ななこ、私先輩の事好きって言ってたじゃん。

好きになったこと、言ってくれてもよかったじゃん。

 

 

と言った私に、

 

 

んー・・・?

だって告白されちゃったから・・・。

かっこいいから付き合いたいなって。

 

と悪びれずに言った。

 

 

いつの間にそんな仲良くなってたの?

 

 

ケー番聞かれたから教えたら、

メールとか来るようになって・・・。

 

 

・・・キョロキョロ

仕方ない。

私は付き合ってもなかったわけで、

ななこは先輩の方から好きになられてるわけで。

 

私は好きな相手には自分から好意を隠さずかなり責めるタイプだったので、

先輩は私の気持ちには気づいていたけれど、

私よりもななこのことが好きになったから選んだんだろう。

 

仕方ない。

 

 

そう言い聞かせたけど正直もううんざりしてきていたえー

 

てか、先輩もなんだよプンプン

私の事好きっぽい匂わせして期待させといてえー

腹立つなグー

 

 

いい加減モヤっとしてるときに、

サナとリカが言った。

 

 

もうななこと距離とりなよ。

なんで気づかないの。

あんたの欲しいものが欲しいだけじゃん。

全部あんたの真似だよ。

 

 

そこでようやく踏ん切りがついた。

ななことは少しずつ距離を置くようになった。

 

 

何回も謝られた。

「ごめんね、サクラの好きな人、盗っちゃってえーん

 

その言い方もなんだか無性に苛立った。

 

 

そしてななことは決別した。

 

 

ななこは再び孤立した。

 

 

もう前のグループの子たちとも仲良くはできないようだった。

けど私は手を差し伸べる気にはなれなかった。

 

 

ななこと先輩が付き合って少し経った頃、

先輩は私に声を掛けてきた。

 

 

サクラぁ。

もう俺と遊ばないのえーん

 

 

よく声を掛けてこれるな、と苛立ったプンプン

表立って苛立ちを表すのは負けた気がするから、

平気そうに笑いながら嫌味の一つ二つを飛ばすことにした。

 

 

なめんでくださいよグー

人の事足蹴にしといてえー

私、結構先輩の事好きだったんですよ?

先輩にはもうななこがいるでしょ。

 

 

と横目で彼を見ながら意地悪を言った。

 

 

足蹴びっくり

誰がだよ・・・キョロキョロ

 

 

誰がって、どの口が・・・プンプン

先輩に言い返そうとすると、

再び先輩が口を開いた。

 

 

ま、いいや。

てか、なっちゃんなー・・・。

ちょっと重いんだよなぁ。

メールも電話もひっきりなしだし。

 

 

先輩の「重い」に少し意外な感がした。

ななこと付き合う前、

すなわち私が先輩と「いい感じ」だと思っていた頃、

先輩は相当マメに私に連絡をくれていた。

 

 

私にも「重い」と思いながら、

連絡してたんですか(笑)

 

 

そう言うと、先輩は意外そうな顔をした。

 

 

何言ってんの。

なっちゃんとサクラを比べるのはおかしいでしょ。

 

 

はい?

言っている意味が全然分からない。

私もなっちゃんも同じだ。

 

よくわからなかったけど、

最早先輩とこれ以上話すことはない。

 

 

 

とにかく彼女の愚痴言うのはやめてくださいよ。

好きで付き合ったんでしょ。

幻滅させないでプンプン

 

 

とじろりと見ると、

先輩は困惑した顔で

 

 

好き?

なっちゃんの事?

 

 

と答えた。

 

 

そーですけど・・・えー

 

 

怪訝な目で見つめ返すと、

 

 

俺・・・なっちゃんの事、

好きじゃないけど。

 

 

ガーン

付き合ってるんですよね?

 

 

 

そう私が言うと、

バツの悪そうな顔で頭を掻いた。

 

 

あー・・・。

付き合うとは言ってないタラー

 

 

まさか・・・・ネガティブ

 

 

軽蔑の眼差しで彼を見た。

 

 

しゃーないって!

あのスタイルで押し倒されたら無理。

断れないって。

 

と言い訳を並べだした。

 

 

・・・最低キョロキョロ

 

 

 

押し倒されるとか嘘でしょえー

変な言い訳して。自分から告ったくせに・・・。

内心でそう呟いた。

 

先輩は確かに見た目はチャラかった。

けど、少なくとも私が接する先輩は、

軽口ではあるけれど誠実さを感じていた。

それは私の勘違いだったのか。

こんなフラフラした人だなんて、

思わなかった。

 

 

そんなん言ったら、

サクラだって今更好きだったとかよく言えるよなーえー

 

 

少し拗ねた顔で先輩は言った。

なんで先輩が拗ねんのよプンプン

 

 

今更ってどういう意味ですかキョロキョロ

 

 

好きだけど付き合う気はないっての、

俺、結構傷ついたけどチーン

 

 

キョロキョロ・・・?

 

 

 

何の話だ・・・真顔

理解が追い付かない私を置いて、先輩は続ける。

 

 

あんな気ぃ持たせるようなことして、

それはないってタラー

付き合えないとか、やだったもん。

それなら初めから気ぃ持たせんなよなえー

 

 

はい?

付き合えないって誰が?

 

 

サクラが。

 

 

誰と。

 

 

俺とだよ。

 

 

・・・言ってませんけど。

 

 

もーいいって。

無駄に隠すなよ。

こっちはなっちゃんから聞いてんだよ。

 

 

・・・・。

言ってない。

 

 

 

・・・。

・・・えキョロキョロ

 

 

・・・だから、言ってません。

 

 

・・・はぁ?

 

 

しばらくお互いに沈黙した。

心の中がグレー一色に染まっていくのを感じた。