22時15分、自習に残った高3だけが、一心不乱に勉強する静かな教室で、
「長文問題集は??・・・また小人か・・」とため息をついてみせた。
どうせ、積み上げた本の間から出てくるのだが・・
ここはボケどころだ、と思った。
周りの様子をうかがうと、問題集に目を落とすショウタがニヤリと笑うのが見えた。ナカムラは何を話しているのか分からずに、ポカーンとした表情で、チラリと僕を見た。
高3女子たちは、またカンザキが何か言ってる・・知らんぷりをして勉強しておこう・・といった感じだ。
「小人、小人が出るんや。最近はよく出没して、困ったものや・・」
とつぶやいてみせた。
とうとう、自習をしていたショウタが振り向いて、
「出るんですか?」と話に食いついた。
「うん、5cmぐらいで、ちょくちょく悪戯をしよる・・財布から、よく飛ぶように現金がきえるのも、小人のせいかな?」と言うと、
「それは、きっとナカムラですよ」と笑いながら、勉強に励む友人の横顔をチラリと見た。
ナカムラは、何を言っているんだか?・・と苦笑い。
そして、また、沈黙
また空調の音だけが聞こえる静かな教室となった。
5分後、案の定、探していた問題集は赤本の間からパサッと床に落ちた。
「ショウタ、みろ。小人が返してくれた。小さいのが2人で教室の隅から引っ張って出てきたんや」
腕まくりをして、もっとボケてやろうとする僕に、
「先生、そろそろ、もういいですか?おい、ナカムラ、バトンタッチや」と笑いながら、話を遮った。
不完全燃焼だが、今日のところは、これぐらいで止めておこう、と踵を返し、
自分の机に戻った。
たいていこの時間帯は、サッチャンが「先生、過去問のコピーをお願いします」とか
チーが、ショウタ、ナッツが「単語試験、お願いします・・・」とか
ファンペルシーがどうした・・とか、ルーニーがすごいだとか・・
受験の話に・・ふられたふったの話まで・・
そして、
先生、質問・・・と、
僕は、仕事が終わった後の生徒たちとの「この時間」を、こよなく愛している。
面白いもので、大阪と京都では、生徒たちの反応は違うのだが、
今日は何を言ってやろうか?と手ぐすねを引いて待つ僕を、温かく受け止めてくれるのは、同じだ。
こんな風にして、僕と生徒たちの関係は深まってゆく。