“さつき”と“e-や”のお話し。第2回目。

これは、現実か、空想か。フィクションか、ファンタジーか。2人の女の子のお話し。


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-講義受講-



大学生活はすぐにスタートした。さつきとe-やは、打ち合わせした訳ではなかったのにも関わらず、偶然にも同じゼミに入った。いや、もしかすると、これは必然だったのかもしれない。


アナーキズム学―。

アナーキズム派とは、政府を持たない人たちの派閥のことだ。

2人ともきちんと意志を持ってそのゼミに入ることを決めたのだが、2人共が同じ目的でゼミに入ったわけではなかった。さつきは、その全く知らないその学問に興味深々で、好奇心旺盛な性格が揺さぶられ、そのゼミに入ることにしたのであった。一方のe-やは、入学前からきちんと将来の目標に向かい、授業の雰囲気も踏まえた上で、そのゼミに入ることを決めたのであった。


講義が始まる前に、さつきとe-やは大学校内で再び顔を合わせ、それからというもの、決まって自然と隣りの席に座った。誰も座りたがらない1番前の真ん中の席にいつも着席していた。2人共、受講態度は真面目で、教授の話を聞いてノートを取った。


講義をする教授は、後にこの2人から勝手にあだ名を付けられて、男の教授なのにも関わらず、慣れ慣れしく「ちぃこ」と呼ばれるようになる。

ちぃこは、中々の偉い教授だったが、それを漂わせる様なこともなく、何だかいつもふんわりとした雰囲気で、淡々と講義をする。教授にしては若い男の人であった。


講義が始まった。

講義では、「自由」についてまず触れた。自由は5つに分類されるらしい。「能力」、「自律」、「放任」、「自足」、「選択」、そして「自己実現」。自由とは、本人の利益や幸福を実現する為の手段に過ぎないのだとか。それは功利主義に繋がってゆくのだそうだ。ちぃこはベンサムという人の言葉をサラサラと黒板に書いた。


「人間が何かをする時、快楽と苦痛が伴う。」


さつきもe-やも、真面目にノートにその言葉を書いていた。

その後も講義は続いたが、90分という、いつもなら長く感じる時間の流れは、真面目な2人にとって短く感じるものだった。


ある日の講義終わり、毎回一番前で講義を聴く2人に、ちぃこが「いつでも研究室に遊びにおいで。」と軽く言った。さつきもe-やも、周りの浮かれた大学生と違い、大人数で盛り上がることもなく、いつも2人だけで食堂の窓辺にぼんやりと座っていた日々だった。だから、時間ができるとすぐにちぃこの研究室へと足を運ぶようになる。