サトルの気持ちがこんなにもわかるのは、

私が想う側だったからだ。

 

私もリュウの時に思っていた。

身も心も欲しいと。

 

 

サトルが私を見る目が、甘い。

 

表情がずっと甘い。

 

一緒にいる時の空気が、

甘い。

 

全てが、恥ずかしくなるくらいに甘い。

 

 

サトルはもう、

私への気持ちを隠すつもりは一切ないのだ。

 

きっと私もリュウに対してそうだったんだろう・・・。

 

 

 

けど、私は逆に、

サトルへ甘い空気は一度も向けなかった。

 

サトルを好きになれば、

好きにならなくても付き合えば、

私は幸せを感じることができるだろう。

 

 

けど、私が欲しいのは、

焦がれるほどの幸せ。

悶えるほどの幸せ。

相手を好きで好きでたまらないからこそ感じられる、

幸せ。

 

 

嫌だな。

大事な存在を、

ほんとは手放したくないな。

 

いつかは言わなきゃいけないとは思っていたし、

覚悟もしてたけど嫌だな。

 

 

 

リュウの事とは関係なく、

サトルにそーいう好きって気持ちにはならない。

ごめん。

 

 

 

サトルは黙って私を見る。

 

 

 

・・・。

まー・・・やっぱどうしてもそーか・・・。

 

 

サトルはため息をつくと、

 

 

どこが足んないの?

 

 

と聞いた。

 

 

サトル、私・・・男の趣味悪いんだわ(笑)

みーんな、サトルを薦めてくんの(笑)

そんだけ、彼氏にするのに最高だと思われてんのよ。

だから、ただただ、私の趣味が悪いんだ。

サトルは何も、足りなくない。

 

 

と失笑した。

 

 

逆になんでリュウの事好きなのかわからない、

って色んな人から言われた。

頭の良さってそんな魅力?って。

私も、もうよくわかんないや。

でも、自分が好きかどうかだけははっきりわかるの。

逆も同じ・・・。

 

 

 

友達には戻る気ないって言ったよね?

 

 

・・・。言ったね。

 

 

それ言えば、

ワンチャン行けるかなって打算もあったんだけど(笑)

 

 

確かに魅惑的な取引ではあった(笑)

究極に嫌だったもん。

 

 

ん・・・。

わかってる。

そう思って言ったもん。

 

 

 

意地悪い(笑)

 

 

ほんとは、前と同じ関係で!

って言えればかっこいーんだろうけど・・・

けど、残念ながら俺はそんな強くもないんで、

しばらく距離置かせてよ。

 

 

 

あぁ、切なげなこの表情。

見るのは何度目になるだろう。

この顔をさせているのは私なのに、

この顔を見るのはすごく痛い。

 

 

私は黙ってコクリと頷いた。

 

 

 

もう近くにいてくれない。

簡単に近寄れない。

さすがにもう甘えさせてくれない。

 

 

 

でもどうしても、

サトルは好きになる予感がしなかった。

 

 

どうしてもしなかったのだ。