2024年の春から、妹夫婦と娘のアイルちゃんも一緒にUSAにお引越し。

なるべく早く再会したい私たちは、早くも6月に彼らを訪ねることにしました。

 

私たちというのは母の伴侶と私と妻と息子。

おやまあ、妻は何度か出張でカリフォルニアに行ったことがあるし、お付き合いという感じですが、飛行機や現地のUber(ウーバー)など色々手配してくれて感謝!母は75歳で、コロナ禍中は国内旅行にも出かけなかったので一大決心。そんな母にとっても良い旅になるといいな~。

10時間くらいのフライトの後、サンフランシスコ国際空港に到着。

 

バート(BART)という地下鉄に乗ってオールバニのホテルへ。
今回記録的な円安(1ドル160円ほど)なので、ホテルもリーズナブルなマリオットの長期滞在型レジデンス・インにしたのですが、キッチン付きで広くて悪くない感じ♪

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到着を妹に連絡すると、ほどなく元さんとアイルちゃんが赤い車で迎えに来てくれました。

久しぶりの再会嬉しい!
妹は、何日かかけてご馳走を用意してくれているとのこと。ありがとー!
街を抜けて、丘の上まで登ると、界隈では珍しい10階以上あるマンションに到着。こんなところに住んでるんだね。

 

お部屋に着いてドアを開けると、愛犬が迎えてくれました。元気そうでよかった♪
リビングの大きな窓からの眺めは、サンフランシスコ湾の海とフリーウェイを見下ろす絶景。すごいところに住んでるんだね。アイルちゃんがはしゃいで色々説明してくれました。

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霧に包まれたゴールデンゲートブリッジも見えたのには驚き。

ディナーは、カリフォルニアで人気の白ワインBread&Butterとクラフトビールとともにスタート。

フロリダとは違いあまりじめじめしていません。

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妹の手作りラタトゥイユが美味しい。

息子氏は一口も手をつけなかった。

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キッチンもおしゃれ。

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なんだか映画のセッティングの中で暮らしているような、ちょっとファンタジーがかったハッピーなライフスタイル。再会を祝してパチリ。

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アイルちゃんが、「日が沈むところをみんな一緒に見よう」というので、20時過ぎからスタンバイ。20時半頃に、みるみる沈むオレンジの夕日が見えました。改めて、「地球は動いてるんだね~笑」

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そしてなんとサプライズで、6月誕生日の息子のバースデーケーキも出してくれました。
サンキュー!ハッピーバースデー♪

 

飛行機の中では一睡もしなかったので、ホテルではぐっすり寝たいところ!

だったのですが、睡眠となるといきなり神経質になる私にとっては、到底眠れそうにない音が上のフロアからしてきました。妻も起きてきて、「フロントに電話する」と受話器を手に!

 

「どれを押したらいいかわからない」と言うので「フロントとか書いてあるの押せばいいじゃん。エマージェンシーとか?」と適当に答えてたら、エマージェンシーボタンで警察につながってしまった!受話器の向こうから「どうしました?なんで黙っているの?」と英語で言っているのが聞こえます。妻が「なんで英語なの?日本語で対応してほしい」って、ここアアメリカだろーって感じ。

寝ぼけてたんだね(笑)。

 

でも受話器の向こうでは「何があったの?住所は?」と警察が言っている。先方は真剣なのだから下手すると大変なことになる!と思った私は、寝ぼけた人の感じで「間違い電話です」と伝えました。「そうだよね」と言って切ってくれたので一件落着。

 

すっかり目が覚めてしまったので、真剣に受話器のボタンを調べて「ハウスキーパー」みたいなボタンを押したらつながった!聞いてみると、上のフロアがレストランになっていて、夜中の1時くらいまで家具を動かしているとのこと。母もこれじゃあ眠れないよねと言って、次の日部屋を変えてもらうことに。

ほとんど眠れなかったけど朝は来る!

 

そんな中でも動じずに眠れる夫が羨ましい。生まれ変わることがもしあったら、妻のように1秒でいつでも寝られて朝まで起きないという体質になりたい!(ショートスリーパー?)

 

リーズナブルなレジデンスインなので、あまり朝食のビュッフェは期待していなかったのですが、意外なことにどれも美味しい♪カリフォルニアってすごいな。

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特にカリカリのベーコンと、りんごが入ったちょっと甘いソーセージ、本格的なオートミールに感動♪

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ほどなく、妹ファミリーたちがホテルに到着。一緒にUCバークレーへ!
バークレー大学は、このホテルから徒歩5~6分のところにあるのです。
アイルちゃんが、「ここが大学の入り口の看板だよ」と教えてくれました。

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豊かな緑が気持ちよく、たまにリスたちが横切って、アイルちゃんが大喜び。

私たちもだんだんリスを見つけるのが上手くなりました。

リスって想像以上にでかい。

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UCバークレー校内にある時計塔セイザータワーは大学のシンボル。
鐘を寄付した人の名前をとって「Satherセイザー」と名付けられたものです。

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図書館もその中の一つ。でもこの日は、ちょうど学期が終わったところだった上に日曜日だったのでお休みでした。アテンドさんが、「月曜日は開いているのでもし行けるようだったら入ってみるのがおすすめ」とのこと。早起きできたら行ってみよう。

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そしてとても羨ましい場所が!
それは大学内のレストラン&バー。
木陰に佇む趣のある建物で、パラソル付きのテラス席もあります。

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今日は日曜日なのでお休みでしたが、平日は学生たちで賑わっているとのこと。
2000円から3000円くらいのしゃれたランチセットがあるそうです♪
私は自分の出身大学の学食がしゃれてなくてメニューも200円から300円と安いけど美味しくないので好きではなかったけど、こんな社交場のような学食だったら毎日通ったな~。
裏に回ると、さらに広々としたダイニングスペースがありました。

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たまにレセプションが開かれるそうで、元さんのウェルカムパーティーもここであったとのこと。いいね!お酒を飲みながら議論が白熱したら宿泊できるようにもなっているようです。さすが、学問の殿堂とはこうあるべき♪

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校内には、屋外彫刻も良い感じに点在していました。
視線の先に現れた彫刻が妙に見覚えある!

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これは、私が先日麻布台ヒルズで取材したアレクサンダー・カルダーの作品では?!
天井から吊り下げて動くタイプのモビールで有名なカルダーですが、その展覧会ではこのように黒々として地面に立つ動かないタイプ(といえども自分が彫刻の周りを一周するとかなり動きを感じる)のスタビルも同時に展示してありました。
 

本場のアメリカで、こんなにナチュラルに屋外に佇んでいるカルダー 作品の姿に遭遇してなんだか爽快。
作品名は「THEHAWK FORPEACE」(平和のための鷹)。バークレー大学から平和の達人がたくさん巣立ってくれるといいな。

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この作品は、バークレー美術館&パシフィックフィルムアーカイブ

(BerkeleyArtMuseumandPacificFilmArchive)という大学の美術館の所蔵品でした。

 

バークレー美術館は、大学の門を出て歩いて数分のところにあるおしゃれな街中の現代的な美術館。こんな彫刻が迎えてくれます。

 

アイルちゃんが、「来たことがあるから案内するよ!」と張り切ってくれて嬉しい。

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入館の時に、私が会員になっている「国際美術評論家連盟(AICA)」のプレスカードを見せたら、なんと私と同伴者2名が無料になるとのこと!日本だと本人のみなので、アメリカでの効力の大きさにびっくりしました。

 

ありがとうAICA

 

