初夏某日。

迎えてくれたのは、優しくて、聡明そうな女性であった。

初めて来たと告げると、ポイントカードを渡され、集めるようお願いされた。「全部貯まると、何かうれしいことがあるのですか」と尋ねたら、「何がいいですか」と逆に聞かれた。楽しい人だな、と思った。

部屋はお店の構えというより、どこか懐かしい寝室を切り取った感じで、ぬいぐるみなどが転がっていた。
シャワールームも家庭的で友人の家に遊びに来た感覚になる。

ただマッサージはごく平均点で、担当の女性とは、どちらかといえばたくさん会話をした。

凛と寒くなると、温暖色のこの空間が恋しくなるのかもしれない。

大久保駅北口からすぐだ。プラットフォームから看板が見える。

終電すぎて、のんだのがいけなかった。


いわゆる悪質な店の部類に入ると思う。


酔っ払うから、そのような店を選ぶのか、店が酔っ払いに対しては強欲になるのか、おそらくはその両方だろう。

Paradiseという店の名前は後から気付いた。
余計に疲労感を覚えた。
嘘がまかりとおる天国はいらない。

アロカヤは初めタイの地名か何かと思ったが、アユタヤと勘違いしていたことが分かった。結局意味は今もよくわからないままである。

担当は寡黙でサービスと真逆に位置する人である。外見も冴えない。

斜向かいからは楽しそうな会話が漏れ聞こえる。

一期一会。
また、良い出会いもあるだろうと諦める他ない。


店を出ると、外は今にも降り出しそうな空模様で、速足で駅へと急いだ。