一瞬で終わったサトシとの復活愛。

なんだか虚しいキモチになるのと同時に、なんだかすごくホッとしている自分もいる。

そう、わたしとサトシは。

きっとあの日を境に、運命が狂ってしまったのかもしれない。

付き合い当初は順調そのものだった、そうあの日までは・・・。


付き合って2ヶ月ぐらい経ったある日、とある事故が起きた。

その日からなんだか嫌な予感がし、それは数週間過ぎた後、現実のものとなった。

そんなことに慣れちゃいけないのに、わたしは正直もう慣れていた。


何度も経験し、身をもって実感したことがある。

この世の中で。

これほど女を幸せにするものはなく、また不幸にするものもないのでは?

時期、環境、相手・・・。

それらに左右され、そして決断しなければいけないことって他にはないであろうか?

決断の道は2手に、それぞれ真逆の方向に分かれている。


とは言っても、果たして少しの嬉しさも感じない女がいるのだろうか?とも思う。

いや。

女である限りは、決していないはずである。


好きな人との子供ができるって、女にとっては。

きっと、何よりもすごいことなんだと思うから。

ヨウスケとは、地元系の街で出会った。


たまたまわたしが、女友達と2人でいるときに。

先輩やら後輩やら、地元軍団といるヨウスケと知り合った。


とは言っても、最初からいきなり、ヨウスケと仲良くなったわけではなく。

大勢で怖いところ探検に行ったり、深夜のファミレスにたまったり、ドライブしたり。


わたしたちは20歳を過ぎた大学生で、ヨウスケたちは高校生~18、19の若者だった。

そして、お互い夏休みだった。

つまり、みんなヒマだったのだ。


そうこうしてるうちに。

グループの中でも、よく遊ぶ小グループが出来上がった。

SA、リカ、ヨウスケ、エイタ。

というか、リカがヨウスケを気に入ってしまって。

それに協力するって形で、自然とこの4人で遊ぶ機会を、わたしとリカが作るようにしたのだ。


正直、わたしも。

ヨウスケのこと、ちょっといいなって思ってたんだ。

でも、そのときにリカはもう。

大好きレベルの気持ちに、なっていて。

そこまで好きなら、協力しようって素直に思った。


それに、ヨウスケもリカを、気に入ってると思ったから。

そんな中に、わたしが入ってくのって、超お邪魔虫だもんね。

わたしは、ヨウスケに対する気持ちを、完全になくした。


ところが、ある夜。

公園で4人で遊んでいたら、リカが車の鍵をなくしてしまうという、事件がおきた。

懐中電灯をエイタの家に取りに行った、リカとエイタ。

暗い公園に残った、わたしとヨウスケ。

そのとき、わたしはいままでにないぐらい、心臓がドキドキしてしまい。

リカとエイタがずっと帰って来なければいいのに、とさえ思ってしまっていた。


完全になくしたはずだったのに、わたしの中でヨウスケの存在は。

日に日に、大きくなっていたんだ。

気づかない振りをしてきたけれど、2人きりになったら限界。


鍵、みつからないねー」


心臓の音がばれないよう、わたしは大きな声でそう言った。


「オレ、がんばってみつけますよ。ねえ、オレがみつけたら・・・SAさんは何かしてくれる?」


ちょいハニカミながら、ヨウスケが言った言葉に見え隠れした。

ヨウスケの、わたしに対する好意に。

わたしは、気づいてしまった。


(リカじゃなくて、もしかして・・・わたし?ヨウスケが好きなの、わたし?)


それに気づいてしまった、瞬間。

とめられない自分の気持ちにも、気づいてしまったんだ。

数々の悲惨恋愛経験を、重ねたきたわたしだったけれど。

ケンジとの恋愛は、やっぱり1番涙を多く流した恋愛で。

だから、ケンジと別れた直後に。

わたしの恋愛スタイルは、急変化したんだ。


”笑顔でいられる恋愛がしたい。泣いてばかりの恋愛はもう2度とやめよう。”


