風、薫る。

出てきた、ぽつんとライターだけ。

ただのありふれたライターの種類かもしれんけれど、でも、あたしにはこのライターがジッを見つめてしまう程の求心力を持つライターなんだな。


「大切な人は近くにいる」だなんてそんな言葉があるけれど、あたしの近くにはおらんかった。遠くにおった。でも遠くにおったけど、確実にいつも傍におってくれた。辛くなると、夜中に決まって電話をかけた。いつも助けられた。


そんな人の傍にいられた一日があった。

その後、1週間で少し近付けたその人にもぉ電話かけられんよぉになった。


一日の終わり、「今度ライター持ってく。」と言ってバイバイしたんだ。そのライター。持ってけないよ、これじゃ。だって、その人遠いんだもん。遠くにおるんだもん。遠いよ。ほんとに遠い。


でも何? ライターを捨てられんのは、また逢うとか思えちゃっとんのかな。どんなお花畑なおつむなんだよ、自分。


あー、でも気付いて欲しいんだ、その人には。

その人の声が聞きたいけれど、聞こえてこんよ、その人だけ。要らん声は聞いてしまう。もぉ耳は塞ぎたいって思っちゃう。でもさ、塞げないさ。


また書いちゃうかもしれん。

何かふとした時にね。ライターはしまっておくよ。