2025.12.21 93本目


アバターの世界は、やはり映画館でこそ完成する。

これは一本の映画というより、身体ごと浸る体験だ。

長い上映時間さえ、呼吸のリズムに溶けていく。

なぜならスクリーンの向こうで起きているのは、物語を超えた感覚の移行だから。

観終えたあと、静かに、けれど確実に価値観が変化していることに気づく。


生と死。

闇と光。

相反するものは、排除されるべき対立ではなく、ただそこに在るものとして受け入れられていく。

死は終わりではなく、源へと還ること。

アバターの世界では、大地に溶け、魂でつながるという感覚が、あたりまえのように息づいている。


思えば、地球は多くのものを置き去りにしてきた。

自然を畏れ、敬う心。

祈るという行為。

動物と心を通わせる感覚。

どれも人間に本来備わっているはずなのに、忘れてしまっただけなのだろう。


血のつながりがなくても、家族になれる。

思いやりと団結。

何を守るべきかを見失わないこと。

それだけは、決して手放してはいけない。


敵対する存在が、猫のように「シャアー!」と牙をむく瞬間が妙に愛おしい。

本能がむき出しになる、その一瞬の真実。

わかる人には、きっとわかるはず。


エンドロールで流れたケイト・ウィンスレットの名前に、はっとする。

どこにいたのか、最後まで気づかなかった。

私が一番神秘的で美しいと思う役だった。

ふと『タイタニック』を思わせる場面もあり、まったく違う物語なのに、記憶の深いところが共鳴する。


森、海、火、そして灰。

自然のただなかで、自然に生きたいという感覚が、胸の奥に芽吹く。

圧倒的な映像美とともに与えられたこの体験。

それを受け取れたこと自体が、すでに祝福だったと思う。