開催中の企画展のテーマは「Legaciesofthegreatmigration」(アフリカ系アメリカ人の大移動)。「thegreatmigration」とは、1915年から1970年まで、アメリカ合衆国南部の田舎から移動した、約600万人のアフリカ系アメリカ人の動きを指したアメリカ史の出来事です。南部での人種差別の問題から逃げ、北部でより良い仕事と、生活を得るために移動したのです。

 

何ともアメリカの現代アートシーンにふさわしいテーマ。展示している作家たちも皆アフリカ系アメリカ人でした。
現在活躍中の彼らによる作品群は、黒い素材で構成されたものがとても多かった。

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「PicklJesus」という意味深な看板とともに様々なものをピクルスにした瓶詰めを展示していたのは、かのシアスター・ゲイツ(TheasterGates)。アート界のパワーランキング「Power100」の上位にもいらしゃる方。今年4月に、森美術館の「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」の内覧会を取材したばかりだったので個人的にタイムリー♪

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小屋の中にも入ったりとかして、ARUちゃんと「イエスのピクルスって何だろうね」などと話しながら盛り上がりました。

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劇場のようなグランド階段を降りたフロアでは、バークレー美術館のコレクションを展示してありました。

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ARUちゃんは、ここからのコーナーを以前に見たとのこと。「日本人の作品が1点あるんだよ」と教えてくれました。ARUちゃんはとても記憶力がいいので、きっと1点あるのでしょう。どんな1点かな?私は古風な日本画のようなものを想像しました。
立体や平面など、多種多様でアトラクティブな作品がたくさん。

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ほどなく、アイルちゃんが言っていた、「日本人の作品1点」がついに 出現。
3つ足を持った、明るいブルーのいきもの!意外~。
よくこれが日本人の作品だと気がついて、覚えていたのすごい。
MasakoMikiさんの「一連坊主Ichiren-bozu(AnimatedPrayerBeadsBlue)
2018」という作品でした。

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美術館の後は皆でオープンエアのイタリアンランチ。
午後はバークレーの街を探索することになりました。
メインはスーパーマーケット。
特に息子は、海外に行くと現地のスーパーマーケットに行くのが大好きなのです。
カリフォルニアはオーガニック商品がとても充実しているということなので面白そう。

30分ほど歩いてまずは人気のディスカウントスーパーTarget(ターゲット)へ。
とにかく野菜や果物の種類が多くてそれぞれ大きいのが印象的でした。
香辛料やスーパーフードも、100種類以上?!あって、大容量の容器から量り売りしていてびっくり。
そういえば、ホテルの朝食ビュッフェにも、たくさん置いてあったな。
オートミールやミューズリーなどにかけて日常的に食べてるんですね。

再び歩いていると、グッドタイミングで、バークレー発のピーツ・コーヒー店が!創業したのは1966年で、スターバックスが生まれるもとになったコーヒー店だと元さんから聞いていたところです。香ばしくて美味しいコーヒーに、店内で売っていたこちらのチョコレートがgood♪

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そしてついにお待ちかね、アメリカで人気のスーパーマーケット、TraderJoe’s(トレーダージョーズ)へ!通称トレジョ(TraderJoe’s)は、ナチュラル、オーガニックの商品がリーズナブルに揃うカルフォルニア生まれのおしゃれなスーパーマーケットなのです。信が、カリフォルニアに出張すると必ずトレジョのお土産を買ってくるほどのファン♪
噂に聞きしTraderJoe’sの外観は?

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バークレーの綺麗な町並みの一角にありました。

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今日の夕食は、TraderJoe’sの冷凍食品を買ってホテルで食べることに!

妹が、TraderJoe’sの冷凍食品はとても美味しいと教えてくれたので。

昨日持たせてくれた手作りのラタトゥイユやスナックと共に♪チキンの串焼きや、エンチラーダ、確かに美味しかった。紙お皿やプラスチックのカトラリーなど、あゆみがさりげなく渡してくれたアイテムが超役に立ちました。こういう気遣いができるのってすごいね。ありがとう♪

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2日間徹夜になってしまったので、今日はお酒を飲まずに睡眠薬を飲んで寝る!

珍しく一瞬で寝て朝まで一度も起きなかったのでとてもすっきりとした目覚め♪
みんなも元気♪今日は午後からワインのメッカであるナパ・ヴァレーに行きます。

早起きできたので、日曜日は休館で入れなかったバークレー大学の名物図書館に信と行ってみました。
コリント式の柱が壮麗な外観もさることながら、2階の読書室がすごい!

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宮殿の舞踏会が開かれる場所なのかと思えるような壮麗でエレガントな天井!

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それぞれの机に設置してあるランプもシックでステキです。
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これは本も読む気になりますね~。
モチベーションを上げる美しい場所作りって本当に大事なのだなと実感。
展示してある絵画は、馬上のワシントンの勇猛な姿でした。

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やっぱり早起きして来てみて良かった♪
バークレー大学のシンボルである松ぼっくりが青々とさわやかでした。

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さあ、これから予約してあったUber(ウーバー)に乗ってナパ・ヴァレーに向かいます。

 

自分の楽しみ方を愛し誇りがあるこそ、他人の楽しみ方に不満や不快さを感じることは誰でもあるだろう。私はこのような不満や不快さは誰もが感じていいものだと思っている。

 しかしそれは認識を間違えれば誤った方向に向かってしまう。

 私たちは決して他人に素晴らしい人間だと認められたいがためにその「楽しみ方」を愛しているわけではない。それらを求めた瞬間、自分の楽しみ方から「純度と誇り」が失われてしまう。

 ありがたいことに以下の記事がXで微妙に拡散された。記事は以下のような内容だ。 

 原作を踏みにじるような読み方が許せない私たちが「作品を読解し味合うことをオタクであるアイデンティティとしている」ように、カプ萌え腐女子もまた己のジェンダー感や貞操観念に基づいたアイデンティティによってカップリングを組み立てているのではないか。カプの解釈違いは己のアイデンティティ(人生観)における解釈違いだ。

 人それぞれが異なる場所で己のアイデンティティを持ち、アイデンティティに基づいた拒絶反応を持つ。

 

 この記事に対してマシュマロが届いた。

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 こんにちは!マシュマロありがとうございます。

 マロ主さんが記事のどの部分を読んで「一緒にするのは不適合」「全てが相対化されていく時代」と感じたのかは測りかねるのですが、

 私が記事で語った内容は「アイデンティティの置き場所と、それに伴う拒絶反応の場所は人それぞれ異なる」という点について「人々は同一」といった意図のつもりでした。

 そしてこのような言い方をしたらマロ主さんはきっと怒ってしまうかもしれませんが、私はマロ主さんの文章を読んで

 「私のABは原作基準だからCBなんかと一緒にしないで欲しい!というカプ過激派腐女子のお気持ち凸マロみたいだなあ」

 と思いました。

 あくまでもこれは私が私の個人的な価値観を持って感じたことです。hotはなんて分からず屋なんだ、話にならん!と思ってもらってもかまいません。でももし少しでもご興味があれば

 私がオタク界隈の考察においてどのような価値観を元に記事を書いているのか、そしてなぜマロ主さんの主張に否定的な感想を持つのかを語らせてください。
 

私が「オタク界隈は興味・高揚資本主義」を提唱する理由


 私はオタク界隈における考察は全て「興味・高揚資本主義」という考え方を元に行っております。

 これは私の考察はオタク界隈でオタクとして生きるために、周りとの楽しみ方の違いや好ましくない時代の移り変わり、不可解な文化の中で、それらをどう捉えてどう折り合いをつけるか、

