1、牛の摂取カロリーはほぼゼロ?

私たちの生活圏内で生きている動物に【摂取カロリーゼロ】の牛です。

牛などの偶蹄目の反芻動物です。

反芻動物は、食物食に最高度に適応した哺乳類であり、葉や茎のみ

食べて生命を維持できるのだ。

 

食物細胞の成分を見ると、70%の水分で、その他の成分が30%である。

一般に、食物体感乾燥重量の3分の1~2分の1をセルロース(=多数の

ブドウ糖分子が結合してできた高分子)が占めているので、固形成分

の半分がセルロースである。

つまり、牛の食事はセルロースを消化も吸収もできない。(それどころか

自前の消化酵素でセルロースを分解できる動物は1種類のいない)

消化も吸収もできないということは「摂取カロリー・ゼロ」である。

 

それなのに、牛は牧草の身を食べて日々成長し、500Kgを超す巨体に

なり、毎日大量の牛乳を分泌する。これはどう考えても、エネルギー

保存則に反するように見えよう。

 

この謎を解くカギは、共生微生物(細菌と原生動物)だ。

 

牛消化管内の共生微生物が、セルロースを分解して栄養を作り出し

宿主の牛はその一部を受け取って成長するのだ。

 

牛が食べる牧草は、牛自身のためではなく。共生微生物のためのものだ。

牛は4つの胃を持つ。焼き肉のメニューでいえば、ミノ(第一の胃)

ハチノス(第2の胃)センマイ(第3の胃)ギアラ(第4の胃)である。

(ちなみにギアラは関東の呼び方、関西では赤センマイ)

セルロースの分解が行われるのは最初の3つの胃で、それぞれに多種類

の膨大な微生物が住み着いている。

最初の3つの胃では胃酸は分泌されず、遺産が分泌されるのは4番目の

ギアラ「赤センマイ」のみである。

 

牛の食べた牧草は、口から第一の胃であるミノに入る。ミノでは、

セルロース分解微生物の作用で一部分解され、流動状態になったもの

が第2の胃のハチノスの送られ、固形成分は再度口腔内に戻して咀嚼する。

これが反芻だ。

そしてハチノス(第2)センマイ(第3)に送られて、さらにセルロースは

微生物の分解され、その結果、センマイはほぼブドウ糖になる。

共生微生物は、このブドウ糖を嫌気発酵し、代謝産物として各種脂肪酸

やアミノ酸を体外に分泌する。そして、これらと共生微生物の混合物が

第4の胃であるギアラ「赤センマイ」の送られる。

 

第4の胃では、初めて胃酸が分泌され、共生微生物が産生したアミノ酸

や脂肪酸と一緒に吸収される。

牛自身に取っては栄養素ゼロの牧草が、共生微生物のよって栄養の固まりに

変身したのだ。それを栄養分とするから、牛は500kgを超す巨体になり、

大量の牛乳を分泌できるのだ。

 

さらに牛は、他の動物が老廃物として捨てる尿素まで、共生細菌を利用して

いる。牛は唾液腺や3つの胃からは尿素を分泌し、胃の共生細菌は尿素を

窒素減としてタンパク質を合成し、牛はそのタンパク質まで吸収するのだ。

無駄を徹底的に省く見事なシステムだ。

 

2、ウマの生き方

 

草食動物として牛の完成度に比べると、馬の草食生活はまだ無駄が多い。

馬は胃袋が一つしかない代わりに巨大な結腸を持っていて、ここに膨大な

数の腸内細菌を共生させている。

馬の場合は「まず馬が胃で消化吸収し、その残りを結腸の共生細菌が利用する」

という方式だ。

似たようなものと思われるかもしれないが、決定的な違いは、牛は共生細菌から

タンパク質を得ているが、馬は細菌のタンパク質を得ることはできない点だ。

 

牛の場合は第4の胃酸を分泌して共生細菌の菌体を消化してタンパク質を吸収

したが、、馬の場合は共生細菌の菌体を消化する部分がないために、その糞と

して排斥するしかない。

馬が利用できる(共生細菌由来の栄養)は、せいぜい低級脂肪酸(酢酸、酪酸

プロピオン酸など)に過ぎず、これらを吸収してエネルギー源として利用している。

だから、馬は草だけでは生きられず、穀物やイモ類、マメ科植物を食べる必要が

あり、それらは自前で作った消化酵素で消化吸収するしかない。

つまり、牛は「摂取カロリーゼロでも生きられる」動物だったが、馬は、

「摂取カロリーがある程度ないと生きていけない」動物なのだ。

言い換えれば、牛は(消化酵素を作る必要がほとんどない草食動物)、うまは

(消化酵素をつくらないと生きていけない動物)である。

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