる。

恋愛よりも、どうもここが引っかかる。

 

キャラクターが異なる人物が行動を共にすることは難しい。

話も合わないし、価値観も異なる。

だがすっと仲良くなり、勘違いから仲違いはするものの(というか爽子が一方的に縁を切るだけだが)、爽子のことをなぜか心底大切に思ってくれる友達ができるのだ。

 

恋愛の方も、誰からも好かれる風早くんが爽子を好きで、両思いというのは最初からわかっており、波乱もなく、風早くんが勝手にいつもモヤモヤしているだけで、時間の流れが非常にゆるやか。

高校生の友情と恋愛のファンタジー。

 

一方、『蜜蜂と遠雷』はかなり本気の映画だ。

冒頭から圧倒される緊迫感がある。

音がとにかく素晴らしいと感じる。

この映画はコンクール入賞を目指す若者たちのピアノ演奏が繰り返される。

そこに登場人物のキャラクターの感情を乗せ、また一人一人の音楽家としてのバックグラウンドのようなものを体現する、というのはかなりチャレンジングだ。

だからこの映画を撮ろう、と思った時、いくつもの難題があったはずであり、それをこのように見事に映画にしたことにまず心打たれるし、頭が下がる思いだ。

 

ラストの本選のシーンは特に圧倒される。

天才少女が復活する場面だが、一つの奇跡に立ち会えたという感じ、というのは少し大げさだろうか?

しかし迫力や素晴らしい演奏に加え、少女の心因の克服。

 

加えて、今思い出したが、そう、この映画は、音だけでなく映像も素晴らしいのだ。

カット一つ一つが美しく惹きつけられる。

 

非常によくできた映画だと思う。

誰かの本気は、必ずスクリーンを通しても伝わる。

この映画に携わった人に敬意を表する。