 ︎︎そしてオタク界隈の中で、自分をオタクたらしめる「純粋な好き(興味・高揚)」とどう向き合っていくか考えることを目的にしているからです。

 この考え方において、例えば「グッズを沢山買って貢献してるから私はより作品を愛している」は「自分がより上だという他者へマウント」が目的になっていますし、

 例えば「私がBLが好きなのは、私が同性愛に寛容であり差別をしない素晴らしい人間だから」は「自分は素晴らしい人間だと思いたい自己愛」が目的になっています。

 これらの在り方は対象に対する「純粋な好き」とは最もかけ離れた在り方になります。

 

 もちろん自分の楽しみ方に愛と誇りがあるからこそ許せない思いを持つのは素晴らしいことだと思います。私はオタクが各々の「好き」の在り方に信念を持ってる姿が好きです。

 しかし、本当に誇りを持っているのなら他人の評価に関係なく自分のアイデンティティに根ざす「良き在り方」を貫けばいいと思うのです。しかしマロ主さんは私に対し「一緒にされなくない」という社会的優劣の正当評価を求めました。

自分の楽しみ方が純粋であるために、他者の楽しみ方に社会的優劣を測ってはいけない

 
 楽しみ方が「純粋」であるとはどういうことでしょうか。

 私は原作のキャラ同士の関係が大好きでどのシーンのどこが好きなのかTwitterで熱く語っていたことがあります。その時に空リプでこう言われました。

高尚ぶるな、てめぇの楽しみ方もキメェ妄想なんだよ。

 

 ︎︎私はこの言葉を言われ、本当にショックでした。なぜ作品の好きなシーンが好きで語っているだけなのにこんな事を言われるのでしょうか。

 オタク界隈には漠然と作品と深く向き合うことが素晴らしいという観念があります。もしかしたらマロ主さんもこの観念を持っているのかも知れません。

 この観念によって何が起こるのかというと、私たちはただ「作品読解」が大好きで面白くて楽しんでいるだけなのに「高尚ぶっている」という扱いを受けるのです。

 私たちは高尚だと思われたいがために「読解」を楽しんでいるのでしょうか?違いますよね、読解が楽しくて仕方ないから楽しんでいるのです。これを「高尚ぶるため」と受け取られるのは「読解」を愛する私たちにとって最も不名誉なことではないでしょうか。

 しかしオタク界隈にはどうしても作品愛至上主義という観念を持つ方が多くいます。何をもって愛なのかは全く定義がないのですが、漠然と作品を正しく愛している者が最も偉いという優劣的な考え方をし、勝手に優越感や劣等感を感じる方がいるのです。

 そして勝手に感じた強い劣等感から、ただ読解を楽しんでいる人が目の前に現れただけで、攻撃や見下されたと感じ、心理的防衛反応から攻撃的な言葉を向けてしまうのです。

 だからこそ作品と深く向き合う「読解」を楽しみ愛する私たちは「読解」に対して最も「純粋な好き(純粋な楽しさ)」であることを体現しなければなりません。

 マロ主さんが「あんな楽しみ方と同列にされたくない」と楽しみ方に社会的優劣をつければつけるほど、マロ主さんの楽しみ方は「高尚な楽しみ方をする自分という自己愛」「自分の正義を振りかざして他者を蔑みたい人」になり、その楽しみ方は純粋さと価値を失います。

 他人の楽しみ方に社会的優劣を測ると、マロ主さんの楽しみ方は自己愛や自分の正義感を振りかざすための道具だと思われるのです。

 ︎︎そしてマロ主さんと同じような楽しみ方をしている方々も「高尚ぶるため」「正義感の振りかざし」という扱いを受け、「他者を蔑みたい人」という角印を押され攻撃されるようになります。

 ︎︎彼らはただ純粋に読解が好きで楽しんでいるだけなのに。


 間違ってはいけないのは、「自分の楽しみ方の誇りを持っているからこそ気に入らない楽しみ方の人がいる」のは良いのです。しかしそこに社会的な優劣を持ち出してはいけない、ということです。もしそうなれば、私たちの「楽しみ方」はたちまち「楽しさの純度と誇り」を失い、「自分という存在の社会的正義・社会的価値を装うための道具」に成り下がってしまいます。

 私たちは自分の社会的評価に関係なく、

 ︎︎己の純粋な興味・関心・高揚に伴って作品に触れているからその楽しみ方は「純粋」であり、

︎︎ ︎︎己のアイデンティティを持ってその楽しみ方を愛しているから「誇り」があるのです。

 ︎︎オタクの愛や熱意は「エゴ」です。エゴというと漠然と悪いものだと感じるかもしれませんが、これは違います。「私が楽しい・私が素敵だと感じる・私が萌える」という純粋な「興味・関心・高揚」で夢中になるオタクの愛と熱意(エゴ)はとても純粋です。

 ︎︎「自分の心のキラキラに惹かれ夢中になる純粋なエゴ」はとても美しいものなのです。

 

わたしは作者と間接的にお話ししたくて物語を読み、読者と間接的にお話ししたくて物語を書きます。ようはコミュニケーションなんです。
(中略)
何を言いたいかというと、作者⇔読者間のコミュニケーションを阻害してまで読者⇔読者間で悦に浸ることを優先する行為と、 あくまで派生の創作、つまり作者⇔読者間のコミュニケーションとまた別のところで好きにする行為、一緒にするのは流石に不適格だと思ったのです。

マシュマロ

 マロ主さんの楽しみ方は「純粋に楽しいからその楽しみ方が好き」なのでしょうか。それとも「人として素晴らしい行いだからやっている」「高尚な楽しみ方をしている私を正しく評価してほしいためにやっている」なのでしょうか。私はマロ主さんの文章を見て、どちらか判断しかねてしまいました。
 

他者の楽しみ方に社会的評価を測ると、自分の楽しみ方の領域が侵食される


 例えるなら「腐女子における社会的大義名分問題」がわかりやすいでしょう。一部の腐女子はカップリング萌えに「LGBT差別問題」を持ち出します。これにより私たちの愛する「作品読解」という楽しみ方の領域が侵食されます。

 順を追って説明します。

 最近ではLGBTの政治活動におけるキャラカップリングの使用がXで話題になりました。

 「読解」はまだ楽しみ方という趣味の範疇に収まりますが、当事者として社会問題に取り組む方々の領域が「自分の”趣味嗜好の好き”」のために無責任に踏み荒らされては迷惑ですね。(もちろんBL趣味を通じて社会問題に関心を持った結果として「社会問題への活動」という認識と責任を持って活動するのは良いことだと思います。)

 しかし一部の腐女子が自分のカップリング萌えや問題行動を正当化するために「LGBTQ差別問題という社会的大義名分」や「作品内で明言されてないからどう受け取るのも自由という社会的正当性」を掲げてしまう例は後を絶ちません。

 なぜならそれを楽しむ方々が、自分の「純粋な好き」を持つ自分とその「責任」を自己受容できないからです。これは彼女ら自身の問題でもありますが、「女性がエゴ的な欲望を持ってはならない」という社会的抑圧が原因でもあります。

 日本の女性が背負う理想や貞操観念への社会的抑圧は非常に複雑です。恋愛や性欲に対し理想に浸かって楽しもうとすれば現実が見えていないと蔑まれ、女性の性欲は淫らなものして嫌悪され、自らの性欲に伴う加虐欲や支配欲を架空の物語に向ければ「現実でも男性にこうされたいと思っているんだろ」という扱いを受けてしまいます。

 このような社会の中では「自分自身の欲望」を上手く自己受容できません。己の欲望を自覚した瞬間に社会による人格否定と女性の人権否定の正当化によって責められるように感じるからです。彼女たちは「社会的正当性」「社会的大義名分」を纏うことで己の欲望を楽しもうとするのです。しかし楽しみ方に「社会的正義」を掲げている限り、彼女らは自分の楽しみ方に自らの責任を負いません。