わたしの恋愛スタイルはこう確立し、いま現在も変わっていない。

ある意味、わたしはケンジのおかげで、だめんずから抜け出せたのかもしれない。


そんなことを思いながら、わたしは恋愛とは程遠い生活をしてた。

ずっといろんな恋愛や男を走り抜けてきて、疲れていたのだ。

それと、それでもやっぱり、ケンジにまだ未練があった。


わたしには昔から。

カレシができると必ず写真を持ち歩く、という習慣がある。

写メではダメ、写真なの。

それを手帳に入れてときどき眺めるのが、恋愛中のちょっとした幸せ。


ケンジと付き合っていたときも、もちろんそうしていて。

別れた後も、未練からそのままにしていたわたし。


そんなある日、わたしは。

人生最大の波乱万丈恋愛の・・・相手に出会ってしまったんだ。

いままでで1番、笑顔でいられる恋愛ではあった。

しかし、波乱の方も、すごすぎた。


本当に、すごすぎた。

・DV/病院沙汰/拒食/病気/自殺未遂/記憶喪失

・家宅侵入罪/神奈川県警機動隊出動/裁判

・略奪/逆略奪/他の男女を交えた泥沼劇

・器物破損/暴行

文字にするとすごすぎて、自分でさえひいてしまう・・・。

そんな恋愛の、幕が開けたんだ。

そんなこんなで。

しばらくは、ケンジともヒロとも、関係は続いていた。

そもそもわたしは、すごく不器用だから。

二股的なことは、絶対にできないタイプなんだけど。

このときは、心のバランスをとるために、どうしても2人とも必要だった。


好きなのは、間違いなくケンジ。

でも一緒にいて楽しいのは、ヒロ。

そんな2人の間で、わたしは常に揺れていた。

いや、正直なところ。

ケンジを好きすぎるがために、ある意味ヒロを利用していた。


そんなある日、ヒロとちょっとしたケンカをし。

2人の関係は、自然消滅した。

わたしは、ホッとすると同時に。

とてつもない恐怖を、感じたんだ。

ケンジへの気持ちが、暴走しすぎてしまうことに・・・。


ヒロがいなくなったわたしは、やっぱり。

心のバランスが崩れ、ケンジとも会う度にケンカ、電話でもケンカ。

常に、別れの予感を、感じていたんだ。


想えば、ケンジとの付き合いは。

楽しいこともいっぱいあったはずなのに、ツラかったや悲しかったことばかりで、想い出が埋めつくされている。

普通、逆だよね。

ツラいことや悲しいこともあったはずなのに、別れた後は楽しいことばかり想い出す・・・っていうのが普通だよね。

このことは、ケンジとの恋愛を、すごく的確に表してると思う。


別れの予感を感じるようになってから、また必死に遊びまくったわたし。

ある夜。

どこで知り合ったかも、名前も、顔も、思い出せない相手と。

わたしは、ベッドの中にいた。

すごく暑い、夏の夜だったことだけを、覚えている。


わたしの携帯が鳴る。

ケンジからの電話だと、直感で感じた。


「もしもし・・・」


電話に出たとき、既に涙があふれていた。


「オレ・・・ケンジだけど。あのさ、もうわかるよね?」


「別れるってことでしょ?」


「うん・・・わかるだろ」


「嫌だ、別れたくない。嫌だよ」


もはや、隣に寝てる男なんて、存在すら忘れていた。


「今までありがとうな」


久しぶりにきいた、ケンジの優しい言葉。

それをきいたとき。

わたしは、まるで子供のように、声を上げて泣きじゃくった。


だって、ケンジの声が。

出会ったあの日と同じように、めちゃくちゃ優しかったから。

電話を切った後も。

わたしは、いつまでもいつまでも、泣き続けたんだ。

そんなこんなで、平和に時は過ぎて行き。

ケンジと郡山で別れて、10日ぐらい経った、ある日。

わたしの携帯が、鳴った。


「SA?オレ・・・」


「え?」


「ケンジだけど」


「・・・」


今更なに?もう、用はないから。

言いたいことは、いっぱいいっぱいあったはずなのに。

もう、何も言えなかった。

ケンジの声をきけただけで、胸がいっぱいになった。

それだけで、もう満足だった。


わたしは、ケンジを。

ケンジからの連絡を、ずっと待っていたのかもしれない。


「お前、なんで帰っちゃうんだよ?」


そんなひどことを言われても、全然平気。


「今日、こっちに帰って来たんだ」


会いたいって思う気持ちは、止められなかった。


「会いたいよ」


思わず、口にだしてしまった。

その翌日には、わたしたちは、また元の関係に戻っていた。


