あ、今日は。


七夕以前に、この日付で思い出す女の子がいるんです。


高校の時の同級生、Nちゃん。この日付生まれの、そのままの名前の女の子なんです。


とにかく目がクリクリでね、瞳が大きくて。当時流行の髪型で、80年代アイドルそのものという感じの女の子でした。


性格もさっぱりした、いいとこのお嬢さんという感じで。気が合ったんですよね。Nちゃんには彼氏がいたから恋愛対象ではなく、だからこそ気楽に仲良く出来たんです。


最前列中央で席が隣になった事があり、授業中も2人でキャッキャ言ってたら、歌舞伎役者みたいな顔の国語の先生が、「スノーとNは職員室でも噂になってるぞ。」と言った事がありました。


今思えばなんちゅう注意の仕方や、って思いますけどね。それで少し気まずくなってしまってあまり話さなくなって。


するとある日、「最近、なんで話してくれへんの?」と言われました。なんかドキドキしましたね。(←知らんがな)




僕の通っていた高校は体育祭と文化祭がすごく派手で、先生方も「うちの文化祭は県下一」と豪語するほどのものだったんです。中には、地域の商店街に神輿を担いで一大パレードをやるべきだと運動している先生もいました。


そのわりには、すべて生徒まかせの、自由で楽しい文化祭でしたけどね。


1、2、3年のランダムの縦割りの「団」で、色分けして8団で競い合うスタイルでした。


2年生は演劇発表でしたよ。


僕たちの2年4組も、演劇の事でクラス会が開かれました。


僕ね、その当時、というか、幼稚園の頃から、なぜか同級生の事を少し年下みたいに思っていたんです。


兄貴がいるからかな?性格なのかな?


それでね、「監督はKがいいと思うよ。」とか、「わしは助監督するわ。」とか。僕の言うがままにクラス会は進んで行ったんです。


Kくんは、僕の親友。今や財閥系の大手カード会社の重役クラスの男ですけど。


とにかく映画や芸術、文学に造詣が深く、企画力がすごいヤツだったんです。


そいつを監督にして・・・。僕は「助監督」?


いちばん、なんにもしなくていいポジションをドサクサに紛れてモノにしていたんですよね。


クラスのみんなも、なんの疑いもなく僕の意見ににすべてを委ねていてくれたんです。


それでね、その監督Kくんに、「ダスティン・ホフマンの『卒業』がいいんとちゃう?」と提案して、即採用されました。


主役のダスティン・ホフマン「ベン」の役はI君を選びました。ラグビー部だけどゴツゴツしたタイプじゃなく、レジェンド、平尾誠二選手をボーイッシュにしたような美青年なんです。


まあ、めちゃくちゃいいやつで、「Iよ。たのむ。お前しかいいひんねん。」と説得したらすぐ、「うん!分かったわ!」と言ってくれるようなヤツだったんです。


ヒロインのアリシア・シルヴァーストーン、「エレーン」役はNちゃんですよ。たしか女子の中で選挙してもらったかな。


Nちゃん、最初は嫌がってましたけど、口説いたら、少しずつ、黙ってうなずき初めて・・・最後には「うん、分かった。」と言ってくれました。

 

なんか、シビれましたね。(←シビれるな)


配役も決まり、脚本も出来上がり、練習も始まり。僕も最初のシーンで、ベンのおじさん役で一言だけ出演する事になりました。


(たしか)僕のアイデアで、有名な「エレーン!」と叫ぶシーンは、会場になる体育館の屋根に近い窓の通路の最後部からとしました。


今思えば映画の解釈とは違うんですけど、ラストシーンは2人がアツく抱き合うという事で決まりました。これは僕の発案だったと思います。


高校2年の当時にすれば結構、大胆な演出だったんですけど、なんせ他人事だから気楽なもんです。


そんなある日、とんでもないニュースが飛び込んで来たんです。


主役のベン役、ラグビー部のIくんが大けがをしたというのです。夏休みの自転車ツーリングの出発点で、自転車から転げ落ちたのだとか。


腕を骨折したから文化祭は無理だと。


何をしとんねん。とはいえ男子全員大爆笑でしたけど。


そもそもそんな技術で自転車ツーリングよう行く気になったなぁ。ほんま。知らんけど。



それでね、代役を監督と考えました。同じくラグビー部で、また同じようなイケメンで、I君と双子みたいに仲良しのT君。


こいつもまたI君と同じくいいヤツで。その自転車ツーリングも2人で行く予定だったそうですよ。


それでね、監督のKくんと「Iが怪我したのはお前にも責任がある」という路線で押し付けようと決めていたんです。


2人で、よっしゃよっしゃ、イシシシ、などと話していると、いつもにはない思いつめた表情でNちゃんが僕のもとへやって来ました。


「スノーくん、ちょっといいかなぁ。」


ちょっと緊張しながら、少し離れた席で2人で話しました。すると。


「ベンの役な、スノー君がいいと思うねん。」とNちゃんが言うではありませんか。


「ええっ!?」


聞けば、実はこのお芝居が決まった時から、女子たちのあいだでは、主役は僕がいいとみんなが言っていたのだそうです。だからこれを機会に女子のみんなでスノー君にやってもらおうと意見が一致しているのだと。




どうですか?


みなさん聞かはりました?


もっかい説明しましょか?(←いらんわ)


いやいや、落ち着いてよく考えたら、女子がみんな僕のこと好きだという事ではないんですよね。


体もデカいし声も通るし。


「スター性」ですかね。(←知らんがな)


そんな事言ってる場合じゃない。


ヤバい。ムリムリ。体育館の後ろのとこから「エレーン!」って何度も叫びながら舞台まで走るんでしょ?最後はNちゃんと抱き合うんでしょ?


ムリムリ!誰やそんな演出考えたの。(←お前や)


それでね、「ああ〜、残念やけどな、主役のイメージはIとかTみたいなな、ボーイッシュなな、わしみたいな感じと違ごてな・・・。」などと、必死に説明したのを憶えてます。


残念そうに、「そっか・・・分かった・・・。」と言いながら席を立ち、不安げに見守る女子たちのもとへ戻るNちゃんを見送りながら、内心「ヤバかった〜。」と胸を撫で下ろしました。


でも、大きな瞳で、真剣な表情で、Nちゃんが僕を説得しようとするもんですから。思わずうなずきかけましたけどね。(笑)


そのあとK君と2人でT君に無理矢理主役を押し付け、劇も無事発表出来ました。順位はあまり良くなかったけど、みんなで楽しく過ごせましたよ。



この高校は本当にみんな仲良しで、学年の同窓会を開くと150人ぐらい集まるんです。


もちろん、NちゃんやK君、T君なんかともいまだに連絡が取れます。


主役を押し付けたT君ね、うちの妻の幼なじみで、妻はT君が好きだったそうですよ。クラスの女の子はみんなT君が好きだったと言ってました。こちらは本物のモテ男ですね。


うちのアルバムには発表が終わったあとのクラス写真があります。


そこにはウエディングドレス姿のNちゃんと腕を組むT君、ギプス姿のI君、クラスのみんな、そして端っこのほうでなぜかキスシーンのまねをしている監督Kと助監督Sが写っています。(笑)




映画「卒業」より、Simon & Gurfunkelの「The Sound Of Silence」です。当時この曲が好きで、劇の演目を「卒業」にしたんです。



(写真は6月19日撮影。琵琶湖の朝焼けです。琵琶湖大橋の欄干からパチリ。)