文化ライターのブルーノです。
読者の皆様、いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
皆さまのタメになる話を少しでも多く提供させていただきたいと思います。

さて、今回は、住民目線のリスク・コミュニケーションについて話題にします。
月刊技術士2月号/日本技術士会のなかに゛福島第一原発事故の影響と現状゛のテーマがあり、「住民目線のリスク・コミュニケーション」という題目で掲載があったので、私の感想などを添えてご紹介します。

技術士会の原子力・放射線部会では、福島第一原発事故以降、放射線のリスクについて住民とのコミュニケーションを図るための活動を継続しています。
実は私、3月上旬に仕事で東京へ行った際に、その部会のCPDに参加させていただきました。

1.リスク・コミュニケーションとは
本書では、元幼稚園教諭の大学院生が講演で、次のように話されていたようです。

コミュニケーションとは、「何を話した」ではなく、「何が伝わったか」。
説明したから相手も聞いていたから、と一方的に満足していないだろうか。
話したことは、心に届いているのだろうか。
「伝える」ことと「伝わった」ことは同一ではない。
「伝わりやすくするための手段」として、科学的な根拠に基づいた説明が必要なときもある。
数字などを用いたデータは心が納得することを助ける手段のひとつにすぎない。
不安を乗り越えるための心の作業を共に行うのが、リスク・コミュニケーションである。

子どもやその保護者を見てきた元幼稚園教諭らしい言葉であり、説明に科学的根拠を優先しがちな技術者(技術士)にとっては、何かハッとさせられるものがあります。

2.同じ目線とは
原子力規制委員会の委員でもある大学教授の講演では、次のように話されていたようです。

ある日突然、防護服を身に着けた人が玄関先に立ち、危険だから避難するようにいわれ、言葉にし難い気持ちを抱え故郷を離れた。
このような状況の中で、放射線をいかに語るか。
専門家として少しでも正確に伝えようとする。
確かに聞いてくれてはいる。
しかし、心に届いていない気がする。
そこで、次は一方的に話すのではなく、車座になり、同じ目線で語りあい、時間を共有するようにしてみた。
すると、ポツポツと「気持ち」が言葉になってきた。
(中略)
心の不安は、同じ場で、同じ目線で時間を共有し、信頼関係を築いた後にようやく、本音、本当の問題を共有する糸口が把握できるようになるのである。

この話も専門家である技術者(技術士)にとっては心に深く刺さる内容であり、現場で体験しないと出てこない話だと思います。
被災現場で、一緒になって不安を共感し、人と人の信頼関係ができた後でなければ、いくら科学的で正確なことを説明しても心に届かないのだと思います。

3.ロールプレイとは
ロールプレイとは、疑似体験のことです。
本書において、住民目線のリスク・コミュニケーションを図るためには、疑似体験の必要性が述べられています。
専門家である技術者(技術士)が、未体験の現場でいきなりリスク・コミュニケーションを実践しようとしても上手くいかないのは目に見えています。
そこで、被災現場でなく別の場所でも事前に疑似体験を重ねることで、「どのようにすればコミュニケーションが築けるのか」、「どのようにすればリスクの話を聞いてもらえるのか」を体験できると思います。

3月上旬の原子力・放射線部会での講演「福島からみたリスク・コミュニケーションの課題」で福島の医師の方が、次のような話をされていました。

リスク・コミュニケーションとは・・・
①正確な情報の入手
②関係者間での共有
③意志疎通
④合意形成
である。
そして、合意形成では結論を出すことが大切である。
・何のリスクを減らすのか(放射能、経済)
・何に関する合意が必要なのか
・なぜ合意が必要なのか
そのうえで専門家の役割は・・・
・何がわからないかを明らかにすること
・専門家としての正しさと人としての正しさ
    のバランス
専門家として信用を落とすこととは・・・
・わからないはずのことを手におえている
    ふりをすること
・断言できないことを数値で表そうとする
    こと

専門家である技術者、特に技術士は、今後、広く社会に対してリスク・コミュニケーションを求められることになると思います。






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