 例えば私たちが彼女らの趣味嗜好を「社会的優劣や正当性」を持って社会悪・社会的な下賤な層として蔑み貶めようとすればするほど、彼女らは自らの楽しみ方を自分自身の欲望として肯定・自己受容ができず「社会的大義名分」「社会的正当性」を持ち出すようになります。

 その社会的優劣のしがらみによって何が起こるかというと、「私のカプは原作に恋愛感情と読める描写がある」「原作を恋愛感情と読み取れないのは同性愛差別意識があるからだ」「人がどう受け取るのも自由、作品読解は他者否定」のように「作品読解」という楽しみ方の領域が踏み荒らされてしまいます。

 私たちが他人を「社会的優劣」という基準から解き放ち、「好きだと感じるもの・楽しみたいものはありのままに感じ楽しんで良い」と許容することで、その他人もまた自らの趣味嗜好に「自分が好きだからそういう楽しみ方をしている」という主体性と責任を持って向き合うことができるようになります。

 そうなることで結果的に「作品読解」という私たちの楽しみ方もまた踏み荒らされないようになるのです。私は自分の楽しみ方の自由を守り、自分の楽しみ方の領域に侵入されないためにも「楽しみ方は人それぞれ自由」というスタンスを取っています。

アニメ・漫画は大衆文化である


 もしかしたらマロ主さんは作品を高貴な芸術作品のように捉えているのかも知れません。しかしアニメ・漫画は大衆文化です。

 例えば5chでは少年漫画内で誰が一番最強かをランク付けするスレッドがよく立ちます。彼らは作者とのコミュニケーションなんて考えず自分の興味関心に従って読み、作品内の枠組みを超えて他の作品のキャラを持ち出し、読者同士の議論を楽しんでいます。

 これは下賤な楽しみ方でしょうか?むしろ私は少年漫画がターゲットとしている層に与えている最も純粋な楽しみ方のようにさえ感じます。

 私は怒涛のオタクなので恋愛ドラマやお笑い番組すらも脚本・企画構成や編集、演者の芝居の上手さに言及してしまいます。
 しかしドラマやお笑い番組を楽しむ大多数の方は「恋愛の展開にドキドキした!」「あの芸人ほんと面白い」「俳優の〇〇さんの色気すごくない!?」などの視点で楽しみ、他者との他愛ない会話を楽しみます。これは漫画やアニメも同じです。

 読書を楽しむ人間は全て文学研究者のように作家の生育歴を研究する必要はありません。将棋を楽しむ者が全員プロを目指す必要はありません。これが大衆文化です。

 大衆文化における「作品」とは、娯楽であり、人々と繋げるコミュニケーションとコミュニティの役割を果たし、人々の生活に充実を与えるものです。

 5chに住むアラフォーの少年たちが少年漫画の最強キャラランキングを作って仲間と楽しむように、BLカップリングを愛す者たちは作品を通しカップリングを楽しみ同じ性癖の方々と好みのBLを共有し楽しむのです。

 私は「作品にどう触れ、どう楽しむのも人それぞれ自由」という言い方をしていますが、これは「作品が大衆文化としての役割を担っている」という視点での言語化でもあります。

 

オタク界隈が「純粋な好き」を楽しめる場所であるために


 楽しみ方に社会的優劣を持ち出すと、自分の楽しみ方は「優劣を誇示するための道具」になり、その「純粋な楽しさの魅力」は価値と自由と誇りを失います。

 楽しみ方に社会的優劣を持ち出し楽しみ方を制限すると、自分の楽しみ方の領域に侵入され踏み荒らされます。

 楽しみ方に社会的優劣を持ち出すと、やがて周りに回って自分の楽しみ方も誰かによって批難の対象になります。

 やがてマウント合戦が始まり、オタク界隈は「自分なりに楽しむ」ための場所ではなく、いかに自分が正しく高貴かを競い合う世界になってしまいます。

 私は読解が好きですが、自分の興味・高揚がある部分だけを自分のペースで自分なりに楽しみたいだけです。私は作品のキャラ達が好きでも主要キャラ全員の生年月日を覚えることはありません。自分の興味ある場所以外に無理に興味を持つつもりがないからです。

 「◯◯の考察をしない人はオタクじゃない」「雑誌インタビューを全部読んでない人と私を一緒にしないでほしい」「主要キャラ名をフルネームで言えないなんて愛がない」、私はオタク界隈がそんな自由がなく、生き苦しく優劣を争う世界になることを望んでいません。

他者を尊重するとはどういうことなのか


 全ての人間は他人の尊重を持ってしか自分の尊重を得られません。

気に入らない他人の楽しみ方が社会的劣等層として扱われることを望むとロクなことが起きません。

ただ「そのような在り方の人間がいる」として存在を認めることが、結果的に「自分の楽しみ方の純粋さと誇り」を守ることになります。

 他人を尊重するとは決して「気に入らない楽しみ方も等しく素晴らしいものだと思わなければならない」ということではありません。

 マロ主さんがマロ主さんご自身の価値観を持って「許せないと思う楽しみ方」「下品だと思う楽しみ方」があってもいいのです。

ただしマロ主さんご自身の価値観と社会的優劣・社会的正当性を混同してはいけません。

 他人を尊重するとは、自分と全く異なる価値観が合わない人間がこの社会に存在することを許容することです。

そして彼らがこの社会で他人を妨害しない限りは、自分の個人的な価値観に「社会的優劣を掲げて」彼らの存在そのものを排除したり蔑んではいけないということです。

個人的な価値観を持ってコムドットを嫌うのは結構ですが、そこに社会的大義名分や社会的正当評価を持ち出してはいけません。

 マロ主さんはご自身の価値観を誇りに思えばいいのです。

そこに他者による社会的正当評価を求める必要はありません。

それが自分という人間と自分の価値観を持って、自分の誇りを生きるということです。

 言い換えると、自分の価値観に自分という人間のアイデンティティを自覚し、楽しみ方に主体性を持った方が良いという話です。

 オタクという世界が「社会的な正しさ」や「社会的優劣」に関係なく「純粋な好き」によって作品を楽しめる世界であるためには、このような考え方が必要ではないかと思います。
 


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それなりのショックをそれなりに引きずった。

せめて笑い話として誰かのエンタメになってくれ。

グループ名がパクリだったと知ってショックだった

様々な要素が重なり赤字13万円

 私は決して初参加で1000部刷るような失敗をした訳ではない。毎回アンケートを取るし、界隈の規模とブクマ数や反応具合から予想する。

 むしろ過去の同人活動ではイベント後の余りを通販にまわし数日後に売り切れるくらいの、まさに理想の部数を刷っていた。

(1)需要が全く推測できない本

 しかし今回は違った。
 まずそこは毎回150sp〜200spある赤ブーのプチオンリーだった。プチどころかほぼオンリーサークル(イベント内で自ジャンルで出しているサークルが自分のみ)で30部以下規模の経験しかない私には未知数すぎるジャンルだ。

 さらに今回は出すものが漫画でも小説でもなかった。なんなら二次創作ですらなかった。

 私は初めての大規模二次創作界隈で「200pフルカラーの評論本(数千円)」という訳の分からない本を出そうとしていた。

 作品の世界観の考察本ならまだ需要がわかる。しかし私の本は「作品の情報提示の検証と文脈の読解、界隈の解釈・読者の情報認知について」という内容だ。

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実際に赤ブーに申請したサクカである。

 友達やフォロワーには「コミケの評論島で出すやつ」「文学フリマで出すやつ」「二次創作と相性悪すぎ」「二次創作の隣で読解認知の自己啓発本が頒布される図は想像しただけで面白すぎ」などと数々のツッコミを受けた。