ケンジは、ある意味、ミニツヨシだった。

当時17歳だったから、普通だったら高校生のはずなのに。

もちろん、高校なんてとっくのとうに辞めていて。

湘南で、お酒と薬とスケボーだけを、楽しむ毎日。


ケンジの口癖は、

「オレなんて、どうせ1人ぼっちだからさ」

だった。

ケンジの母親は、ケンジが幼い頃、出て行ってしまい。

折り合いの悪い父親と、おばあちゃんと、3人で暮らしていた。

ケンジはケンジなりに、ひどく傷ついていたんだと思う。

ケンジが悲しげな瞳で、その口癖をつぶやく度に。

わたしは、無性にカレを抱きしめたくなった。


ケンジは、ケンジで。

「そういえば、お前。なんであのとき(出会ったとき)、泣いてたんだよ」

と、わたしに問いかけ。

わたしが、無言で微笑むと。

「でも、いまはオレがいるじゃん」

と、言って。

決まって、抱きしめてくれた。


恋愛に傷つきすぎたわたしと、愛情に飢えたケンジ。

わたしたちは、互いに。

寄りかかる相手が、必要だったんだ。

そして、形はどうあれ。

確かに、支え合っていたんだと思う。

翌朝、目を覚ましたヒロに。


「ごめんね・・・」


謝る、わたし。

いろんな意味がこめられた、ごめんねだった。


「いいよ。オレもずっと・・・SAに会いたかったから」


そして、結局セックス。

ヒロとの、2回目のセックスだった。


そもそも、ヒロは。

顔が、超タイプど真ん中で。

だから、それだけで。

ヒロとのセックスは、気持ち良かった。


「今からちょっと、大塚付き合って」


ヒロに、せかされ。

朝10時に、巣鴨のラブホを出て。

大塚で、ヒロは友達と合流し、何やら受け取っていた。


「チケットもらってたんだ。映画、観に行こうぜ」


友達でもカレシでも、周りの男はほとんどA型だったから。

ヒロのO型男らしい、行動力は。

そのときのわたしには、めちゃくちゃ心地よかった。

ヒロの存在そのものが、救いだったんだ。


確か、そのとき流行っていた、インディペンデンスデイを観て。

寝不足のため、10分で寝てしまった、わたし。

その後、代々木公園で、突発2人お花見して。

ひどく寒かった夕暮れどきの代々木公園は、桜がきれいで、また泣けた。


そのとき撮った写真は、ほとんどノーメイクに、むくみまくった顔と目のわたしが。

ヒロの隣で、悲しげに笑っている。

ヒロといて、優しくされて、楽しいはずなのに。

わたしはやっぱり、ケンジのことばかり、考えてしまっていたのだった。


その日から、わたしとヒロは。

毎日、電話をし合い。

週に何回も、会う関係になった。

学校に車で迎えに来てもらったり、ヒロの家族に紹介されたり。

遊んでるとお互い離れたくなくて、2泊しちゃうこともあるぐらい、ラブラブ?


そう、わたしとヒロは。

カレシとカノジョの関係に、発展していた。

サトシと復活後初の、旅行に行った。

めちゃくちゃ楽しく、わたしは気づいてしまった。


アイツとの恋、アイツへのキモチは。

全て幻だったことを・・・。


恋愛って、だから怖い。

いったい、なんだったんだろう。


寂しかったのかな。


SAYONARA!

アイツへの恋心!!


2006年初夏のLOVESTORYが、ついに幕を下ろしたのだった。

家に帰ったわたしは、史上最大の泥酔で。

親に激怒されつつ、なぜかお風呂に入らなきゃと思い。

お風呂場で、吐き続けた・・・。


ヒロから、電話がかかってきたようで。


「ヒロが近くの駐車場についたらしいから、絶対行ってよ。一応、わたしの友達なんだから」


そう言い残して、リカは帰って行った。


(ヤバイ、気持ち悪すぎて、本当に無理かも・・・)


わたしは、というと。


中途半端に、お風呂に入ったもんだから。

びしょ濡れの髪の毛に、びしょ濡れの洋服。


朝から晩まで、泣き続けたもんだから。

崩れまくったメイクに、真っ赤な目。


(いや、でも。リカに迷惑はかけられない)


最後の力を振り絞って、そのとき1番気に入っていたイルカのぬいぐるみと、とりあえずの着替えを抱えて。

近所の駐車場まで、行こうと試みた、わたし。


普通に歩けば、徒歩1分の道のりを。

何度も何度も、倒れたり、吐きながら。

ようやく、駐車場にたどり着き、ヒロの車に乗った瞬間。

わたしは、気を失うように、寝てしまったんだ。


気がついたら、巣鴨のラブホにいて。


( ???)


