「パパ、ダンス踊って」
20時半過ぎ。
寝る前の娘が、突然そう言い出した。
よし、踊るか。
いや、舞うか。
という訳で、踊り出す。
喜ぶ娘を見てテンションが上がり、上半身裸になる(笑)
そして、ある記憶が蘇る。
上半身裸で踊っている一人のダンサー。
小さい頃にTVのCMかなんかで見た、あの奇妙な踊り。
勝手な解釈と共に、激しく舞ってみる。
それを見た妻が爆笑しながら聞いてきた。
「何なの、それ?」
「ボレロ」
そう答えると、妻は納得した様に言った。
「あぁ、コンテンポラリーの…なんか分かる(笑)」
分かるんだ…。
「こういうヤツでしょ」
と、妻もまた踊り出す。
二人で、ラヴェル先生のボレロを口遊みながら激しく踊る。
踊る。
笑う。
踊る。
笑う。
娘も、妻も、私も。
踊る。
笑う。
踊る。
繰り返しては大爆笑。
隣の部屋で静かにテレビを見る母を尻目に、大盛り上がり。
テンションが上がった娘を寝かせるのに苦労した妻。
最近、ボレロがやたら気になる様子。
私も少し調べたら、妻がイメージしていたのはシルヴィ・ギエム氏、私がイメージしていたのはジョルジュ・ドン氏だという事が分かった。
今度、2人でゆっくりバレエ鑑賞でもしてみよう。
ちなみに、この夜の爆笑舞踏会の後、妻がこう言った。
「あなたとの絆の深さを再認識した」
…どういう事で…?