 私もツッコミを受けた時点で二次創作がメイン需要の赤ブーのプチオンリーで出すのは場違いすぎでは…?と不安になった。

 ︎︎ただでさえ私のジャンルアカウントは(当時)フォロワー100人未満の弱小垢だ。「10部刷って2部捌ける感じだと思うわ。でも1部も出なかったら流石に心折れるな(笑)」そんな冗談をこぼして笑った。

 幸いにも前々から私のこの手の考察に興味を持ってくださる方はいた。そんな身内向けに情報共有するための、コンビニで刷った身内新聞でも作るかのような気分だった。まさに「同士」と楽しむための「同人誌」の本質を感じて妙に楽しい気持ちだったのを覚えている。

(2)1部注文で単価が6000円になる本

 これだけなら同人の青春話で済むが、実際に制作するあたって問題は多かった。まず同人誌は少数部ほど1部あたりの単価が高くなる。

 例えば20pほどの同人誌の場合、1000部だと単価50円ほどだが、少数部で刷る場合は単価300円前後になる。小規模サークルが少ないページ数でも価格設定が高くなるのはこのためだ。

 そして私は、少数部で200pフルカラーで本を出そうとしてた。作ったことある方なら分かると思うがフルカラー本はめちゃくちゃ高い。

 見積もり試算したところ、1部だけ刷った場合の単価は6000円だった。

 無理だ。同人誌1冊6000円はまともに頒布できる値段ではない。10部刷ってもまだ高い。書店のビジネス書並の単価にするには30部は刷らなきゃいけない。30部も!?絶対捌ける自信が無い。

 と、とにかくアンケだ、実際の需要が読めないと答えは出せない。もし5部以下の規模になりそうだったらその時は赤字頒布してでも共に考察してくれた身内数人には絶対この本を渡したい……!!

 そして購入希望アンケートを付けた告知・サンプルをTwitterに投稿した。購入希望アンケは適当に投票されないようリプ欄に付けた。最低でも興味を持った方がタップしてリプ欄を表示しないと購入希望アンケへの投票はできない。

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購入希望アンケートはツリーは繋げた。これは加工した再現画像。

 予想通り、界隈の規模からしたら超小規模な身内からのRTといいねがあった。RT先で楽しみ・絶対買う等の声があったのは嬉しかった。

 10部くらいは確実に出そうだ。会場での初見購入・事後通販を含め、一般書籍くらいの単価で頒布できる30部を刷れそうだ。10部のみ捌けても5万円以下の赤字で済む。

 

(3)爆発的な拡散と困難な値段調整

 

 しかし事態は急変した。翌日目が覚めると、Twitterの通知欄がなんかすごいことになっていた。

 告知は100RT以上され、大量のいいねとブックマークが付いていた。そして購入希望アンケートは100票を超えていた。

 どうやらフォロワー万単位の界隈アカウント複数名にRTされたようだった。

 RT先では「これぞ同人誌!」「こんな同人誌の在り方があったか!」などの好意的な反応があった。どマイナー考察勢として生きてきた私は自分の作った同人誌がこのような形で日の目を浴びる姿に喜び明け暮れた。

 しかし拡散されたことで新たな問題が発生した。何度も言うが私が刷る本は200pフルカラー本だ。印刷代の単価は最低でも千円単位である。多少のフェイクを入れて分かりやすく説明する。

 もし100部を刷った場合、印刷代は20万円だ。

 に、に、に、20万円!?!?初めて一人暮らしをした時の敷金礼金、迷った挙句に断念した全身脱毛10回コースの記憶が走馬灯のように駆け巡った。だがそれ以上駆け巡る記憶はなかった。数十万円単位の取引なんて人生でそれくらいしかない。

 アンケートの購入希望への投票は100票をゆうに超えている。

 部数と頒布価格の調整は本当に難しかった。なぜなら捌ける冊数に10部のブレが出る度に、数万円の赤字や数万円の黒字になるからだ。単価が千円単位の同人誌の恐ろしさたるや。

 それでも私はこんな特殊な考察同人誌を購入希望してくださる方が沢山いることが嬉しくて仕方なかった。なんとしても欲しい方全員に届けたい。私は何度も何度も試算を重ねた。

 そしてアンケートの購入希望の票数のうち7割が購入すれば印刷代を回収でき、なおかつアンケート票数の部数を頒布できる部数・頒布価格を設定した。大量印刷により単価が大きく下がったため、頒布価格も合わせて大幅に値下げすることになった。

 これなら共同執筆者への原稿代・イベント諸々代を差し引いて、仮に全て完売して黒字が出ても2〜3万程度に抑えられる。ジャンル同人誌で利益が出すぎるのは怖い。逆に購入希望票の半分まで捌ければ赤字は5万円以下で済む。

 印刷代は数十万という単位になった。流石に注文時は手が震えた。だが金持ちではないにせよ多少の貯金はある。一時的な出費と考えれば特段痛くはない。もちろんもし全く捌けなかったらとんでもない大赤字になる。

 だが今までの経験上、実際に捌ける部数はだいたい購入希望アンケ票より出る。なぜなら印刷所に注文した後もイベント当日まで新たにその本を発見する人は増え続けるからだ。印刷所の注文日前の時点での購入希望の票数の7割の部数で印刷代を回収できるのだから巨額の赤字にはならないと踏んだ。


 そして私は震える手で印刷所に数十万円の注文を入れたのである。

 

(4)ネット世界のお戯れ、そして13万円の赤字へ

 ︎︎初めての特殊同人誌なのもあり、諸々の事情で会場参加ができず会場頒布は行えなかった。しかし元々アンケートの購入希望者の96%が通販での購入希望だったので頒布数に大差はないだろう。

 私はイベント開催日の夜、通販URLを記載した通販開始の告知を出した。

 

 ……。

 …。

 ………。

 ︎︎伸びない。

 身内のRTと少しの数の注文だけが入った。

 ……えっ?

 翌日になってもRTも注文も全く伸びなかった。

 購入希望アンケ付き告知は100RT以上されたのに、通販開始告知は10RTもされていない。

 

 通販の注文数は、アンケートの購入希望票の2割だった。

 えっ……えっ……?

 何が起きているのか分からなかった。えっ、あの、これ赤字が十数万円を超えるんだけど…えっ?全身が熱くなり嫌な汗が吹き出す感覚がした。

 

 鍵垢で嘆いたところ、フォロワーが反応した。「Xは10回くらい告知しないと告知は届かない」

 当時はちょうどXの仕様移行期だった。少し前までは当たり前に拡散されたものが、数日後には全く拡散されなくなる。

 さらに私は小規模界隈でしか同人誌を出したことなかった。狭い界隈では告知を出せば数人のRTでほぼ界隈全域に告知が行き渡る。

 今回、購入希望アンケを付けたサンプルはフォロワー万単位の界隈アカウント数名にRTされていた。しかし通販開始告知はフォロワー万単位アカウントの1人にもRTされることはなかった。おそらくフォロワ万単位アカのTLにすら届いてなかったのだと思う。

 通販告知が、界隈に全く届いていないのである。

 何度自己RTしても告知ツイートしても、当時フォロワー数100人未満の私のアカウントで発信したところで告知が界隈に届くことはない。「おすすめ」に載らない限り、界隈のフォロワー万単位アカウント主の気まぐれで運良くRTされない限り、通販告知を界隈に届けるのは不可能だ。

 そして私が出した本は「読解の評論本」だ。カップリングやキャラ中心の二次創作の同人誌ではない。むしろ「本格的な読解」と「人それぞれの感性を通した自由な受け取り方」はどうしても二次創作と相性が悪い。界隈の一部のフォロワ多数のアカウントにRTされたのは本当にたまたま運が良かっただけで、多くの方は二次創作者という立場でおそらくリポストするのは忌避したくなるのだと思う。

 ただでさえ私のアカウントがフォロワ少数の弱小アカウントな上、二次創作界隈ではリポストの連鎖で遠くの方へ告知を届くようなパターンすら難しい特殊な同人誌だったのだ。

 またフォロワーが呟いた。「みんな欲しい欲しい!って言っても、いざここで売ってるよ!買って!ってやるとその殆どが無言になるよ」「本当に買う人は少ない」

 えっ、そんな事ある……?部数を決まるための購入希望アンケだよ?多額の赤字に関わる重要なアンケだよ???そんなに買う気がないのに、ノリで購入希望に投票する人なんているの……!?