わたしは、訳もわからず、とりあえずヒロに迫ってみた。


「他の男とやってきたんだろ?そんな女とは、オレ、やれないから。とりあえず、寝るぞ」


と、ヒロは本当に寝てしまった。


「・・・」


惨めな気持ちになりながら、とりあえず、ここでもお風呂に入り、寝てみた。

というか、寝るしかなかった。

巣鴨の夜は、恥ずかしさと、寂しさと、情けなさと、やるせなさが入り混じった、不思議な夜だった。

その夜、わたしは地元のカラオケ屋で、飲めないお酒を一気飲みし続けた。

心配した友達のリカが、連れ出してくれたのだ。

Mやら、ELTやらを、泣きながら歌い。

気がついたら、カラオケ屋のフロントの前で、泣き崩れていた。

わたしの周りには。

20人ぐらいの人が、集まっていた。


「ケンジに、振られちゃったの」

「別れたくないよー」

「ケンジに、会いたいよ」


わたしは、泣きながら、叫び続けた。

はたから見たら、酒乱?ちょっとおかしい人?

もう、そんなことも、どうでもよかった。

体中の水分がなくなっちゃうんじゃないかと思うくらい、、涙がとまらなかった。


と、携帯が鳴った。


「もしもし、ヒロだけど」


そういえば、ケンジと知り合う、ちょっと前に、セックスしちゃった男がいたっけ。

それが、ヒロだった。


ヒロは、

「絶対、お互いタイプだから」

という、リカの紹介で1度会って。

もちろん、出会ったその日に、セックスしちゃって。

その後、すぐにケンジと出会っちゃったわたしは、すっかり忘れていたんだけど。

そういえば、リカに、

「ヒロが、SAの連絡先知りたがってるから、おしえていい?」

って、きかれてたんだっけ。


「どうしたの?泣いてるの?」


ヒロの声は、めちゃくちゃ優しく、きこえた。


「ヒロ・・・。いますぐ、会いに来て」


優しい声に、甘えるしか、救いはなかった。


「わかった。いますぐ行くよ」


その優しい声に、今夜は甘えてみよう。

酔っ払いながらも、そんなことを思い、わたしは急いで家に帰ったんだ。

結局、わたしが謝って。

ケンジは部屋に戻ってきてくれ、仲直り→セックス。

こんなときのセックスは、効果絶大だと思う。


わたしがセックスを好きな理由は、例え2人がどんな関係だろうと、そのときだけは心も体も1番近くなれるから。

幻の幸せかもしれない、空虚な愛かもしれない、それでもいいの。

一瞬の幸せでも、やっぱり幸せには変わりないから。

そもそも、わたしは、永遠の幸せなんて信じていないから。


とにかく、その夜。

セックスしている瞬間は、何もかも忘れていた。


翌日、またケンジと郡山をブラつく。

でも、昨日とはちょっと違う2人。


「ねえ、髪の毛切りに行かないで」


思い切って、言ってみた。


(郡山まで、会いに来たんだもん。このぐらいのワガママ、許されるよ・・・ね?)


ほんの少しの期待を、抱きつつ。


「もう、約束しちゃったし」

「断われば、いいじゃん」

「いや、髪切りたいし」

「今日じゃなくても、いいじゃん」

「今日じゃなきゃ、だめなんだよ。約束したって言ってんだろ!」

「せっかく来たんだよ、帰れってひどくない?!」


だんだん、口調が荒くなる2人。


「お前、めんどくさいんだよ!」


ケンジが、その言葉を吐き捨てた瞬間。


「わかったよ、じゃあ帰るよ!帰ればいいんでしょ?!」


そう叫んで、わたしは走り出した。

しばらく走りきったところで、そっと振り返ると。

もちろん、そこには誰もいなかった・・・。


思えば、わたしの恋愛人生、いつもそうだった。

ケンカして→走り出し→(追いかけてきてくれているという)淡い期待をしつつ振り返ると→誰もいない・・・。

いつでも、追いかけてもらえない・・・。

そんな、恋愛人生。


過去のツラかったことも、全部思い出してしまい、わたしは郡山駅で泣き崩れた。

休日の、昼下がりの郡山駅は、大勢の人で賑わっていた。

そんなことも関係なく、わたしは、ただただ、泣き続けた。