地球は広いが世間は狭い。



先日いらしたお客様と話していた時、お客様がポケットを気にされた。

ポケットから出てきたのは、一本のハンコだった。



「やばい、お客さんのハンコを持ってきちゃった」



後から聞いたら、お客様も商い人で、チョットした事情でお客様からハンコを預かっていたらしい。


そのハンコがね、美しくてね。

普通のハンコより2倍程太く、その軸に複雑な柄が深く彫ってあった。



「○○君のだ。マズイなぁ」



そう言って、お客様は笑った。

しかし、私はそのお客様の表情より、出てきた名前に意識がいった。



○○さん。

割と珍しい苗字でしてね。



「これ、しかもフルネームのハンコなんだよね」



名前を見て確信した。

お客様に「△△で働いている○○さんですよね?」と伝える。



「え?知ってるのっ!?」



高校の野球部の先輩だ。

厳しい先輩が多い中、優しい先輩で、今でもたまに店に来て下さる。



「世間は狭いねぇ~」



お客様は驚いてらっしゃった。

そこで聞いてみると、先輩はそのお客様のお店のお得意様らしい。

お客様は、夜中まで営業しているお店のオーナーの様だ。

なんで、そんなに遅くまで営業しているのか聞いてみた。



「お得意様で、ショッピングモールで働く方が多くて、その人たちが仕事終わりに寄れるように」



との事だった。



「例えば、あのショッピングモールの□□という店の…」



☆☆さんですね。

私は、遮るように話した。



「知ってるのっ!?」



☆☆さんは、10年前の同僚。

2人で店に立って、彼はその会社で今もおり、私は転職して今の会社にいる。



「狭いねぇ~」



確かに狭い。

こんなにポンポン知っている人と繋がっていくなんて…。


ちなみに、私の妻は☆☆さんと9年一緒に働いていた。

勿論、この方のこと知っている。



「狭いねぇ~」



たった一つのハンコが、人と人との繋がりを知らせてくれました。