暗いので朝上げます。

なのに、pixivでは予想外の反応を戴いた。ありがとうございます花束

 

 

 

 

 

 ねえ……アレクセイ。

 

 水に落ちた時のことを憶えてる?

 

 地面から両足が浮き、
 摑むものは何もない。

 

 空が遠くなる。
 光は闇になる。

 

 手を伸ばしても届かない。

 

 苦しかった?
 水は冷たかった?
 ぼくを……恨んだ?

 

 人は無力だね。

 

 たったひとり、助けることさえできない。

 

 ただ泣いて。
 凍えて。

 

 行かないでって。

 

 泣いて、泣いて。
 凍えて、凍えて。

 

 行かないで、行かないで──

 

 自分が何者であるかも忘れて。
 大切な人のことも忘れて……。

 

 いっそのこと雨になって、
 流れていく貴方に追いついて、
 冷たい躰を包んであげられたらどんなに良かったかって。

 

 もっとぼくに力があったならって。

 

 今なら、そう思うよ。
 
 ねえ……アレクセイ。
 待っていて。

 

 たぶん、もうすぐ追いつくから。
 きっと、追いつくから。

 

 空は繋がっている。
 水は繋がっている。

 

 貴方とぼくの世界にも、やがて光が射してくる。

 

 そうしたら、直ぐに貴方を見つけて、
 ぼくが包んであげる。
 凍え切った貴方の躰を。

 

 そして、貴方の上にだけ、虹をかけてあげる。
 ぼくはそのまま溶けてしまってもいいから。

 


 ごめんね、アレクセイ。
 たくさん待たせて。

 

 待ちくたびれた、って責めてもいいよ。

 

 どうして貴方が謝るの?

 

 うん……。聴こえてるよ、ちゃんと。

 

 うん……うん……、
 知っているよ、そんなこと。

 

 ぼくだって、愛してる。

 

 

 雨、止んだね。


 虹が綺麗だね──

 

 

 

 

 

 

『Aqua / 坂本龍一』を聴いていて、不意に降ってきたエピソード。
突如絶たれた二人の未来と救いようのないラストが少しでも昇華されますように。

 

Aqua / Ryuichi Sakamoto - From “Opus”

 

 

 

 

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