公募推薦を終えたマツキが教室に飛び込んできたが、
来客中だと分かると、
1時間以上、ジッと僕の手が空くのを待っていた。
「どうしても正解がほしかったから・・お願いします」
「じゃぁ、時間を少しくれ」と問題用紙を開いた。
「すぐに解答を作るから、向こうで待ってろ」と言う僕に、
「ここで確認させてください」と隣の席に座り、顔を強ばらせた。
食い入るように、〇×の数を数える。心臓の音が聞こえるほど緊張をしているのが分かった。
第一問目から連続で7問正解・・そして、不正解・・赤ペンで✓をつけた。
「あ~~~」と悲鳴のような落胆の声が漏れる。
昨年度と問題数が違うので、正確な配点がわからないが、おおよそ85~87%
安堵の表情を見せて、明日の入試に備えて、帰って行った。
これから、来春まで、こんな一喜一憂が繰り返される。燐と張った外気、生徒たちの緊張感、僕の好きな教室内の風景だ。
すべてが、Happy Endというわけにはいかないが、
ときに、ドラマのような鮮やかな結末が待っていたりする。
思い起こせば、
名門女子高を退学し、塾も去ったリサが戻ってきたのも、ちょうと11月だった。
小悪魔アゲハように盛った頭に、生活の乱れを見たような気がした。
単位制高校に通っていること。
大学受験をしようとしていること。
現在の生活のこと・・・
色々と語り、入試までの日々を僕と一緒に勉強したい、と話しながら、開いた全統の結果を見て驚いた。MARCHがA~B判定。関西の大学には、元級友たちが多く通うから、心機一転、東京で新たな生活を始めたい、と話した。
苦闘の日々が過ぎ、早春、最高の笑顔を残して、東京へと旅立っていった。
印象的だった生徒をもう一人、紹介しよう。
賢い子だったが、看護専門学校に入学し、僕の講座を卒業して5年が過ぎた。
その子を予備校で見かけた、という風の噂に「まさかね?」と思い、連絡を取った。
なんと、彼女は国立大学医学部に22歳で入学していた。
聞けば、医者に命じられるがままの仕事がイヤだったのだと・・
それで一念発起して、看護師を辞めて予備校に通ったのだ、と電話の向こうで笑った。
一人は、夜の蝶、
もう一人は厳しい医療現場、
大抵の者が夢を諦め、人の世のさだめに流されてゆくものだ、と思ったが、
ダイヤモンドはどんな環境下でも光を放つ。
真実は小説より奇なり・・・
ときにこんな出来事が起こるから、僕はこの仕事に惹かれるのかもしれない。
頑張れ、僕の生徒たち、新たな奇跡を見せてくれ!
追記:
区役所に用があった僕は、役所の近くの喫茶店で日替わりランチをとった。喫茶店で、ざるぞば&天ぷら・・・
おまけに席についてから、25分ほど待たされた。味は可もなく不可もなく・・・。