 確かに少しはいるかもしれない。私だってそこも考慮して注文部数を決める。でも購入希望に投票した8割がそのノリだったなんてことある!?

 小規模界隈での同人活動経験しかない私には理解不能だった。購入希望アンケートとは、「絶対に買いますの意思」だ。小規模界隈では本を出す人なんて指で数えるくらいしかいないから、一度欲しいと思ったら絶対に手に入れる世界だ。

 でも大規模界隈は違う。同人誌は無数にある。

 ︎︎その中で本命の同人誌以外は「その時は欲しいと思っても後で忘れる」のだ。

 

 またフォロワーが言った。「Xは物凄い勢いで話題が変わっていくから、その時思った事なんてすぐ忘れる。」「通販告知がまたTLに流れない限り、欲しかったことを思い出すこともない」

 ブクマを見返して本の通販情報を探しに行くなんてないのだ。だって、ブクマしたことすら忘れているのだから。

 そしてその記憶を甦らせるための通販告知は、おすすめ欄に載るか数千~数万フォロワ垢にRTされるか以外では、決して界隈に届かない。

 

 

 私は絶句した。
 

 

  1. 200ページフルカラー本で単価が千円単位であり、頒布数10部のブレにつき数万円の黒字や赤字が出る本だった。

  2. 考察しかしない当時フォロワ100人未満の小規模アカウントで告知を出した。

  3. たまたま購入希望アンケ付き告知サンプルが界隈のフォロワー万単位のユーザー数人にRTされ拡散され、多くの購入希望票が入った。

  4. 通販サイトURL掲載の通販告知の方はフォロワ多数の界隈のユーザー1人にもRTされなかった。

  5. 読解・評論本という二次創作と相性が悪い同人誌であるため、一般的な二次創作者はおそらくリポストを忌避する。二次創作同人誌で起こるようなリポストの連鎖による拡散を起こすのは不可能。

  6. 大規模界隈・読解評論本・フォロワ100人未満の弱小アカウントという立場ではいくら告知を出しても、おすすめに乗るか興味を持ってくださったフォロワ多数垢に運良くRTされない限り決して界隈に告知が届かない。

  7. 大規模な界隈では同人誌が多く発行されるため、大規模界隈の住人は本命の同人誌以外はその時欲しくても後で忘れる。もう一度告知を見ない限り思い出せない。

  8. 告知が届かない限り、自分が購入希望に投票したことを思い出すこともない。

  9. その結果、アンケートの購入希望票に合わせた部数を発注するも、投票したうち実際に購入した方は2割だった。

 

 様々な要素が重なりに重なり

 

 こうして私は大量の在庫と13万円の赤字を抱えることとなった。

 購入希望アンケート数の2割の注文しか無かったにも関わらず13万円の赤字で済んだのは、頒布価格をだいぶ下げていた影響か注文した多くの方が価格上乗せで購入してくださった経緯もある。本当に感謝しかない。

 ︎︎もちろんこの赤字は印刷代のみの赤字だ。執筆協力者への謝礼・イベント参加費諸々含めたらもっと多額になる。

 その後内容の修正や追記もあり、在庫は次回イベントに回すことなく全て破棄となった。

 ただでさえ巨額の赤字のなか、本の質量がデカすぎて送料がかさみ委託先からの返送代で更に5千円の赤字を出した。5千円の送料で返送された本をそのままキャリーに乗せ数回に分け資源ゴミに送り出した時は流石に心が折れそうだった。

 決して購入希望アンケ付きサンプルを拡散してくださったフォロワ万単位の界隈垢の方たちに文句がある訳ではない。むしろこんな界隈の隅にいる少数フォロワ垢の同人告知に興味を持ち掘り起こしてくださったことには感謝しかない。

 決して興味を持って購入希望に投票してくださった方に文句がある訳ではない。だってアンケートはリプ欄に付けたのだ。タップしてサンプルを読む程に興味を持った方しか購入希望に投票できない。そこまで興味を持ってくれたということだ。

 これは大規模界隈の仕組み、Xの間引き・おすすめ仕様を当時理解していなかった私の判断不足だ。未知の体験ゆえの推測不可能な仕方のない失敗だったのだ。

 誰も悪くないんだ、ただ、ただだな……これはただそこに起きてしまった「事象」への嘆きなんだ。それだけは分かってほしい。

 購入希望アンケート付きの告知サンプルだけ界隈のフォロワ万単位の界隈アカ数人にRTされ超拡散され、通販リンク付きの通販開始告知はその誰にもRTされないのは、いくらなんでも、いくらなんでも、流石にグロテスク過ぎないか。

 そしてあの時、購入希望に投票するも購入しなかった残り8割の方々は、もし通販告知がTLに流れてきたら本当に注文した方たちだったのだろうか。

 13万円か…アジアの海外旅行いけたろうな…全身脱毛5回はできたろうな…そんなことを思い浮かべながら、たまに上記のようなことを考えてしまう。

 同人誌は自己責任の世界だ。初めての単価クソ高同人誌・初めての考察本・初めての大規模界隈、この失敗は未知の領域ゆえに想定が不可能な失敗だった。これも人生経験だと思うしかないだろう。

 ちなみにこの本はその後も再版し頒布しているが13万円の赤字が回収できそうな見通しは全くない。

 

部数で失敗しないために大切なこと

 ︎︎これは大規模界隈でフォロワー少数のアカウントで部数を考える時のノウハウだ。

(1)通販希望アンケはせず事前通販をする

 最も失敗だと感じたのはアンケートで「通販希望」という形を取り、事前通販をしなかったことだ。アンケ投票を設けず直接事前通販のURLを案内すれば、本当に通販購入を希望している方は必ず事前通販で予約する。

 そして会場頒布による購入希望者だけ投票でアンケを取ればいいのだ。

 事前通販ならその時点で購入希望者は代金を支払うこととなり、確実に捌ける部数として換算できる。また乱丁などで頒布不可能になっても販売者がキャンセルすれば代金は購入希望者に返金される。ポイントは販売者側からのみキャンセルが行えることだ。(通販サイトによって仕様が異なるので必ず自身で確認するように)

 ジャンル界隈では赤字のリスクを負わず確実に利益を出す予約販売に厳しい風当たりもあるが、これは完全受注生産の場合だ。

 事前予約数(確定部数)+会場頒布(不確定)+事後通販(不確定)で部数を算出した場合は、多額の赤字や黒字を出さないよう調整しつつ黒字が出るか分からない不確定状態で部数を注文できる。

 

(2)爆発的に拡散された時は増えたフォロワー数を参考にする

 もしあなたがフォロワーの少ないアカウントではあれば、拡散された時に増えたフォロワー数=購入希望者と考えればいい。

 実際、コムドットが13万円の赤字を出した時に実際に購入してくださった人数はちょうど拡散時に増えたフォロワー数+αほどだった。

 こちら側がどんな内容の垢であれ告知を見て即フォローするということは、本を手に入れるための告知情報を見逃したくない層だ。確実に本を購入したいという思いでフォローした可能性が高い。

(3)趣味で使える範囲の予算で刷る

 ︎︎予め印刷代の上限を決め、どんなに購入希望があろうがそれ以上は刷らない。通販戦争を勝ち抜いてでも欲しがってくれる者だけがどうしても欲しい方なのだから、間に合わない方には諦めてもらえばいいという考え方で部数を決める方法だ。

 ︎︎正論、確かに正論だが、例えば趣味予算5万円だとして、単価クソ高本の場合は20部しか刷れない。(アンケを読み取った限り)100部以上の需要があるのに20部しか刷らない人間が何処にいる!?

 ︎︎二次創作なら確かに自己満足の面はあるかもしれない。いつかWeb再録だってできる。しかし評論本とは興味がある方(同士)と情報共有するために発行するのだ。200pという量的にWeb再録だって不可能だ。論文と同じだ。私はいつだってこの世のどこかに存在する同士に届けるために考察を書いてきた。noteを始めたのだってそうだ。欲しい方全員に届けたくなるのは仕方ないだろ!!

 ︎︎そんな考察オタクの情熱によってこういう事態が発生してしまったのかもしれない。

最後に

 恐ろしくリアルでグロテスクな同人赤字話、いかがだっただろうか。金額については多少のフェイクを入れるので所々整合性がおかしいが気にしないでくれ。13万円の赤字が出たのはもちろん嘘偽りない事実だ。

 ︎︎誰も悪くはないがこのどうしようもない無情さが伝わればなによりだ。この出来事が誰かにとってのエンタメになることが、せめてもの私にとっての救いだ。

 ちなみに13万の赤字を出したこの本は 2024年5月4日(土)のイベントで再版します。最後の再版になるかもしれない。

頒布イベント
2024年5月4日(土・祝日)東京ビックサイト|SUPER COMIC CITY |超 GLANDLINE CRUISE 2024
タイトル
「サ釈。サンジはなぜ自己犠牲し、なぜ解釈が難しいのか」
仕様
 ︎︎A5 / フルカラー / 約200p / 図解付き10万文字解説/ 2500円
概要
サンジの自己犠牲について、私自身が解釈に挑戦し大敗北した解釈体験と界隈の解釈傾向を元に、作品読解を中心に作者の情報提示と読者の読解の間にどのような事象が発生し解釈が難航するのかについて考察。

 

 ︎︎「サンジはなぜ自己犠牲するのか」「なぜサンジの解釈は綺麗にまとまらなくなるのか」「尾田先生の意図したサンジのキャラクター像はなぜ読者に伝わらないのか」について、50件にも及ぶマロ意見を頂き8ヶ月のあいだ読解考察系フォロワと読解考察を繰り返し、多くの図解と考察を10万文字に渡り述べ解説しています。

 作中の情報提示方法と読者の情報認知から掘り下げて仕組みを考察しています。サンジのキャラ像の特殊性と読解方法・読解における文脈の読み方から、女性界隈の解釈傾向の仕組み、読者が情報を読み取れなくなる描き方まで、サンジの解釈に悩む方・界隈の読解や解釈に興味がある方・読者を意識した創作者まで楽しめる本です。興味ある方には十分満足いただける内容のはずです。

 ︎︎※ワンピースのサンジ関連のエピソード本編・女性向け界隈における「解釈」という用語を知らないとほぼ意味不明な内容になります。予めご了承ください。

 ︎︎本気で興味があり購入意欲がある方は下記の記事・Xの告知リンク先から事前通販や会場頒布での部数アンケートに投票頂けたら嬉しいです。ほんまに…たのむで…

かれこれ1年半くらい VRChat でアイトラッキングを常用しています。 アイトラッキング用ギミックはほぼ自作しており広く使われている汎用的なギミックとの差異もでてきたため、覚書もかねていったん知見を放流してみます。

VRSNS でのアイトラッキングはなかなかいい感じのハードウェアが出てこなくていまひとつ流行っていない感じはありますが、すでに使っている方や今後導入する方の参考になれば幸いです。

 

想定読者層

この記事で言及する範囲すべてをカバーしようとするのであれば以下の項目についてある程度理解しているとよいでしょう。

  • VRChat Avatars 3.0 および Unity Animator

  • OSC でパラメータを VRChat に送信するプログラムの記述方法

  • 利用したいハードウェアからアイトラッキング情報を取得する方法

全部拾おうとするとそこそこ大変、かつ筆者の好みの表現によせるためだけの機能も多いため、実際には活用できそうな点だけをつまみ食いしていくとよいと思います。

利用可能なデータ

私が利用している環境 (Droolon Pi1 + 自作ソフトウェア) では以下のデータがアイトラッキングモジュールからの入力として利用できます。 このあたりは利用するハードウェア・ソフトウェアによって差異が大きいため各自の環境に合わせて読み替えてください。

視線

視線の方向が Yaw, Pitch の2軸で得られます。左右の眼の視線が独立して得られる方が注視点の遠近も表現できて好ましいのですが、自作ソフトウェアの機能不足でこのような状態になっています。 他のハードウェア・ソフトウェアだと左右の眼の視線が独立に得られることが多いので視線に関するギミックは左右独立して制御できるように読み替えてやるとよいでしょう。

まぶた

眼ごとに閉じているか開いているかの二値データが得られます。 ハードウェア・ソフトウェアによってはどの程度開いているかを連続値を取得できることがあります。

Native vs. Custom

VRChat 2023.2.1 で、特定のパラメータを OSC で設定することで Avatar Descriptor の情報をもとに視線とまぶたを制御する機能が標準実装されました。 従来の疑似アイトラッキングの設定が済んでいればアバターに特殊なギミックを仕込まなくても使える点は便利なのですが、以下のようにまだ足りてない機能もあるため本稿の実装ではまだアバターギミックとして実装しています。

  • まぶたの状態を左右独立して制御することがまだできない

    • 片目だけ閉じるような動きは別途実装する必要があります

  • アイトラッキングの状態を Animator Controller から利用できない

    • 後述するまばたきとの干渉対策や視線と表情の連動などの実装が難しくなります

視線

視線の表現は Humanoid リグの Left Eye, Right Eye の向きを Additive レイヤーで制御することで行います。 Yaw, Pitch 方向の回転量を [-1.0, 1.0] の範囲に正規化してアバターパラメータとして OSC で送信するため、それを受けて各目の向きを制御する Animator Controller を記述します。

平滑化

OSC で制御されるアバターパラメータの同期頻度は 1-10 Hz 程度とかなり頻度が低いため、同期された値をそのまま視線に使用するとかくついた動きになってしまいます。 この問題への対策として OSCmooth を用いてパラメータを平滑化しています。視線変化への応答が遅くなるデメリットはありますが、もともと通信のレイテンシもそんなに短くないことを考えると妥協できるレベルかと思います。

まぶた

閉じ具合の二値化

目の閉じ具合を連続値として扱うかどうかは好みが別れる点かと思います。 連続値として扱うことで半目のような表現が可能になる一方で、使用者の体調や推定精度などの問題から意図せず半目になってしまったりしやすくなる課題もあります。 今回は意図せず半目になるのを避けたかったため、「閉じている」「開いている」の2状態のみとして扱うこととしました。

まばたき

人間のまばたきは一回あたりおよそ数十ms程度なので、愚直に目の閉じ具合をパラメータにセットするだけだと図 (a) のようにパラメータの同期頻度が足りず頻繁に取りこぼしが発生したり目を閉じている時間が不自然に長くなったりします。 この問題への対策として、リモート側におけるまばたきについては図 (b) のように何回まばたきしたかを別パラメータとして送ってそれに対応する回数だけまばたきアニメーションを再生する形としました。

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パラメータ同期タイミングを考慮したまばたきアニメーション

この方針で実装すると以下の動画のようになります。前半が図 (a) のように愚直にローカルと同じ方法を使用した場合、後半が図 (b) のように提案手法を用いた場合となります。 リモート側(右側)の動きを見るとまばたきの同期に起因する不自然な目の動きがかなり軽減されていることがわかるかと思います。

パラメータ構成

上述したまばたきの表現のために、OSC 送信プログラム側で以下のパラメータを計算して VRChat 側に送ります。

  • LClose, RClose

    • ローカル側で使用するまぶたの状態です。

    • 目ごとに閉じているかどうかをそのまま真偽値で表現します。

  • LCloseRemote, RCloseRemote

    • リモート側で使用するまぶたの状態です。

    • まばたき以外の要因で目が閉じているかどうかを各目について真偽値で表現します。

    • 実際には0.1秒以上連続して目が閉じられているときに閉じていると判定されます。

  • Blink0, Blink1

    • リモート側でのまばたきの表現に用いられるカウンタです。

    • まばたきの回数を累計したものを4で割ったあまりを 2bit (2つの真偽値) で表現します。

表情アニメーションとの併用

アイトラッキングだけでもある程度の表現力は得られるのですが、ハンドサインなどによる従来の表情制御と併用することでさらに豊かな表現力を得ることができます。

表情アニメーションとまぶた制御の混ぜ合わせ

よくあるハンドサインによる表情アニメーションを再生するレイヤーの後にまぶたを制御するレイヤーを挿入し、まぶた制御レイヤー側では目を閉じるシェイプを制御することで混ぜ合わせを可能にします。

Animator Controller は Write Defaults Off のステートで構成し、目が開いているときは空のアニメーションを再生することで表情アニメーションによる変化がそのまま、目が閉じているときは目を閉じるシェイプを有効化したアニメーションを再生することで表情アニメーション+閉じ目が出力されるようになります。

まばたき可否フラグ

疑似アイトラッキングのときでもそうであったように一部の表情(笑顔など)シェイプとまばたきに使用するシェイプを同時に用いるとメッシュが破綻してしまうことがあります。 これを回避するため、表情に対応するステートごとにアイトラッキングによるまぶたの制御を有効化するかどうかのフラグを持たせます。

たとえば、左目だけ閉じるアニメーションを再生するためにアイトラッキングによるまぶたの制御を無効化したい場合は図のように Avatar Parameter Driver を用いて左目用の制御可能フラグを折ってやります。 ここでセットされたフラグが立っている場合だけシェイプを操作するようにまぶた制御レイヤーを構築することでまばたきとの干渉を回避することができます。

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まばたき可否フラグのセット

干渉するシェイプの打消し

いわゆるジト目などのようにまぶたの制御に用いるシェイプと干渉するがアイトラッキングによるまぶたの制御も行いたいような表情も存在します。 こちらについてはアイトラッキングで使用する閉じ目アニメーション側で目を閉じ切った時に干渉するシェイプの重みが0になるようにプロパティを追加してやることで、目を閉じているときだけ干渉するシェイプの変化を打ち消してやります。

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干渉するシェイプを打ち消す閉じ目アニメーションの例

視線との連動

アイトラッキングを利用していると視線の向きを Animator で利用できるようになります。 上下 (Pitch) 方向の視線を利用して下のほうを向いているときにややまぶたを落とすようにしてやると見下ろす時の目の動きがさらに自然になります。 視線に連動する成分と通常の表情アニメーションの混ぜ合わせは Direct Blend Tree を使って図のように記述すると表情を管理しやすくなります。

画像
表情アニメーションと視線連動成分の混ぜ合わせ

おわりに

VRChat アバター向けアイトラッキング実装の細かい改善ポイントをいくつか紹介しました。 ローカルとリモートでの挙動の違いなど複雑なポイントも明示的にケアする必要があったりとまだ発展途上感はありますが、現状でも丁寧に作りこめばアバター越しでの表現力の向上にしっかりと貢献してくれます。

なかなかちょうどよいハードウェアが登場しないために実践以前のハードルが高い状態ではあるのですが、もしアイトラッキング対応ハードウェアを導入する機会があればぜひ試してみてください。 本稿が導入後の細かい調整の一助になれば幸いです。€$

「理想のスカート表現を求めて」を読み直して、出来るところはやって、分からない部分は適当に、後はツールを使ったりしてざっくりCloth化したので、その手順を纏めました

 

Blender編

全国のBlenderアレルギーの皆さま、ご安心ください、割と簡単です。ジョキ!って切るだけなので。

インポートとかは省きます。ググってください。

インポートしたら編集モードにして、辺をぐるって一周選択せんたくします。Ctrlを押しながらだと楽だと思います。

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画像のように選択したら、画面上側の「メッシュ」→「分割」→「面(選択辺で)」を選択します。

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次に、分割した下側の辺を適当に一つ選択し、Lキーを押します。そうすると分割した場所から下側が全部選択されるはずです。そうしたら、画面上側の「メッシュ」→「分離」→「選択」を選択します。

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ここまでやると、画面右側のコレクションが以下の図のようになっているはずです。

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図のようになっていたらエクスポートします。
エクスポート時ですが以下のように設定してください。なぜか知りませんがこれで上手くいきます。(Iris先生ありがとう!)

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Cloth設定編

Unityに行きます。出力したファイルを適当なところに入れたらヒエラルキー上に置きます。

因みに衣装の着せ替えは省略します。良い感じにやっておいてください(丸投げ)

まずコライダーを入れます。私は以下のような配置で入れました。

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結構適当ですが、Hips、UpperLeg、UnderLeg、Footに入れれば大丈夫です。
注意点として、コライダーの大きさはUpperLeg>UnderLeg>Footにしましょう。座った際に大体膝に引っかからないようになります。
大きさについてはコンポーネント上の値が同じでも実際の大きさが異なる場合があるので、画面見ながら設定しましょう。大体足より少しだけ太くすれば大丈夫です。

次にClothコンポーネントを導入します。恐らく以下の画像のようにオブジェクトが2つあるので、.001の方にClothコンポーネントをAddします。

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設定は以下のような感じです。
(Sphere CollidersのSizeは6で良いです。下2つは今回要らないので)

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自分好みの揺れ方で設定するぜ!とか、ここの設定値ってどういう意味?って方は Cloth最大の苦行であるMaxDistanceとSurfacePenetrationの設定ですが、ここではツールを使います。

これで一瞬で終わります。神ツールです。これで100円は破格という言葉でも表せない程です。買いましょう。 

因みに便利ツールを他にも出していらっしゃるのでぜひ買いましょう。
手動でやる方は……頑張ってください。

導入成功すると、ウィンドウ上部にBeretta Toolsが追加されているので、そこからSkirt Cloth Supporterをクリックして設定画面を出します。
設定値は以下の通り。一番上のCloth欄に.001をドラックアンドドロップして、数値を入れて、カーブを設定したら適用を入れます。

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MaxDistanceの方だけカーブを弄ってありますが、不要だと思います。
SurfacePenetrationのカーブは初期に用意されているものの真ん中のカーブを使いました。

取り合えずこれで動くはずです。動かなかったら途中の手順か、この記事が間違っています。

Rotation Constraint、PB編(書きかけ)

このままでも動くのですが、掴めなかったり足が貫通したりでちょこちょこ問題があると思います。ということで簡易的ですが対処しておきます。